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    いなばリチウム

    @inaba_hondego

    小説メイン
    刀:主へし、主刀、刀さに♂
    mhyk:フィガ晶♂
    文アル:はるだざ、菊芥、司♂秋
    文スト:織太

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    いなばリチウム

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    六年近く前(メモを見る限りだと2016年4月)に利き主へし小説企画で「初夜」をテーマに書いた話です。他にもいくつか初夜ネタを書いてたのでまとめてpixivに載せるつもりだったんですけど全然書ききれないので一旦ここに載せておきます!
    当時いつも書いてた主へしの作風とすこし雰囲気変えたので楽しかったし、性癖の一つでもあったので今読んでも好きな話です。
    CPではない二人の話です。長谷部が可哀想かも。

    #主へし
    master

    夜な夜な(主へし R18) その日は朝から体がだるかった。
     目を覚ますと、頭は内側から叩かれているように錯覚するぐらい痛み、窓から差し込む朝日や鳥の囀りがひどく耳障りで、長谷部はそう感じてしまう思考と体の不調にただただ戸惑った。しかし、昨日はいつも通り出陣したはずだったし、今日もそれは変わりない。死ななければどうということはないが、あまりひどければ出陣に、ひいては主の戦績に支障が出る。長引くようであれば手入れ部屋へ入ることも検討しなければ、と考える。
     着替えてからだるい体を引きずって部屋を出ると、「長谷部、」と今まさに長谷部の部屋の戸に手を掛けようとしたらしく、手を中途半端に宙に浮かせて困ったように佇んでいる審神者がいた。無意識に背筋が伸びる。
    「朝からすまない。…少し、いいか」
    「はい。主命でしょうか」
    「ん、うーん…そこまで大袈裟な話でも……あるか。他の者に聞かれたくないんだ。部屋に来てくれるか」
     手招かれるままに審神者の部屋へ向かうと、審神者は部屋の周りを警戒するようにきょろきょろと見回してから戸を締めた。そうしてから机の、鍵のかかった棚に手を掛け、鍵を外す。更にその奥に手をやると、長谷部の目の前に一枚の書類を広げた。
    「読んでくれ」
    「は、」
     紙の下の方には政府関係者の署名と印が押されている。余程重要な書類なのだろうか。それを自分が手に取っていいものか…一瞬躊躇ったが、言われるままに目を通す。目を通して、長谷部は思わず声もなく審神者の顔を凝視してしまった。

    『審神者たる貴殿は、本丸に顕現している刀剣男士を一人、正妻として娶ること』

     書類の一番上にはそう書かれている。審神者は、長谷部が確認するまでもなく、男である。そして刀剣男士ももちろん男だ。『妻』とは男が女を娶った場合の名称ではないのだろうか。何か、自分の中の常識とは違った認識が2205年にはあるのか…何を問うべきか迷っていると、そんな考えを見透かすように審神者は小さく笑った。
    「いや、戸惑うよなあ。私も最初それを読んだときは驚いたんだけどね――」
     審神者の話によると、それは『命令』なのだという。何でも、審神者である彼と、現世と過去の狭間に存在する本丸との結びつきを確固たるものにするには、本丸で顕現した刀剣男士と深く結びつくことが必要だということだった。といっても必要なのは形式上の手続きだけであったから、直筆のサインさえあれば、それをこんのすけが運び、政府の方でよしなに取り計らうだけだ。だからその書類には、政府の印の他に「妻:」「夫:」と、名前を書く欄が二つあった。
    「娶ると言っても形式上のものだけで、特別なことはないんだ。…ないんだが、これを皆に言うと…当たり障りがありそうでね。誤解を生むというか」
     それはそうだ、と長谷部は思う。
     『正妻』『娶る』
     言葉はどうであれ、それはつまり、審神者がだれか一人を選ぶということだ。四十余りある誰かの中から一人だけ。事情を話したとしても、ほとんどのものはぜひ自分を、と審神者に迫るだろう。
    「誰か一人を選ぶだけのことだが、揉める上に時間がかかりそうだろう? しかしこれの提出期限は明日に迫っていてだな……」
    「…なるほど。また文の封を切るのを後回しにしていたのですね?」
     審神者は、未だに形式を重んじる政府からの紙媒体での書物を疎んでいた。封を開けないまま机に放置された書類が、実は提出期限が間近に迫っているもので…という事件はこれまでにも何度かあった。それを思い出しながら指摘すると、誤魔化すように「まあまあ」と笑う。
    「手っ取り早く…というと情緒がないが、どうだ、この書類に名前を書いてくれないかな。お前なら付き合いも長いし、面倒事にならなさそうだから適任だと思うんだ」
    「ええ勿論。主命とあらば」
     一も二もなく頷くと審神者は「本当か!」と顔を輝かせ、いそいそと机からペンを取った。
    「刀帳に載っている通りの名前でいいからな」
    「はい」
     へし切長谷部、と書くのに数秒もかからない。「妻:」の欄に書いて書類を渡すと、審神者はそれを大事そうに受け取った。
    「いやあ、長谷部に頼むとやっぱり話が早いな。助かったよ」
    「いえ、家臣として、主の業務が滞りなく進むよう努めるのは当然のことです。名を書くくらい、造作もないことですし」
    「はは、主思いの部下を持って俺は幸せだよ。…よし、用はこれだけなんだ。妻といっても本当に書類上だけだから、後はいつも通りで構わん。行っていいぞ」
    「はい。失礼します」
     実際には名前を書いただけだというのに、審神者は随分上機嫌になり、長谷部もなんだか誇らしく思えた。あれだけだるかった体も軽くなったような気がする。手入れ部屋には入らなくてよさそうだと判断すると、長谷部はすぐに出陣の準備に向かった。







