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    tia_10l0

    腐ってるなめこ

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    tia_10l0

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    こちら椎那わたるさん主催の魏無羨女体化企画の作品になります。

    「魏無羨が月餅を食べたら、翌日、女性になっていた。手紙を頼りに藍忘機を連れて、犯人のもとへ赴くが、解呪方法は知らないと言われた。静室へと帰還した忘羨は、解呪天天を始めることとなった……」

    #忘羨
    WangXian

    「魏無羨、女体事件」 初夏。
    じんわりと汗ばむのを感じながら魏無羨は、雲深不知処の麓周辺をぶらついていた。藍忘機が仕事だった為、暇潰しをしていたのだ。荷車がやっと通れそうな道をすたすたと歩いていると、前から人がやってきた。
    その人は鼠色の外套を纏い、頬がこけているのが見え、痩せぼそっているような印象を受けた。魏無羨が危うい気配を感じながらも、その人に道を譲ろうとした時だ。
    「あっ、すみません……」
    「おっと……」
    なんと外套を着た者は、魏無羨の前を通った瞬間、身体がふらつき彼にぶつかってしまったのだ。魏無羨はすぐに反応し、身体を支えてやった。
    「怪我はないか? 行き先は? 案内するよ」
    「親切にありがとうございます。大丈夫です」
    その者は声色が低く、男だということが分かった。男は魏無羨の顔をじっと見る。まるで、品定めでもしているかのような目だった。
    (なんだ? 俺の顔が良すぎて見てるのか?)
    魏無羨が思っていると、男は身体を起こし、改めて礼を述べた。
    「貴方のおかげで土を噛まずに済みました」
    「土を噛む?」
    「ほら、転んだら口に砂が入る時あるでしょう? 私は、よくやってしまうんです」
    「あんたも大変だなあ」
    「ですから、お礼にこれを……」
    鼠色の男は、魏無羨の手のひらに月餅を置くと、返事を待たずに立ち去ってしまった。
    「行っちゃったよ。世の中変な人もいるもんだ! って、俺が言うことでもないか」
    丁度小腹が空いていたこともあり、魏無羨は月餅を食べ始める。月餅は、世辞でも美味いとは言えない味だった。例えるなら、凄まじい執念をそのまま体内に取り込んだような味だ。
    「まっず……」
    魏無羨は一口だけ食べると、不味い月餅をそこら辺の祠っぽい所へ供え、雲深不知処へ帰還することにした。

    魏無羨は静室の扉を勢いよく開け放つ。
    「ただいまー!」
    「おかえり」
    仕事を終えた藍忘機は、魏無羨の姿を認識すると温かな笑みを浮かべ、彼の下へ歩み寄る。直後に、藍忘機は真剣な面持ちで言った。
    「魏嬰、冷泉に浸かってきなさい」
    「え?」
    すると藍忘機は、手を伸ばす。そして、人差し指と中指で魏無羨の耳朶を揉み、自らの鼻を魏無羨の首筋に擦り付けながら囁いた。
    「君から甘い匂いがする……」
    「んっ……、なんだ藍湛、ヤりたくなっちゃったか?」
    魏無羨は藍忘機の白い抹額を指に絡めながら問う。
    「…………うん、でも入ってきなさい」
    「なら、一緒に浸かろうぜ?」
    藍忘機は間を置いてから無言でこくりと頷いた。
    夜中の冷泉は人影がなく、まさに貸し切り状態だった。魏無羨と藍忘機は、一枚の白い浴衣を身に纏っている。水に浸けたら透けてしまいそうな程、軽い素材でできていた。
    座学の頃に浸かったのを思い出した魏無羨は、罰を嫌がる子どものように藍忘機へ尋ねた。
    「ねえ、藍兄ちゃん。本当に入らないとだめ?」
    「うん」
    「なんで?」
    「君の為だ。君から違う気配がする」
    「あ~……そういえば今日、それはそれは幸薄そうな男に抱き着かれたなあ?」
    正確に言えば、ふらついた身体を支えたのだが、魏無羨は敢えて脚色して言った。そして案の定、藍忘機は表情を僅かに曇らせた。
    「魏嬰」
    「おお?」
    魏無羨の胸は期待で膨らんだ。更に畳み掛ける。
    「あ~あ、俺のこと見てたし、惚れちゃったのかもな~。これから恋文が来たりして!」
    「冗談はやめなさい」
    「じゃあ、どうすればいいか分かるな? このままじゃ俺は、あいつのことしか話さなくなるぞ? 俺の口は勝手に動いちゃうから禁言を……」
    魏無羨が言い終える前に藍忘機は彼の唇を塞ぎ、そのまま冷泉へ放り投げた。尻が岩盤に当たり、魏無羨は「いった!!」と声を上げた。藍忘機は無言のまま浸かり、魏無羨へ告げた。
    「罰を受けろ」
    魏無羨は悦に入り、藍忘機の首に腕を回した。
    「藍の二の若様……、俺を犯してみろよ」
    そして彼は、一時〔およそ二時間〕ほど罰を受けた。

