やがて終わるその時まで「ぼくが死ぬ時はさ、一緒に死んでよミスタ」
何気ない平日の夜、シュウがそんなことを言い出した。何かあったのだろうか、当たり前のことを言われておかしくなってしまい、おれはひとつ笑いを零す。
「はは、いいよ。 シュウがいない人生とか考えらんないし。 でもさ、一緒に死ねるように知らないところで死ぬのはやめてよね、おれだけ置いてかれるとか最低」
「んはは、じゃあミスタの傍にずっと式神置いとくよ。 ぼくが死んだらそれも燃えるから」
「ダメ、目の前で死んでくれないと嫌だ。 タイミングズレちゃうじゃん」
シュウの提案に顔を顰める。一緒に死んで、と言ったくせに自分が死んだら死んでに変えるのは卑怯だろう。おれはシュウと一緒に死にたいのに。
「確かにね、じゃあ仕事についてきてくれる?」
シュウは綺麗な紫色の瞳で覗き込む。
「おれいても足でまといでしょ。 だから絶対仕事で死なないで。 瀕死でいいから帰ってきて。その後一緒に死の」
おれの我儘な願いを聞いて、シュウは大きく笑いをあげる。そんな笑うこと?想定できることしか言ってないじゃん。
「じゃあさ、呪いをかけようか」
「呪い?」
シュウは手馴れた仕草で式神を取り出す。爪で何かを書いたと思えば、式神はボロボロと崩れ去っていった。
「ぼくが死んだ時、ミスタも一緒に死ぬ呪い。 転送術もかけてさ、せっかくなら綺麗な景色で死のうよ」
人気のない海とか、森の奥の教会とかどう?とまたシュウは式神を取り出す。恐らく転送術用だろう。
「ははっ、最高! そんなこと出来んの?」
「どちらかというとこれはヴォックスの方が得意だけどね。 絶対やってくれないからぼくがやる」
「ふは、ありがとう」
ここでシュウが、自分の手で最後を決めてくれたのが嬉しい。おれ達の最後に、他者の力なんていらない。いや、あって欲しくない。だって、始まりも終わりもシュウとふたりきりがいいから。
「ね、どこで死ぬ?」