     「後はいつも通りで」と言われてはいたが、その日の夜は、再び人目を忍んだ審神者に呼ばれた。
    「形式だけっていうのも寂しいからな。祝いと礼も兼ねて、いい酒を用意したんだ。他のやつには内緒だからな?」
     そう言って、何やら変わった形の入れ物から、長谷部の手の中の器にその中身を注いだ。ややとろみのあるその酒は甘い匂いがして、審神者に礼を言ってから口に流し込むと、喉がひりつくように甘い。思わず咳き込むと、審神者は愉快そうに笑って「高いんだから、吐くなよ?」と茶化すと、再び器になみなみとその酒を注いだ。注がれては飲まないわけにはいかない。咳き込まないように、今度はゆっくり喉に流し込むと、舌に残った甘さがしつこくまとわりついた。度数が高いのだろうか。二杯飲んだだけで視界がぐらぐらと揺れた。長谷部は一部の刀のように好んで酒を飲んだりはしないので、それが酔いなのかそうでないのか、判別がつかない。祝いも兼ねて、というのなら自分も主の器に注がなければ、と手を伸ばしたが、審神者はひょいと入れ物を遠ざけて、再び長谷部の器に注いだ。三杯目。「あるじ、は」抗議するように見上げた先、審神者の顔がぼやけて見えた。
    「私はいいんだ」
     ぐにゃりと歪んだ輪郭で審神者が囁く。
    「これはお前の為に用意したんだからな」
    「……おれ、の、ため…?」
     顔がじわじわと熱くなった。酒のせいだろうか。三杯目を舐めるように飲みこむと、途端急速な眠気に襲われ、長谷部は目を開け続けることが出来なくなった。
    「眠いのか?」
    「は、い……」
    「眠ってしまっていいよ」
    「いえ…でも……」
     戦績の報告もやるべきことも済んでいるとは言え、主の部屋でいくらなんでも、と思う気持ちが長谷部を押しとどめる。だというのに、審神者の手がほとんど閉じている長谷部の瞼を覆い、緩やかに撫でたので、それが余計に眠気を誘った。
    「大丈夫だよ、眠っている間に、全部済ませておくから」
    「…ぜん、ぶ…? なに、が」
     その言葉の意味を考える前に、長谷部の意識は落ちるようにまどろみの中に沈んでいった。