    翌日。
    「うぅ……ん?」
    卯の刻が訪れるより前に魏無羨は身を起こす。冷泉以降の記憶がない。ふと、違和感に気づく。胸部にゆったりとした感触があるのだ。両手を胸に寄せ、揉んでみれば柔らかい感触がした。嫌な予感がする。
    「は……?」
    次に魏無羨は、布越しに股間を手のひらで包む。やはり、いつもと違う。
    「はあ……?」
    そして、視界の隅にあった銅鏡に映る黒髪の誰かに気づき、鏡の方を向いてみれば次の瞬間、彼は絶叫していた。
    「はあぁぁぁあ!?」
    魏無羨は女性になっていたのだ!
    藍忘機は叫び声を聞き、すぐに目を開けた。
    「魏嬰……!?」
    「藍湛! 藍湛藍湛藍湛藍湛藍湛!! どうしよう、すごいことになってるぞ!?」
    魏無羨は起きたばかりの藍忘機の手を掴み、胸を触らせる。
    すると、藍忘機の顔色は赤くなった後、今にでも死にそうなほど白くなった。流れるような藍忘機の表情の変化に、魏無羨は吹き出した。突然のことに藍忘機の身体は板のように固まり、魏無羨の胸が柔らかいこと以外分からず、頭は混乱し、戸惑っていた。藍忘機は必死に言葉を紡ぐ。
    「手を、離して……」
    「俺、女になってるぞ!?」
    「分かったから……、手を……」
    「ああ、そうだった」
    魏無羨はやっと手を離し、藍忘機の上から退いた。そして改めて、銅鏡で自身の姿を確認した。
    「すげえな……ほんとに女性だ……。お、やっぱりこっちもか」
    魏無羨は下穿きを下ろし、普通なら一物があるであろう部位を見る。そこには、棒状のものではなく二つに割れた柔いナニかがあった。
    「春画で見たのとそっくりだ……」
    魏無羨は立ったまま暫く呆然とする。藍忘機は頭を抱えながら、できる限り魏無羨の方を見て言った。
    「魏嬰、せめて何か穿いていて」
    「んあ……? 忘れてた、穿かせて?」
    「やめなさい……」
    藍忘機は自分を律するので精一杯だった為、彼のお願いをやんわりと断った。魏無羨は息を吐いてから、自分で穿いた。
    「分かったよ。ほら、穿いたぞ」
    「うん」
    藍忘機は、やっと魏無羨をまともに見ることができた。女体の彼は細く、胸は大きくも小さくもない。肩は小さく、少し大きな瞳が元々整っている顔に映えていた。藍忘機は身体を冷やさぬようにと魏無羨に羽織を掛け、問い質す。
    「昨日、何か変わったことは?」
    「ん~、そうだなあ……」
    そして、魏無羨は人助けのお詫びに月餅を貰ったこと、その月餅を一口だけ齧ったものの口に合わず、適当な所へ処理したことを話した。
    「間違いなく、変なもの食べたな」
    「うん……、蔵書閣で調べてみよう」
    「だな」
    しかし、収穫はなかった。魏無羨は身体が女であっても自分は自分なのだと考え、普段通り過ごすことにした。藍忘機も魏無羨が笑顔ならそれで良いと思い、元に戻す手がかりもない為、彼を見守ることにした。

