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    いなばリチウム

    @inaba_hondego

    小説メイン
    刀:主へし、主刀、刀さに♂
    mhyk:フィガ晶♂
    文アル:はるだざ、菊芥、司♂秋
    文スト:織太

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    いなばリチウム

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    https://poipiku.com/594323/5954251.html
    これと同軸の話。(読まなくても大丈夫!)
    付き合いたてほやほやのフィガ晶+双子の話。

    付き合いたてのフィガ晶+双子 フィガロと、いわゆる恋人としてのお付き合いが始まった。まさかそういうことになると思わなくて、「じゃあ、改めて、これからよろしくね、賢者様」とフィガロが差し出してくれた手を反射的に力いっぱい握ってしまった。
    「は、はい! よろしくお願いします!!」
    「あはは、情熱的だね」
     運動部の挨拶じゃないんだから、と我ながら恥ずかしくなるくらい声を張ってしまった俺に、フィガロは優しい笑顔を向けてくれた。

     それで、何が変わったかというと、別に、大きな変化はなかった。

     他の人に気を遣わせてしまったら申し訳ないし、と二人の仲を誰にも言ってはいないものの、人前でも、二人きりの時にも、今までと距離感は変わらなかった。ちょっと寂しい気がしたけれど、いやいや! と俺は首を振る。付き合うにあたって、あれをしよう、これをしようと具体的に話したわけじゃない。それに、前も、今も、俺はフィガロのことを好きなのと同じ位、彼と一緒に過ごす時間が大好きだ。一緒にお茶をしたり、買い物したり、眠れない夜にはとりとめのない話をしたりする、そんな時間が。それに、何一つ変わらないわけじゃない。人込みの多いところで、はぐれないようにという気持ちもあって手を繋げば、小さく笑って握り返してくれたりだとか、シャイロックのバーに行く回数が少し減って、その替わりに俺の部屋でのんびり過ごすことが増えたりだとか。少しずつの変化だけれど、その一つ一つが愛おしかった。それに、フィガロは気さくに接してくれるけど、俺よりもずっと、ずっと長生きしている魔法使いなのだ。他の人を知らないから分からないけれど、長寿の魔法使いから見れば俺はきっと子供みたいなもので、だから、

    ***

    「あの、だから、何もなくても、仕方ないのかなって……不満があるとか、そういうのでは全然ないんですけど……」
     冷めてしまったマグカップを、無駄と知りながら両手で何度も包みなおす。椅子に腰かけた賢者の両際で、最初は『賢者ちゃん、我らと恋バナしよ!』『フィガロちゃんとお付き合いしてるの、知ってるんだからね!』とキャッキャしながら目を輝かせていた双子は、話が進むにつれ段々怪訝な顔つきになっていった。
    「「ふむ……」」
     揃って同時に首を傾げた双子に、賢者は慌てて笑顔を作る。
    「ごめんなさい。恋バナにならないですよね……忘れて下さい」
    「いやいや、すまぬのう。我らこそ、少しはしゃいでしまった」
    「賢者ちゃんは何も悪くないからね! 謝るでない」
     ね、と両際から見つめられ、圧に負けて賢者もこくりと頷いた。その間に、双子は互いに目配せする。
    「じゃあ、我らはそろそろ退散するかの」
    「仕事の邪魔してごめんね、賢者ちゃん」
    「いえいえ、俺こそ良い休憩になりました。ありがとうございます」
     元々、賢者が書類仕事に根を詰めすぎるからと、息抜きも兼ねてやってきたのだ。律義に頭を下げた賢者に手を振り、スノウとホワイトは部屋を出ると、そのままひそひそ話を始めた。
    「どう思う? スノウ」
    「どうもこうもないのじゃ、ホワイト」
    「我ら、考えることは同じじゃな?」
    「もちろん」
     同じ顔を見合わせ、うんうんと頷き互いに鼓舞し合うよう手を上げる。
    「「れっつごー!」」