    「――、ぅ、あ……?」
     どれくらいの間眠っていただろうか。鈍い痛みと、胃がせりあがるような圧迫感で目が覚める。体がやけに熱い。薄く目を開けると、頭の上から「げ、」と焦った声がした。
    「あ、るじ…? ぁ、くっ」
     声をあげると同時に下腹部が圧迫されるような感覚で息が詰まる。あたりは薄暗く、自分の部屋ではないが、酒を飲んでいた審神者の部屋でもない。ただ体の下には柔らかな布団があって、長谷部はそこに仰向けに寝かせられているのだった。敷布が肌に直接触れている感覚から、服を着ていないことにも気付く。部屋は薄暗い上に、靄がかかったように視界が曇っていて、何か焚かれているのか、独特な香りが鼻を擽った。それでも目を凝らして神経を研ぎ澄ませれば、薄暗さの中、審神者が首を傾げてこちらぞ覗き込んでいるのがようやく見て取れる。
    「分量間違えたか…? ずっと寝ててくれた方が助かったんだがなあ」
    「っ、え…?」
     その言葉の真意が分からず、体を起こそうとすると圧迫感がひどくなった。
    「ぁ、ひっ」
    「ああ、動かない方がいいぞ。中が切れてしまう」
    「えっ、中って、あ、あっ?」
     声が喉に引っかかってうまく言葉にならない。しかし、暗闇に目が慣れたのか、寝起きの頭がようやく覚醒したのか、そこで長谷部はようやく、置かれている状況をうっすら理解することが出来た。それが理解しがたい光景だったとしても。
    「んぁ、な、な、何を…っ」
    「何って」
     圧迫感の正体であった下腹部の更に下を審神者の手が撫でて、無意識に腰が跳ねる。跳ねた拍子に、審神者の股座と繋がったそこがぐちゅ、と音を立てた。中を犯されてる、と気付くと同時に布団の上に投げ出された足を抱えあげられる。あらぬ箇所でみちり、と肉が肉を押し出す感触。長谷部の脚の間を体で割って入った審神者は、額に汗を浮かべながらも、まるで昼間と変わらない、困ったような笑顔で言った。
    「妻とセックスしてるんだが」
     そうして長谷部の戸惑いなど気にもかけず、ぐいと大きく体を屈める。「ひっ」と掠れた声が零れた。審神者の動きに合わせて、体を内側から広げられるような感覚に襲われる。ひどく苦しいし、尻の狭間がひりつくように痛むのに、肉と肉が擦れて、腰をぞくぞくするような痺れが走った。
    「はあ、さすがにきついな…じゅうぶん解したのに」
    「う、あっ あっ、あーっ」
     意識がはっきりすればするほど、脈打った肉がごりごりと内壁を擦りながら押し入る感覚が鮮明になる。しかし、その苦しさと痛みより、「どうして」という疑問の方が大きかった。形式だけ、と審神者は言わなかったか。形だけのものだと、あとは何も変わりはしない、と。それなのに、これではまるで―――
    「形式だけのはずだったんだがなあ」
     審神者はいつだって長谷部の考えを見透かすかのようにその先の答えを言ってしまう。
    「初夜に体の交わりも持たなければ、結びついたことにはならないんだとさ。ごめんな。私も不本意なんだけれど、仕方ないよな? こうしないと私はこの本丸に存在し続けることができないんだから」
    「ぅっ、ふ、あっ」
    「お前も不本意だろうけど、大丈夫だよ」
    「お、れは…っあ!」
    「さっき飲ませた酒にはまじないをかけてあるからね。明日には何も覚えていないはずだし…本当は朝まで目覚めないはずだったんだが…まあ誤差の範囲内か」
    「ひっ、や、あ、あぁ、」
     滔々と話しながらも腰を何度も押し付けるので、審神者の声と、ぬちゅぬちゅというあからさまな交わりの音が同時に耳を犯した。何か言いたいのに、言い返したいのに、口の中に残る酒の甘さが張り付いたように塞いで、うまく言葉が出ない。不本意じゃない、と言いたいのに、口から出るのは言葉にならない喘ぎばかりだ。長谷部を犯しながら薄く微笑んでいる審神者に違和感を覚えるが、行為そのものは決して嫌ではなかった。しかし、審神者が長谷部の脚を肩に担ぎあげ、更に体を寄せたので、喉からは最早悲鳴のような声が漏れる。本来何かを受け入れるべき場所ではないそこが、下生えが触れる程深く穿たれて、みちみちといやな音を立てて犯され続けていた。どうなっているのか確かめる術はないが、何かを塗られたのか、揺さぶられる度、穴から溢れるぬるついた液体が尻肉の間を流れていく。
    「ひっ や、あぁ…」
    「おっと、暴れるなよ」
    「や、やめ、あっ あう」
     伸ばした手は、抵抗と見られたのか、すぐに掴まれて布団に押し付けられる。ちがう、と訴えたくて、けれど伝える程の余裕もない。