    そして、魏無羨が女体を得てから三日が経った。彼は静室で過ごしていた。なぜなら女人の魏無羨は、普段通りの装束で門弟たちをからかっていたからだ。緩く開いた胸元からは小さな谷間が覗き、女性に対しての免疫が無い童子〔童貞のこと〕は彼のことが気になり、もはや修練どころでは無かった。
    その結果、藍忘機によって静室へ隠され、魏無羨は藍忘機と共に夜狩の添削や書類仕事をすることとなった。そんな中、切羽詰まった様子で静室の戸を叩く者がいた。
    「含光君! 魏先輩!! いますか!? 今、よろしいでしょうか!!」
    「おー! いいぞー!!」
    それは藍思追の声だった。魏無羨は藍忘機の膝の上から返事をする。藍思追は部屋に入るなり、ぴたりとくっつく二人を見て赤面したが、ぶんぶんと顔を横に振ると、藍忘機へ拱手をし、一通の封書を取り出した。
    魏無羨は藍思追から手紙を受け取り、「どれどれ~」と呟きながら読んでみる。
    「これは……!!」
    内容はこうだ。

    “女体の谷へ行き、琴を弾け”
    “但し、一週間以内に来なければ。魂ごと作り変え、汝を完全なる女人にした後、子を産んでもらう”

    魏無羨は言った。
    「女体の谷って何? 聞いたことないんだけど」
    「うん」
    「子を産んでもらうって、誰の? まさかこの手紙を差し向けたやつの!?」
    「…………ッ!!」
    魏無羨の発言を聞いた藍忘機は、紙を握る手に力を込める。身体の端々から藍色の霊気が立ち込め、髪がゆらゆらと揺れていた。魏無羨はそんな藍忘機の肩に手を置き、宥めた。
    「藍湛、落ち着け。そんなに強く握ったら紙がくしゃくしゃになるだろ?」
    「……うん…………」
    藍忘機は深呼吸を繰り返し、落ち着きを取り戻した。そして、二人は手紙へ向き直る。
    「作戦会議だ」
    「うん、絶対に君を戻す」
    「ああ!」
    藍忘機は藍思追へしばらく留守にする旨を伝え、魏無羨と共に静室を後にした。勿論、魏無羨の愛馬であるりんごちゃんも一緒だ。

    山を下りながら意見を交わしあった結果、彼らは聶懐桑のもとを訪ねてみることにした。「一問三不知」で名の通る彼は書を嗜み、とんちきなものを知っているかと思ったからだ。
    不浄世の門前で待っていると、いそいそと聶懐桑は現れた。
    「聶宗主、お久しぶりです」
    魏無羨が拱手を交えて挨拶をすると、聶懐桑は嫌悪感を露にした。
    「やめてくださいよ……。魏兄に畏まられると違和感しかない……」
    聶懐桑は最後に「今日は休日ですし……」と呟いた。休みの日に仕事を持ち込みたくないということだろう。魏無羨は座学時代と同じように振る舞うことにした。
    「そうだ、女体の谷って聞いたことあるか?」
    「女体の谷? いや、私は知りませんね……」
    「そうか、ここに美しい扇子があるんだが」
    「あ、いや、聞いたことあるかもしれないです」
    聶懐桑は険しい山々を指差し、扇で口元を隠しながら言う。
    「あそこの山が確か……」
    「谷じゃなくないか?」
    「山ですね」
    「そっか……なるほどね」
    噂や言い伝えは捻れるものだ、山も谷も変わらないだろうと魏無羨は納得し、「ありがとな」と告げてから、扇子を手渡した。聶懐桑は懐にしまうと忘羨を見送り、緊張から解き放たれ安堵する。そして、彼は貰った扇子を開き、言った。
    「あ、これ持ってるやつですね」
    聶懐桑は保存用として収蔵した。

