「もう出てくから」 出ていく。そう言った途端シュウの目の色が変わった。ミスタは直感でまずいと思い謝ろうとしたが、既に遅くシュウに腕を掴まれていた。
「痛ッ…!」
そのいつものシュウからは想像もつかない力強さに目を顰める。しかし、そんなミスタを見てもシュウの態度は変わらない。ぐいと手を引っ張られ、どこに行くかはわからない。ミスタはだらだらと冷や汗を流しながら、シュウに声をかける。ごめん、嘘だから。出ていかないよ、と。シュウはその言葉を聞いても態度を変えることはなく、ずんずんと廊下を進んで行った。
乱雑に投げられた先は、二人のベッドの上だった。
「シュウッ、話聞いて」
お願いだから、という前に口を塞がれる。乱雑に絡みつく舌に脳が溶かされ、体の力が抜けていく。絡めて、吸われて、離れたかと思ったらまた噛みつかれ、ミスタは心の中で舌打ちを打つ。話を聞いて貰えない苛立ちと、それでも快楽に呑まれていく自分のチョロさに腹を立てていた。いつもならこんな早急じゃないのに。シュウの腕を掴み、やめて欲しいと懇願する。届くかどうかは別としてだ。
「ミスタ」
ようやく離れたシュウが口を開く。その声はいつもの優しさなど感じられない、まるで氷柱のような冷たい声だった。
「悪いけど今回のはボクの地雷だから。もう言わないでね」
「わ、わかった」
こくりと頷くがシュウはミスタの腕をシーツに縫いつける。片手で腕をまとめあげられてしまい、あまりの力にミスタは抵抗ができなかった。否、もがいてもびくともしなかったと言った方が正しいか。
「シュウ、何して」
「ちょっとお灸をそえようかなって」
後悔してね、とおでこにキスを落とされた。青ざめるミスタとは対照的に、シュウの顔には仄暗い笑顔が浮かんでいたとかいないとか。