     本当は、嬉しかった、と。

     本丸で共に生活しているのに、自分たち刀剣男士とどこかで一線を引いて、審神者という役割に関わる部分以外では距離を置く男に、それならせめて臣下として一番近いところにいたいと、そう思ってずっと仕えてきたのだ。仕事人間である審神者に、自分も同じ性質ですよと言わんばかりに事務的に務め続ければ、彼は自分にだけは他よりもいくらか頻繁に声をかけてくれるようになった。それが誇らしく、嬉しくて、けれどそれを伝えてしまえば彼は嫌がるだろうと、気持ちを隠して、仕え続けた。だから審神者の申し出は、それが例え形式上のものだとしても、審神者自身にそういった深い気持ちが一切ないのだとしても、『お前なら』と長谷部を選んだ事実はこれ以上にない幸福だった。その事実だけを胸に、これからもずっと臣下として彼の傍にいられると、気持ちを押し隠してい続けることに耐えられると、そう思っていたのに、まさかそう思った夜のうちに抱かれるだなんて想像するわけがない。
    「ひぐ、う、うう~~~っ」
    「あー、泣くなよ…参ったな」
     涙で滲んだ視界の仲で、眉を顰めた審神者の顔が歪んだ。一方的に凌辱されることも、痛いくらいに犯されることも長谷部は平気だ。痛みは耐えるだけだし、傷がついたら手入れをすれば残らない。しかし、恋い焦がれた主に義務的に抱かれているのだと思うと、手入れでは決して届かない場所がひどく痛んだ。これまでそうだったように、審神者に抱かれる夢を見て翌朝罪悪感にかられた方がずっとマシだ。
     腕を押さえつけられては顔も隠せず、零れた涙が敷布に染みていく。
    「…ひどい顔だ」
    「ん、あ、ごめ、なさ…」
     顔を背けて審神者の視線から逃れようとすると、腕を押さえつけていた手が離れて、代わりに逸らした顔を容易く捉えた。
    「ひっ!」
    「ああ、目が真っ赤だ。かわいそうに」
    「や、やめ、見――っ」
     言葉とは裏腹に、審神者はやはり目を細めて笑んでいる。話す言葉も調子にも熱は感じられないのに、内側を犯す性器は硬度と熱を持っていて、そのアンバランスさに、快感以外の寒気が背筋を走った。熱に浮かされたように頬を紅潮させたその表情も、ぎらついた眼も、「初夜だけだなんて勿体ないなあ」と上擦って漏れた声も、長谷部は知らない。
    「うぁ、ん、…ひっ」
     けれどその感情を言葉にすることは出来なかった。言葉にならない声が半開きの口から呻きのように漏れる。
     もう一度伸ばした手は空を切り、抱き込まれた体が揺さぶられるのに合わせて人形のように揺れた。
    「もう少し、もう少しだからな…っ」
    「あっあっ、や、あぁっ うぁ、」
    審神者がいっそう強く腰を叩きつけると、ばちゅん、と結合部が激しく音を立てた。激しく数度叩きつけられたかと思えば、今度はぐりぐりと腰を押し付けられるように進められ、腹の奥がじわりと熱くなる。
    「っ、ぅ……」
    「はあ……あー、出る…っ」
    零れないようしっかりと腰を抱き寄せられながら、審神者の精がとくり、とくりと注ぎ込まれる。その狂おしく切ない感覚を最後に、長谷部の意識は暗闇に落ちていった。









     目を覚ますと、ひどく体がだるかった。
     頭はガンガンと痛み、窓から差し込む朝日や鳥の囀りがひどく耳障りで、長谷部はそう感じてしまう思考と体の不調にただただ戸惑った。しかし、昨日は数回出陣した他はいつも通り過ごしていたはずだし、今日もそれは変わりない。死ななければどうということはないが、あまりひどければ出陣に、ひいては主の戦績に支障が出る。長引くようであれば手入れ部屋へ入ることも検討しなければ、と、考えて、長谷部は着替えながら首を傾げる。こんなことが、前にもあったような気がしたのだ。
     しかし、考えたところで頭の隅がもやもやしたまますっきりせず、仕方なくだるい体を引きずって部屋を出た。

     「長谷部、」と声がかかる。

     前にもこうして声をかけられたことがある気がした。目の前には、今まさに長谷部の部屋の戸に手を掛けようとしたらしく、手を中途半端に宙に浮かせて困ったように佇んでいる審神者がいる。前に、こんな光景を見た気がした。無意識に背筋が伸びる。
    「朝からすまない。…少し、いいか」
     そう言って薄く笑った審神者からは、嗅いだことがあるような、不思議な香りがした。


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    いなばリチウム

    DOODLE複数の刀に手を出すタイプのクズ審神者の始まり3
    がっつり主清初夜 多分初夜
    主清初夜R18***


    「ん、んぅ、ん……っ!」
     俺がしたのとは違う、唇を合わせるだけじゃなくて、舌がねじこまれて、絡み合って、吸われる、そんな口づけだった。舌先を吸われる度、じゅる、くちゅ、といやらしい音が頭の中に直接響いて、ぼぅっとしてしまう。それだけでもういっぱいいっぱいなのに、主の手が俺の耳朶を撫でて、くにくにと触るものだから、そんなつもりないのに腰が浮いてしまう。
    「っあ、ん……やだ、それ……っ」
    「ふふ、耳よわいんだね」
     口づけの合間に、主が声を立てて笑う。顔が離れたと思ったら、今度は耳に舌がぬるりと這わされて、ぞくぞくした。
    「ひぁ……っ」
     耳の穴に舌を入れられて、舐られる。舌と唾液の音が直接聞こえてきて、舐められていない方の耳も指でいじられるからたまったもんじゃない。ぐちゅぐちゅ聞こえる音が俺の頭の中を搔き乱す。ついさっきまで俺が主を組み敷いていたのに、今はもう完全に逆転していた。暴れそうになる足は主が太股の間に体を押し込んできてもう動かせない。膝頭が足の間に入り込んできて、ぐりぐりと押される。
    3855