    一方、魏無羨一行はりんごちゃんに跨がり、すたこらさっさと山を駆けていく。
    凸凹した道を走り、鬱蒼とした森を抜けるとそこには小さな洞窟があった。奥の闇は濃く、入る前から洞窟がかなり深いことが分かった。入り口に立っていると冷たく重い風が二人を包み、魏無羨は招かれていると肌で感じた。
    「行くぞ」
    「ああ」
    そして、一歩踏み込んだ瞬間、洞窟中に声が響いた。
    「よくぞ来たなあ!! 予定よりも早い到着だったが、まあいい。早く来い! その可愛らしい顔を見せてくれ!!」
    (うわ、気持ち悪っ!)
    魏無羨は藍忘機の腕に絡み、問いかけた。
    「なあ、なんであいつあんなノってるわけ? 無駄に声でかいし、なんかムカつくやつだなあ」
    「うん、不愉快だ」
    魏無羨と藍忘機は招きに応じ、急いで洞窟を突き進む。
    外の光が完全に見えなくなった辺りで開けた場所に出た。
    「おーい! 来てやったぞ~! さっさと元に戻せ~!」
    魏無羨が叫んでみるが応答は無かった。藍忘機は手紙の内容を思い出し、背中に抱えていた「忘機琴」を取り出すと、岩盤に腰を掛け、弦を適当に爪弾いてみせた。すると、笑い声が返ってきた。
    「そうだ、もっと弾け!」
    「いいや、その前に姿を見せろ」
    魏無羨は虚空に放つ。直後に、舌打ちが聞こえ、目の前の空気が歪み始めた。現れたのは……。
    「お前はあの時の!」
    鼠色の外套を着ていた貧相な男だった。霊体なのか所々が欠け、地に足はついていなかった。
    「そうだよ、あん時の俺だよ。あの日は、調子が良かったから化けて出てきたが……」
    「まっさか、あんたみたいなイラつくくらいの別嬪さんに会うとは思わなかったよ。生前、俺の女房を取ったやつにそっくりで憎たらしい……!!」
    鼠色の男は、魏無羨を指で差しながらケタケタと不気味に笑う。
    (知らね~!! 逆恨みもいいとこだ!! 世の中に似ているやつは三人いると言うが、有り得ないだろ!?)
    「何で、俺、あいつの仇に似てるんだろうな」
    「どうでもいい。早く彼を元に戻せ」
    いつの間にか藍忘機は魏無羨の隣に立ち、鼠色の男へ普段よりも粗暴な口を利いた。彼は、ひどくご立腹だった。魏無羨も腹立たしく思ってはいたが、彼の怒りは当人よりも上回っていたのだ。しかし、魏無羨は惜しいと思った。洞窟がもう少し明るければ、藍忘機の怒った顔を拝めるのにと考えていたからだ。
    自身の身体が女体へ変わっても尚、不思議と安心できるのはやはり、愛すべき者のおかげなのだと魏無羨は改めて思う。魏無羨は胸に手を添え、息を吐いた。
    「元に戻すぅ~? ……まさか、お前、あん時の菓子を食べたのか?」
    「ああ、一口だけな!」
    「あーはっはっはっは!! お前、知らない人から物を受け取ってはいけないって親に習わなかったのかあ?」
    「食べ物に罪はない」
    藍忘機は淡々と言った。
    「食べ物……、食べ物ねぇ? あれは俺が、ちょっと弄った『とても食べられたものではない月餅』だぞ? そんなのを食べ物と言うのかねえ?」
    「こらー! 食べ物を粗末にするんじゃない! 一体、何をしたんだ!?」
    魏無羨は叱咤した。鼠色の男は、ケラケラ笑いながら答えた。
    「あれを食べると時間の経過と共に女になるんだよ! 俺はな、くそみてえな別嬪野郎に女房を取られた瞬間、あの男を恨んだ。もう、死ぬ直前まで恨み続けた……! だから、俺は考えたんだ……」
    「腹が立つくらいの美人に会ったら、そいつを女にしてやろうってなあ!! 子を産ませるのは単なるお遊びなんだ!」
    「人生をむちゃくちゃにしてやりたかったんだよ!!」
    鼠色の男は全て吐き出すと、高らかに笑い続けた。そして、魏無羨と藍忘機は同時に思う。この男は「クズ野郎」だと。もはや、二人は怒りを通り越して呆れていた。
    魏無羨は藍忘機に耳打ちする。魏無羨が話し始めた途端、藍忘機の身体はぴくりと揺れた。
    「どうする? 殺るというか……」
    「清心音を試してみよう」
    「だな」
    作戦会議を終えると魏無羨は、藍忘機の頬へ口づけを贈った。藍忘機は照れ隠しの咳払いをした後、琴を弾き始めた。笑い声を上げていた鼠色の男は、次第に表情を変え、藍忘機の方を向いた。
    「なんだこれ……」
    すると、鼠色の男は涙を流した。
    (効いた……!)