    ***

     うわっ ……いえ何でも。なんですかお二人で俺の部屋に来るなんて。どう考えても治療目的じゃないですよね。嫌な予感しかしな……、……何で知ってるんです? ああいや、お二人が気付かないわけないですよね。……そうですよ。賢者様と、恋人として正式にお付き合いしてます。それが何か? ……そのままの意味ですよ。色々あったし、俺も俺なりに色々考えたんです。え? 手を繋いだだけ……って、それ賢者様から聞い、……まあ、想像つきますけど。賢者様に強引に迫って聞き出したんでしょう? 賢者様は優しいから、つい話してしまっただけ、って分かってますよ。責めたりしません。え? ……随分掘り下げますね。弟子の色恋沙汰にそんなに食いつくタイプでしたっけ?
     別に、俺も賢者様を大事にしたいというか……言わせないで下さいよ……。そもそも、賢者様もそんなにがっつく感じじゃないでしょう。まだ若いとは言え、魔法使いと付き合うなんてもちろん俺が初めてだろうから戸惑うことも多いだろうし。俺はお二人程じゃなくても長く生きてますし、気は長い方だし、賢者様の心の準備が整うまで待ってようかなあと思ってるだけです。それが包容力ってやつじゃないですか? あはは、いかにも南の優しい先生、って感じでしょう?

    ***

     ドアを開いた途端、嫌そうな顔を隠しもしなかったフィガロは渋りながらも、両際から質問攻めにされるがまま、滔々と語った。双子は、「はああああ~~~~」と長い溜息を吐き、次に「すうううう」と吸い込むと、

    「話し合わぬか!」
    「コミュニケーション不足じゃ!」

     と、声を張り上げたので、フィガロは思わず耳を押さえた。
    「急に大きな声を出さないで下さいよ……驚くじゃないですか」
    「驚いたのはこっちじゃ!」
    「あ~あ! 賢者ちゃんかわいそ~!」
    「時々からかいつつ見守ってあげようと思ってたけどもう無理~!」
    「はあ?」
     怪訝な顔つきのフィガロに、スノウとホワイトは両際で交互に話し始める。全てではないが、晶との会話のほんの一部だ。恋人としての付き合いに、何も不満はないと言ってはいるものの、寂しそうな顔をしていたこと、大きな変化がないことを、晶自身は、長生きの魔法使いならそういうものなのかな? と受け取ってしまっていること。ということは、フィガロが『待って』いる間は当分何の変化も起きないのでは? というか、そのあたり、ちゃんと話し合わぬか! これだからフィガロちゃんは! などなど。
     最初は、師匠二人がなんかうるさいなあ、という顔を隠しもしていなかったフィガロだったが、話が進むにつれ段々真顔になり、「ふうん……賢者様がねえ」と独り言のように呟いた。
    「そうですね……確かに、俺が勝手に待ってただけで、きちんと話したことはなかったな」
    「「ほらあ!」」
    「お二人に言われて行動するのは癪ですけど、後で賢者様と話してみますよ」
    「癪って言った?」
     むむむ、と唇を尖らせたものの、双子は用は済んだでしょうと言わんばかりにこちらに背を向けたフィガロを再び両際から挟み込み、体を無理やりドアの方へ向けた。
    「うわ、なんです。まだ何か?」
    「今じゃ!」
    「今行くんじゃ!」
    「善は急げじゃ!」
    「ちょ、ちょっと……」
     ぐいぐいと背中を押され、自分の部屋から追い出される形になったフィガロはそれでもまだ抵抗した。
    「大体、賢者様は仕事中でしょう。理由もなく部屋に邪魔しに行くのも、」
    「この期に及んでまだ言っておる!」
    「あのねえ、フィガロちゃん、理由なんて――」

    ***

     コンコン

     戸を叩く音に、晶は顔を上げた。元々得意とは言い難い事務仕事に頭も体も悲鳴をあげていたところだったので、その音は作業を中断するのにちょうど良いきっかけだった。
    「はーい! 今開けます」
     やるときは一気にやってしまいたい、そもそも賢者として自分が役に立てる仕事もそう多くないんだし、明確に自分にしかやれない仕事くらい、と思いながら書類に向かっているとついつい休憩や食事がおろそかになるのを見越して、双子を含め他の魔法使いも時々手土産と一緒に部屋にやってくることがあった。気遣われることが申し訳ないと思う反面、そんな優しい人達のためにもがんばろう、とも思う。だからこのノックの音も、もしかしたらその内の一人かも、と思いながら戸を開けた。
    「……やあ、賢者様」
    「! フィガロ」
     そこにいたのは、晶ががんばりたいと思う理由の中でも、一番に顔が浮かぶ人物だった。いつも通り、穏やかな笑みを浮かべてはいるが、少しだけ困ったように眉尻を下げている。
    「こんにちは。えっと、どうかしましたか?」
    「ああ、いや……」
     珍しく、言葉に詰まったように言い淀み、それから、
    「恋人に会いに来るのに、理由がいるかな?」
     そう、照れたように笑ったので、晶もつられてじわじわと赤くなっていく。
    「えっ、いや、そんな、あの……」
     付き合い始めて、明確に大きな変化があったわけではない。だからこそ、こいびと、とはっきり口に出されるのも慣れていなかった。けれど、
    「……会いに来てくれて、嬉しいです。フィガロ」
     消え入りそうな声で、それでも顔を上げてそう言うと、フィガロもどこか安堵したように笑ったのだった。