    いなばリチウム

    DOODLE複数の刀に手を出すタイプのクズ審神者の始まり2
    さにみか要素がほんの少しある主清です。
    答え合わせ さにみかになるまでと主清のはじまり だってさあ……悩みがあるのか、って聞かれて、実は欲求不満で、とか言えないでしょ、自分の刀に。完全にセクハラだもんな。
    「よっきゅうふまん……?」
     俺の体を跨ぐ形で覆い被さっている清光は、俺の言葉を繰り返して、ぱち、ぱち、と瞬きをした。かわいい。きょとんとしている。
     俺は簡単に説明した。清光に何度も心配されて、まずいな、とは思っていたこと。目を見たら本音を吐きそうで、ふたりきりになるのを避けていたこと。鏡を見れば、自分が思っている以上に陰鬱な顔をしていて、けれど解決策がないまま数ヶ月を過ごしていたこと。審神者になる前は恋人みたいなセフレみたいな存在が常に3~6人はいたんだけど全員にフラれて、まあなんとかなるっしょ、と思ったものの自分が思っていた以上になんともならないくらい、人肌が恋しくなってしまったこと。刀達のことはうっかり口説きそうになるくらい好きなこと。でも臣下に、それもかみさまに手を出すのはさすがにセクハラだし不敬っぽくない? まずくない? と思っていたこと。
    2337

    いなばリチウム

    DOODLE複数の刀に手を出すタイプのクズ審神者の始まり1.5
    さにみか要素がほんの少しある主清です。
    一個前の答え合わせだけど審神者メインで他の本丸の審神者との交流とかなので読み飛ばしてもいいやつです
    答え合わせ 審神者くわしくサイド 一応ね、俺も、俺がちょっとおかしいってことは分かってるんだけどね。おかしい、って分かった上で、今、ここにいる。

     審神者になる前、俺は常に最低3人、多くて6人、恋人ないしセフレがいた。
     昔から、俺はどうにも”重い”らしく、恋人が出来ても大体一ヶ月くらいでフラれるばかりだった。俺は毎日好きって言いたいし毎日キスしたいし毎日くっついていたいし毎日好きな子を抱きたいのに、それがだめらしい。体目当てみたいでいやだ、と言われたので、昼間のデートもみっちりプランを立てて楽しく過ごしてみたものの、大学に通いながらデートしてその上で夜は夜でセックスするの体力やばすぎるむり、って言われてフラれる。メンヘラも俺と付き合うと根負けするレベル、って大学の頃噂されたっけ……。非常に遺憾だった。なんでだ。幸い、縁があってフラれてもまた別の子と付き合えることが多かったけど、そんなことが続いたので遊び人と認定されちゃうし……。
    3828

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    DONE情けない攻めはかわいいねお題ガチャ
    https://odaibako.net/gacha/1462?share=tw
    これで出たお題ガチャは全部!微妙に消化しきれてない部分もあるけどお付き合いいただきありがとうございました!
    情けない攻めの審神者×長谷部シリーズ④・長谷部にハイキックで倒されるモブを見て自分も蹴られたくなる審神者
    ・暴漢に襲われかけた審神者と、その暴漢を正当防衛の範囲内で捻りあげ社会的死に追い込み審神者を救出する強くて怖い長谷部。


    【報道】
     
     政府施設内コンビニエンスストアで強盗 男を逮捕

     ×日、政府施設内コンビニエンスストアで店員に刃物を突き付け、現金を奪おうとしたとして無職の男が逮捕された。
     男は、施設に出入りを許可された運送会社の制服をネットオークションで購入し、施設内に侵入したと思われる。運送会社の管理の杜撰さ、政府施設のセキュリティの甘さが浮き彫りになった形だ。
     店内にはアルバイトの女性店員と審神者職男性がおり、この男性が容疑者を取り押さえたという。女性店員に怪我はなかった。この勇敢な男性は本誌の取材に対し「自分は何もしていない」「店員に怪我がなくてよかった」と答えた。なお、容疑者は取り押さえられた際に軽傷を負ったが、命に別状はないという―――
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    いなばリチウム