    魏無羨は内心驚くが、顔には出さず藍忘機の勇姿を見届けていた。珠のように美しく、雅正の含光君がそこにはあった。画家がいるならば、人に止められても筆を進めてしまうくらいその男は美しかったのだ。魏無羨は思った。
    (あの時、クズ野郎に会っていたのが藍湛だったらどうなってたんだ?)
    恐らく、藍忘機は月餅を断るし、今のような事態にはならなかったと思うが、魏無羨の心はざわついた。藍忘機の白装束に自分以外の手が触れることを想像したら、苛立ってきたのだ。たとえ、不可抗力で触れてしまったとしても許せないと思ってしまったのだ。
    そう思うと、「清心音」を弾かせる手を止めたくなっていた。
    (嫌だな)
    魏無羨は腕を組み、とんとんと自分の肘を指先で叩いていた。藍忘機は横目でチラリと見ると、内心で驚きはしたものの、よく見なければ気が付かないほどの笑みを自然と浮かべた。そして、音が止んだ。
    藍忘機は指の腹で弦を押さえ、息を吐いた。
    鼠色の男は、鼻水を啜りながら謝り始める。
    「ごめん……、ごめんなあ……」
    「何がだ」
    「ぐすっ……、あんたたちに言っても意味はないと思うが、俺は女房を取られたんじゃねえ……愛想を尽かされちまったんだ」
    (はは~ん、これ、あれだろ。病気の奥さんを放って、遊び歩いてたとかだろ)
    魏無羨は思った。そして、男は全力で想いを口にした。
    「俺は! 後天性の女体化が大好きだったんだ!!」
    「ああ!?」
    魏無羨は驚きのあまり声を上げ、藍忘機に至っては瞳を閉じ、悟りを開いていた。
    「毎日毎日、顔のいい男が女になったら美人なのかどうかを考えて、それを女房に話してたんだ。したら、ある日、付き合いきれないと、俺を否定してきやがったんだ! 俺は料理も洗濯も狩りも、仕事も全部やってきたんだ! なのに、なんであいつは出ていっちまったんだよお……」
    鼠色の男がみっともなく号泣しているのを魏無羨は、冷めた目で見つめていた。藍忘機は悟りを開いている。どれだけ相手に尽くそうと一つでも嫌なところがあれば、愛は冷めてしまうものだ。愚かな男は死んでも尚、それを一つも理解していなかった。
    魏無羨は未だ閉口したままの夫へ話しかけた。
    「なあ、藍湛。どうする?」
    「元に戻す方法を聞こう」
    「そうだった。忘れてた」
    魏無羨は陳情を一振りし、鼠色の男の気を引いた。
    「聞きたいことがあるんだが」
    「なんだよ……」
    男は鼻水を啜った。魏無羨は簡潔に問う。
    「俺の身体を戻すにはどうしたらいいか、分かるか?」
    「知らねえよ……そんなもん……」
    「は?」
    魏無羨はもう一度問う。
    「どうしたらいい?」
    「だから、知らねえって!! こういうのはお決まりがあんだろ!? 見たところあんたはそれを知ってそうだし、やってみればいいんじゃねえか?」
    「くそったれ……」
    魏無羨は半ば失望した。呪いや術といった基本的な解呪方法は、術者に解いてもらうか、術者を殺すかだ。魏無羨は前者に頼ったものの、鼠色の男は術を掛けた本人にも関わらず、解呪方法を知らないときた。
    魏無羨は考える。
    (冷泉に浸かるか? それとも蔵書閣でまた調べるか? いやでも、それだと時間もかかるし……俺、このままだと本当に……)
    突然、肩に優しく触れる者がいた。温かく思いやりに溢れた大きな手だった。魏無羨は隣を見るとそこには藍忘機がいた。
    「魏嬰」
    藍忘機の瞳は、魏無羨を映し、彼は安堵した。魏無羨は独りではないのだ。藍忘機は静かにだが、はっきりと告げた。
    「私がいる」
    「藍湛……」
    魏無羨は照れ臭そうに「うん」と返事をし、鼠色の男へ向かって言った。
    「じゃ、帰るわ」
    「おう!」
    魏無羨は踵を返し、思い出したように男へ問い質した。
    「因みに聞くが、あんたはこれからどうするんだ? また誰かに悪さをするのか?」
    「いや……、もう俺は永くねえみたいだ。それに、いい演奏も聴けたしな、俺はあっちに帰るわ。ご先祖さまに怒られちまうかもしれねえけど」
    あっちとは、つまり、黄泉のことだ。よく見ると鼠色の男は、先ほどよりも実体が朧気になり、霊力が弱まっていた。この男はもうじき成仏するのだと、何となくだが察知した。藍忘機は二人の会話を見守っている。
    「そうか、達者でな」
    「迷惑かけてすまねえな……」
    魏無羨は手の変わりに陳情を振ると、藍忘機と共に洞窟を後にした。そして、避塵に御剣し、あっという間に雲深不知処静室前へ帰還した。