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    いなばリチウム

    TRAININGhttps://poipiku.com/594323/10668650.html
    これの続き。騙されやすい審神者と近侍の長谷部の話。
    だまされやすい審神者の話2 疎遠になっても連絡をとりやすい、というタイプの人間がいる。

     それがいいことなのか、はたまたその逆であるなのかはさておき、長谷部の主がそうだった。学校を卒業し、現世を離れてから長いが、それでも時折同窓会やちょっとした食事会の誘いがあるという。ほとんどは審神者業の方が忙しく、都合がつかないことが多いけれど。今回はどうにか参加できそうだ、と長谷部に嬉しそうに話した。
     もちろん審神者一人で外出する許可は下りないので、長谷部が護衛として同行することになる。道すがら、審神者は饒舌に昔話をした。学生の頃は内気であまり友人がいなかったこと、大人しい自分に声をかけてくれたクラスメイトが数人いて、なんとなく共に行動するようになったこと。卒業する時に連絡先を交換したものの、忙しさもありお互いにあまり連絡はしていなかったこと。それでも年に一度は同窓会や、軽く食事でもしないかという誘いがあること。世話になっている上司を紹介したいと何度か打診され、気恥ずかしさはあったものの、紹介したいと思ってもらえることは嬉しかったこと。今回やっと予定が合い、旧友とその上司に会えること。
    1820

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    共寝した次の日の寒い朝のおじさま審神者と大倶利伽羅
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     ひゅるり、首元に吹き込んだ冷気にぶるりと肩が震えた。腕を伸ばすと隣にあるはずの高すぎない体温が近くにない。一気に覚醒し布団を跳ね上げると、主がすでに起き上がって障子を開けていた。
    「あぁ、起こしてしまったかな」
    「……寒い」
    「冬の景趣にしてみたのですよ」
     寝間着代わりの袖に手を隠しながら、庭を眺め始めた主の背に羽織をかける。ありがとうと言うその隣に並ぶといつの間にやら椿が庭を賑わせ、それに雪が積もっていた。
     ひやりとする空気になんとなしに息を吐くと白くなって消えていく。寒さが目に見えるようで、背中が丸くなる。
    「なぜ冬の景趣にしたんだ」
    「せっかく皆が頑張ってくれた成果ですし、やはり季節は大事にしないとと思いまして」
     でもやっぱりさむいですね、と笑いながらも腕を組んだままなのが気にくわない。遠征や内番の成果を尊重するのもいいが、それよりも気にかけるべきところはあるだろうに。
    「寒いなら変えればいいだろう」
    「寒椿、お気に召しませんでしたか?」
     なにもわかっていない主が首をかしげる。鼻も赤くなり始めているくせに自発的に変える気はないようだ。
     ひとつ大きく息 1374

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    長雨続きだった本丸に晴れ間がのぞいた。気分転換に散歩でもしてきたらどうだろうと近侍の蜂須賀に言われて久しぶりに外に出る、と言っても本丸の庭だ。
    朝方まで降っていた雨で濡れた玉砂利の小道を歩く。庭のあちらこちらに青紫色や赤色、たまに白色の紫陽花が鞠のように咲き誇っている。
    じゃりじゃりと音を鳴らしながら右へ左へと視線を揺らして気の向くまま歩いて行く。広大な敷地の本丸の庭はすべて散策するのはきっと半日ぐらいはかかるのだろう。それが端末のタップひとつでこうも見事に変わるのだから科学の進歩は目覚ましいものだ。
    「それにしても見事に咲いてるな。お、カタツムリ」
    大きく咲いた青紫の紫陽花のすぐ隣の葉にのったりと落ち着いている久しく見なかった姿に、梅雨を実感する。角を出しながらゆったり進む蝸牛を観察していると、その葉の先端が弾かれたように跳ねた。
    「……うわ、降ってきた」
    首の裏にもぽつんと落ちてきて反射的に空を仰げば、薄曇りでとどまっていたのが一段色を濃くしていた。ここから本丸に戻ろうにもかなり奥まで来てしまった。たどり着くまでに本格的に降り出してきそうな勢いで頭に落ちる雫の勢いは増 3034