    MOURNING六年近く前(メモを見る限りだと2016年4月)に利き主へし小説企画で「初夜」をテーマに書いた話です。他にもいくつか初夜ネタを書いてたのでまとめてpixivに載せるつもりだったんですけど全然書ききれないので一旦ここに載せておきます!
    当時いつも書いてた主へしの作風とすこし雰囲気変えたので楽しかったし、性癖の一つでもあったので今読んでも好きな話です。
    CPではない二人の話です。長谷部が可哀想かも。
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     目を覚ますと、頭は内側から叩かれているように錯覚するぐらい痛み、窓から差し込む朝日や鳥の囀りがひどく耳障りで、長谷部はそう感じてしまう思考と体の不調にただただ戸惑った。しかし、昨日はいつも通り出陣したはずだったし、今日もそれは変わりない。死ななければどうということはないが、あまりひどければ出陣に、ひいては主の戦績に支障が出る。長引くようであれば手入れ部屋へ入ることも検討しなければ、と考える。
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    Norskskogkatta

    PAST主くり編/近侍のおしごと
    主刀でうさぎのぬいぐるみに嫉妬する刀
    主の部屋に茶色いうさぎが居座るようになった。
    「なんだこれは」
    「うさぎのぬいぐるみだって」
    「なんでここにある」
    「いや、大倶利伽羅のもあるっていうからつい買っちゃった」
    照れくさそうに頬をかく主はまたうさぎに視線を落とした。その視線が、表情が、それに向けられるのが腹立たしい。
    「やっぱ変かな」
    変とかそういう問題ではない。ここは審神者の部屋ではなく主の私室。俺以外はほとんど入ることのない部屋で、俺がいない時にもこいつは主のそばにいることになる。
    そして、俺の以内間に愛おしげな顔をただの綿がはいった動きもしない、しゃべれもしない相手に向けているのかと考えると腹の奥がごうごうと燃えさかる気分だった。
    奥歯からぎり、と音がなって気づけばうさぎをひっ掴んで投げようとしていた。
    「こら! ものは大事に扱いなさい」
    「あんたは俺を蔑ろにするのにか!」
    あんたがそれを言うのかとそのまま問い詰めたかった。けれどこれ以上なにか不興をかって遠ざけられるのは嫌で唇を噛む。
    ぽかんと間抜けな表情をする主にやり場のない衝動が綿を握りしめさせた。
    俺が必要以上な会話を好まないのは主も知っているし無理に話そうと 1308

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    PAST主くり編/支部連載シリーズのふたり
    主刀でうさぎのぬいぐるみに嫉妬する刀
    審神者視点で自己完結しようとする大倶利伽羅が可愛くて仕方ない話
    刺し違えんとばかりに本性と違わぬ鋭い視線で可愛らしいうさぎのぬいぐるみを睨みつけるのは側からみれば仇を目の前にした復讐者のようだと思った。
    ちょっとしたいたずら心でうさぎにキスするフリをすると一気に腹を立てた大倶利伽羅にむしりとられてしまった。
    「あんたは!」
    激昂してなにかを言いかけた大倶利伽羅はしかしそれ以上続けることはなく、押し黙ってしまう。
    それからじわ、と金色が滲んできて、嗚呼やっぱりと笑ってしまう。
    「なにがおかしい……いや、おかしいんだろうな、刀があんたが愛でようとしている物に突っかかるのは」
    またそうやって自己完結しようとする。
    手を引っ張って引き倒しても大倶利伽羅はまだうさぎを握りしめている。
    ゆらゆら揺れながら細く睨みつけてくる金色がたまらない。どれだけ俺のことが好きなんだと衝動のまま覆いかぶさって唇を押し付けても引きむすんだまま頑なだ。畳に押し付けた手でうさぎを掴んだままの大倶利伽羅の手首を引っ掻く。
    「ぅんっ! ん、んっ、ふ、ぅ…っ」
    小さく跳ねて力の抜けたところにうさぎと大倶利伽羅の手のひらの間に滑り込ませて指を絡めて握りしめる。
    それでもまだ唇は閉じたままだ 639

    Norskskogkatta

    PAST主般/さにはにゃ(男審神者×大般若)
    主刀でうさぎのぬいぐるみに嫉妬する刀

    主に可愛いと言わせたくてうさぎを買ってきたはんにゃさん
    「どうだいこれ、可愛らしいだろ?」
    主に見せたのは最近巷で話題になっている俺たち刀剣男士をモチーフにしたうさぎのぬいぐるみだ。といっても髪色と同じ毛皮に戦装束の一部を身につけているだけだが、これがなかなか審神者の間で人気らしい。
    「うさぎか?」
    「そうそう、俺のモチーフなんだぜ」
    うちの主は流行に疎い男だ。知らないものを見るときの癖で眉間にシワを寄せている。やめなって言ってるんだがどうにも治らないし、自分でも自覚してるらく指摘するとむっつりと不機嫌になる。そこがこの男の可愛いところでもあるがそれを口にすると似合わんと言ってさらにシワが深くなるからあまり言わないようにはしてる。厳しい顔も好きだがね。
    そんな主だから普段から睦言めいたものはなかなか頂けなくて少しばかりつまらない。そこでちょっとこのうさぎを使って可愛いとか言わせてみようと思ったわけさ。
    主に手渡すと胴を両手で持ちながらしげしげと眺めている。耳を触ったり目元の装飾をいじったり。予想よりだいぶ興味を示してるなぁと見ているときだった。
    「ああ、可愛いな」
    主が力を抜くように息を吐く。
    あ、これは思ったより面白くないかもしれない。そ 874