    静室の扉を閉めて間もなく、静寂が訪れた。魏無羨は不思議と悪い気分ではなかった。藍忘機の方は愛用の琴を置くと、冷たい麦茶を淹れ始めた。これは、一息吐こうという魏無羨への提案だった。魏無羨は頷き、藍忘機の向かい側へ座ると、麦茶を流し込んだ。
    「ふぅ……、りんごちゃん置いてっちゃったな……」
    「大丈夫、君の愛馬は帰ってくる」
    喉に流れる冷たさと、胸に灯る温もりに魏無羨は高揚した。藍忘機の方をチラリと見ると、袖で口元を隠しながら茶を啜っている最中であった。彼は、魏無羨の様子を見た後に小さな杯を傾けたのだ。
    そして魏無羨は思考する。鼠色の男は「お約束」と言っていた……、この場合の「お約束」とは即ち。
    (ヤるしかない!!)
    しかし、魏無羨は思い止まった。どう誘えばいいか悩んでいたのだ。
    「ら、藍湛……」
    魏無羨が何となく名前を呼べば、その者は真っ直ぐこちらを見つめてきた。その視線に擽ったさを感じ、魏無羨は目を逸らしながら続けた。
    「俺、まだ甘い匂い……する……?」
    魏無羨は衣をずらし、首筋を見せた。気恥ずかしさで穴があったら入りたい気分だ。
    「…………うん……」
    藍忘機が魏無羨へ手を伸ばし、軽く口づける。そして、魏無羨の隣に寄ると、耳の裏へ鼻を擦り付けた。
    「ん……」
    魏無羨は藍忘機の鼻息を感じ、肩をぴくりと震わせる。夫が匂いを嗅いでいるだけで、魏無羨のナカはきゅうきゅうと疼き始めていた。
    (欲しい……)
    藍忘機は匂いを嗅ぎながら下半身に熱が集中するのを感じ、同じく魏無羨を欲していた。そして、手始めに耳を舐める。
    「ぁ……」
    「魏嬰」
    「なに……?」
    「奥へ行こう」
    魏無羨が無言で頷くと、藍忘機は彼を抱き上げ、寝室に連れて行くのだった。