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    徹夜してたら大倶利伽羅が部屋にきた話
    眠気覚ましの生姜葛湯


     徹夜続きでそろそろ眠気覚ましにコーヒーでもいれるかと伸びをしたのと開くはずのない障子が空いたのは同時だった。
    「まだ起きていたのか」
     こんな夜更けに現れたのは呆れたような、怒ったような顔の大倶利伽羅だった。
    「あー、はは……なんで起きてるってわかったんだ」
    「灯りが付いていれば誰だってわかる」
     我が物顔ですたすた入ってきた暗がりに紛れがちな手に湯呑みが乗った盆がある。
    「終わったのか」
    「いやまだ。飲み物でも淹れようかなって」
    「またこーひー、とか言うやつか」
     どうにも刀剣男士には馴染みがなくて受け入れられていないのか、飲もうとすると止められることが多い。
     それもこれも仕事が忙しい時や徹夜をするときに飲むのが多くなるからなのだが審神者は気づかない。
    「あれは胃が荒れるんだろ、これにしておけ」
     湯呑みを審神者の前に置いた。ほわほわと立ち上る湯気に混じってほのかな甘味とじんとする香りがする。
    「これなんだ?」
    「生姜の葛湯だ」
     これまた身体が温まりそうだ、と一口飲むとびりりとした辛味が舌をさした。
    「うお、辛い」
    「眠気覚ましだからな」
     しれっと言 764

    いなばリチウム

    DONE情けない攻めはかわいいね お題ガチャより
    https://odaibako.net/gacha/1462?share=tw
    >長谷部に告白している最中、好きすぎて感情が溢れて泣き出す審神者
    情けない攻めの審神者×長谷部シリーズ① 長谷部のことが、ずっと好きだった。顕現した瞬間に綺麗で頼りになりそうな人が来てくれて良かった、好き、って思ったし、出陣すれば、時には無茶することもあったけどいつだって部隊長として他のみんなを引っ張ってくれたし、戦う姿は凛々しくてかっこよくて好き、って思ったし、近侍になって細かな事務作業やサポートを丁寧にしてくれる上にいつも俺のことを気遣ってくれて優しい、好き、って思ったし、とにかく好きじゃない瞬間がなかった。最初は、単純に臣下への好意だと思っていたけれど、そうじゃないよこしまな気持ちが溢れてくるのを止められなくて、枕や下着を濡らすことも一度や二度じゃなくて、そんな自分が嫌で嫌で仕方なかった。俺は主で、長谷部は臣下なのに、いわば上司が部下によこしまな気持ちを抱いているなんて、それも抑えられている内はいいけれど、いつか勢い余って長谷部を押し倒してしまいそうでこわかった。こわいのは、そんな自分もだけど、超絶仕事が出来て優秀で気遣いの天才の長谷部のことだから、主の俺に対しても気遣って拒絶しないかもしれないことだ。そんなの、長谷部が可哀想だし、俺は世界一最低の主だ。だから、せめて勢い余らない内に長谷部に心の内を明かして、落ち着いて話が出来るうちに長谷部を遠ざけるしかないと思ったのだ。理由を言わずにそうすることも出来たけど、長いこと近侍を務めている彼を急に遠ざけたりすれば彼自身が自分の中に非を探して気落ちしてしまうと思った。長谷部は全然悪くないのだから、理由を言わないのはあまりにも自分勝手だ。嫌われてもいい。気持ち悪がられてもいい。俺の耳に入らない範囲なら、「上司に性的な目で見られてるらしくてまじさいあくきもい」みたいな陰口叩いててもいい。一方的な好意の吐露って時点で絶対きもいよなとは思うけど、俺が過ちを犯す前に手を打つしかない。
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