    Norskskogkatta

    PASTさにちょも
    リクエスト企画でかいたもの
    霊力のあれやそれやで獣化してしまったちょもさんが部屋を抜け出してたのでそれを迎えに行く主
    白銀に包まれて


    共寝したはずの山鳥毛がいない。
    審神者は身体を起こして寝ぼけた頭を掻く。シーツはまだ暖かい。
    いつもなら山鳥毛が先に目を覚まし、なにが面白いのか寝顔を見つめる赤い瞳と目が合うはずなのにそれがない。
    「どこいったんだ……?」
    おはよう小鳥、とたおやかな手で撫でられるような声で心穏やかに目覚めることもなければ、背中の引っ掻き傷を見て口元を大きな手で覆って赤面する山鳥毛を見られないのも味気ない。
    「迎えに行くか」
    寝起きのまま部屋を後にする。向かう先は恋刀の身内の部屋だ。
    「おはよう南泉。山鳥毛はいるな」
    「あ、主……」
    自身の部屋の前で障子を背に正座をしている南泉がいた。寝起きなのか寝癖がついたまま、困惑といった表情で審神者を見上げでいた。
    「今は部屋に通せない、にゃ」
    「主たる俺の命でもか」
    うぐっと言葉を詰まらせる南泉にはぁとため息をついて後頭部を掻く。
    「俺が勝手に入るなら問題ないな」
    「え、あっちょ、主!」
    横をすり抜けてすぱんと障子を開け放つと部屋には白銀の翼が蹲っていた。
    「山鳥毛、迎えにきたぞ」
    「……小鳥」
    のそりと翼から顔を覗かせた山鳥毛は髪型を整えて 2059

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    MOURNING主くり
    軽装に騒ぐ主を黙らせる大倶利伽羅

    軽装に騒いだのは私です。
    「これで満足か」
     はあ、とくそでかいため息をつきながらもこちらに軽装を着て見せてくれた大倶利伽羅にぶんぶんと首を縦に振る。
     大倶利伽羅の周りをぐるぐる回りながら上から下まで眺め回す。
    「鬱陶しい」
    「んぎゃ!だからって顔つかむなよ!」
     アイアンクローで動きを止められておとなしく正面に立つ。
     ぐるぐる回ってるときに気づいたが角度によって模様が浮き出たり無くなったりしていてさりげないおしゃれとはこういうものなんだろうか。
     普段出さない足も想像よりごつごつしていて男くささがでている。
     あのほっそい腰はどこに行ったのかと思うほど完璧に着こなしていて拝むしかない。
    「ねえ拝んでいい?」
    「……医者が必要か」
     わりと辛辣なことを言われた。けちーと言いながら少し長めに思える左腕の袖をつかむとそこには柄がなかった。
    「あれ、こっちだけ無地なの?」
    「あぁ、それは」
     大倶利伽羅の左腕が持ち上がって頬に素手が触れる。一歩詰められてゼロ距離になる。肘がさがって、袖が落ちて、するりと竜がのぞいた。
    「ここにいるからな」
     ひえ、と口からもれた。至近距離でさらりと流し目を食らったらそらもう冗談で 738

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    MOURNING主くり
    支部のシリーズに出てくるふたりのその後
    煙草じゃなくて


     昼食も終わり、午後の仕事を始める前の煙草休憩。再び癖となってしまったことに蜂須賀は顔を顰めたが、すまないとだけ言っている。
     まあ、目的は単に紫煙を揺らすだけではないのだが。
    「またここに居たのか」
    「タバコ休憩な」
     玉砂利を踏み締める音を立ててやってきたのは大倶利伽羅だ。指に挟んだ物をみせるとあからさまに機嫌が悪くなる。それがちょっと可愛く思えてどうにもやめられずにいる。
     隣に並んだ大倶利伽羅をみて刀剣男士に副流煙とか影響するのだろうかと頭の片隅で考えながらも携帯灰皿に捨ててしまう。そうするまでじっとこちらを見ているのだ。
     しっかりと見届けてふん、と鼻を鳴らすのが可愛く見える。さて今日はなにを話そうか、ぼんやりしているとがっしりと後頭部を掴まれる。覚えのある動作にひくりと頬が引きつった。
    「ちょっ、と待った」
    「なんだ」
     気づけば近距離で対面している大倶利伽羅に手のひらを翳して動きを止める。指の隙間から金色とかち合う。普段は滅多に視線を合わせやしないのに、こういうときだけまっすぐこちらを見てくる。
    「お前なにするつもりだ」
    「……嫌なのか」
     途端に子犬 910

