treasure最近、森本の様子に違和感を覚えていた。というのも、ここ数日にかけて、やたらと物をプレゼントをされることが多い。それも必ず自分が欲しいものだと口にしたものばかりで、様子がおかしいことは明白だった。
普段ならそこまで気にしなかったが、明日は特別な日が控えてる。
できればそれまでに解決したかった。
決して森本からの好意が嬉しくないわけではないが、何かあったのか心配になり、俺は夕食後にソファで本を読んでいた森本に声を掛けた。
「最近、何かあったのか」
「何か、とは?」
「どう見たって、様子が違うから」
「…瞭には隠し事はできないな」
観念したのか、少し考えた後答えを教えてくれた。
「どうしたら、瞭を大切にできるのかと思ったんだ」
「―――!」
唐突な話題についていけず、むしろ直球にぶつけられた森本からの愛情に戸惑ってしまう。
「考えれば考えるほど難しいものだ」
きっと森本自身でも沢山考え、彼なりに行動をした結果だったのだろう。切なそうにそう呟いて強く握った森本の拳に自分の手を重ね、相手の身体に近づいて寄り掛かった。
「瞭?」
「大切にされていない、なんて思ってないよ」
「だが…」
「森本は俺のことをいつも気をかけてくれるし、甘やかしすぎなところもあるくらいだろ」
「それは俺が好きでやっていることだ。だから大切にしているとは…―――んっ」
そう言って首を振る森本の胸倉を掴んで、強引に口を重ねて言葉を遮った。
「なにを…――」
驚いた森本が突然キスをした赤井の顔を見ると、何故か行動を起こした瞭本人が頬を赤らめて照れていた。自分からした行為のはずなのに、その表情だけで恥ずかしいと訴えている。そんな反応に思わず言葉を見失っていると、その間に赤井が言葉を続けた。
「俺は、森本といるだけで十分に幸せにしてもらってるよ。だから、無理して何かしようとしなくていいんだ」
「…そうか」
爽やかに笑った森本は、今度はお返しとでもいうように俺にキスをする。そしてそれと同時に、日付が変わった時計の音が室内に響く。
「もうそんな時間か」
「あ、そうだ」
「?何かあったか」
何かを思い出したのかと首を傾げる恋人に、俺は誰よりも先に、一番近くで伝えたかった言葉を贈った。
「…誕生日おめでとう、森本」