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    MOURNING主くり
    菊酒をのんで酔い潰れた後日、大倶利伽羅が好きだなぁと自覚しなおした審神者と日を改めて飲み直し、仲良し()するまで。
    月色、金色、蜂蜜色


    急に熱さが和らいで、秋らしい涼やかな風が吹く。
    空には満月が浮かんで明るい夜だ。
    今は大倶利伽羅とふたり、自室の縁側で並んで酒をちびちびとなめている。徳利は一本しか用意しなかった。
    「あまり飲みすぎるなよ」
    「わかってるよ、昨日は運ばせて悪かったって」
    「あんたひとりを運ぶのは何でもないし、謝られるいわれもない」
    「じゃあなんだよ……」
    「昨日は生殺しだったんでね」
    言葉終わりに煽った酒を吹き出すかと思った。大倶利伽羅は気を付けろなんて言いながら徳利の酒を注いでくる。それを奪い取って大倶利伽羅の空いた杯にも酒を満たす。
    「……だから今日誘ったんだ」
    「しってる」
    静かな返答に頭をかいた。顔が熱い。
    以前に忙しいからと大倶利伽羅が望むのを遮って喧嘩紛いのことをした。それから時間が取れるようになったらと約束もしたがなかなか忙しが緩まずに秋になってしまった。
    だいぶ待たせてしまったとは思う。俺だってその間なにも感じなかったわけじゃないが、無理くり休暇を捻じ込むのも身体目的みたいで躊躇われた。
    そして昨日の、重陽の節句にと大倶利伽羅が作ってくれた酒が嬉しくて酔い潰れてし 1657

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    寒くなってきたのにわざわざ主の部屋まできて布団に潜り込んできた大倶利伽羅
    秋から冬へ、熱を求めて


    ひとりで布団にくるまっていると誰かが部屋へと入ってくる。こんな時間に来るのなんて決まってる。寝たふりをしているとすぐ近くまで来た気配が止まってしまう。ここまできたんなら入ってくれば良いのに、仕方なく布団を持ちあげると潜り込んできて冷えた足をすり寄せてくる。いつも熱いくらいの足を挟んでて温めてやると、ゆっくりと身体の力が抜けていくのがわかる。じわりと同じ温度になっていく足をすり合わせながら抱きしめた。
    「……おやすみ、大倶利伽羅」
    返事は腰に回った腕だった。

    ふ、と意識が浮上する。まだ暗い。しかしからりとした喉が水を欲していた。乾燥してきたからかなと起き上がると大倶利伽羅がうっすらと目蓋を持ち上げる。戦場に身を置くからか隣で動き出すとどうしても起こしてしまう。
    「まだ暗いから寝とけ」
    「……ん、だが」
    頭を撫でれば寝ぼけ半分だったのがあっさりと夢に落ちていった。寝付きの良さにちょっと笑ってから隣の部屋へと移動して簡易的な流しの蛇口を捻る。水を適当なコップに溜めて飲むとするりと落ちていくのがわかった。
    「つめた」
    乾きはなくなったが水の冷たさに目がさえてしまっ 1160

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    冬至の日に書いた
    いっしょにゆず湯に入るだけの話
    冬至の柚子湯


    一年で一番日が短い日、普段は刀剣男士たちが使っている大浴場に来た。仕事を片付けてからきたから誰もいない。
    服を脱いで適当に畳んでから、旅館のような脱衣籠に置いておく。磨りガラスのはめ込んである木枠の戸を横にひけばふわりと柔らかい湯気があたり、それにつられて奥を見てみれば大きな檜風呂には黄色くて丸いものが浮かんでいた。
    普段は審神者の部屋に備えてある個人用の風呂を使っているのだが、近侍から今日の大浴場は柚子湯にするから是非入ってくれと言われたのだ。冬至に柚子湯という刀剣男士たちが心を砕いてくれた証に彼らの思いに応えられるような審神者になろうと気が引き締まる。
    「柚子湯なんて本丸くるまでしたことなかったな」
    檜に近寄って掛け湯をするだけでもゆずの香りが心を安らげてくれる。
    さて洗おうかと鏡の前へ椅子を置いて腰掛けた時、脱衣所への戸が音を立てた。
    「ここにいたのか」
    「なんだ、まだだったのか」
    素っ裸の大倶利伽羅が前を隠しもせずはいってくる。まあ男湯だし当然なのだが。
    探していたのかと聞けばまた遅くまで仕事をしているのかと思ってなと返されてしまう。日頃の行いを振り返っている 1909