    藍忘機は魏無羨を寝床に下ろすと事を始めた。
    「は……んっ」
    藍忘機は女体の魏無羨に違和感を覚えつつも、口づけながら魏無羨が着ている衣の帯を解き、彼の丸みを帯びた身体に指を滑らせた。くびれは細く、力強く抱き締めればすぐにでも折れてしまうのではないかと、藍忘機は思った。彼の白く優しい大きな手は、無意識に震えていた。魏無羨は気がつくと、藍忘機の手を掴み、自身の胸へ誘導した。
    「藍湛、何を遠慮してるんだ?」
    「いや……」
    藍忘機は言いにくそうに口をつぐむ。魏無羨は藍忘機の手をそのまま動かし、胸を揉ませた。
    「藍湛、分かるか? 少しずつ固くなってきてるとこがあるだろ」
    「……うん」
    魏無羨は乳房の中心のことを言っていた。
    「普段の俺も、ここを触られたらどんな反応をする? 固くならないか?」
    「…………なる」
    「そう、それから……気持ちよくなる」
    藍忘機は生唾を飲み込んだ。魏無羨は問う。
    「後は、どうすればいいか……分かるな?」
    「藍兄ちゃん……?」
    魏無羨が囁いた時、藍忘機は覚醒した。魏無羨は手を離し、藍忘機の様子を見守った。
    藍忘機は心の赴くまま魏無羨を味わっていく。腹の辺りに鬱血痕を付けると、続けて舌を這わせ、肋骨周辺まで舐め上げた。魏無羨は馬に舐められているようだと、愉快になっている。
    それを知ってか、藍忘機は右胸を持ち上げるように揉みながら、指を使って器用に魏無羨の乳首を責め立てた。
    「んあっ!? ああっ……!」
    藍忘機はコリコリとした感触を楽しみつつ、空いている左胸の突起を口に含むと、今度は吸い上げてみせた。
    「あぁ……! んっ……こら……っ!!」
    魏無羨の身体は大きく震え、嬌声を上げた。藍忘機へ同時に触るなと言いたかったが、それよりも快感の方が勝った。
    「はあ! んっ、ぁ……」
    微量な快感と一定の感覚で襲いかかる猛烈な快楽に、魏無羨はクセになりかけていた。もっとして欲しい、触って欲しい、舐めて欲しい……色々な思いが彼の心を占拠していた。その証拠に、魏無羨の秘部は普段と遜色ないほどに濡れている。
    (触って…………)
    魏無羨の腰は、無意識に揺れ始める。藍忘機は魏無羨の意を汲み取り、遂に、下半身へ手を伸ばした。
    そこにはやはり、棒状のナニかは無く、二つに割れた柔らかなものがあった。
    (魏嬰……)
    藍忘機が小さな谷を割り、真ん中にある更に小さい種子を指先で捏ねてみればすぐに返答がきた。
    「ぁ……! それ、あっ……!!」
    捏ねているうちにそこも固さを増し、乳首と同様に敏感な部分だということが指先から分かった。そして、藍忘機の指は、徐々に下りていく。
    秘部の真下にあるそこは、愛液が溢れ、すでに柔らかかった。藍忘機は魏無羨へ暗に問う。
    「魏嬰……」
    「いいよ……触っても…………ああっ!」
    魏無羨は藍忘機の頭を撫でてやると、間もなく、甘い快楽が襲いかかる。藍忘機の指が侵入すると、魏無羨は「ぁ……」と小さな声を漏らし、恥ずかしさから腕で顔を覆った。しかし藍忘機の一物の挿入が近いのと、その質量への期待から魏無羨は息を荒げ、力んでしまっていた。
    「力、抜いて……」
    「うん? うん……」
    魏無羨はゆっくり息を吐き出し、力を抜いていく。
    「いい子」
    藍忘機が魏無羨の腕に口づけると、魏無羨は腕を退かし、互いの唇を触れ合わせた。
    「んっ……んぅ……ぁん……」
    藍忘機は舌を絡ませながら、指で肉壁を暴いていく。魏無羨は腰が痺れるような感覚と藍忘機の優しさに包まれ、目の端から涙を溢す。
    (好きだ……)
    口が離れた瞬間、魏無羨は思っていたことを藍忘機へ告げた。
    「藍湛、お前の子を産みたい」
    「…………!!」
    藍忘機は頭を打たれたような衝撃に襲われた。魏無羨は続ける。
    「もしこのまま元に戻らなかったら、俺はお前の子を沢山産むよ。含光君の子種だなんて、最高じゃないか!」
    「ダメだ!」
    「何でだよ! 家計が心配か? 金持ち兄ちゃんなんだから平気だろ?」
    「違う!」
    藍忘機は自身の張りつめた一物を一瞥し、魏無羨へ告げた。
    「私の加減が……きかなくなる」
    魏無羨は笑い出した。
    「あははははは!! そうか、お前……忘れてたよ!」
    「何がだ」
    「本当は、俺より恥知らずってこと」
    魏無羨はひくひくと筋肉を動かし、肉のなかにある藍忘機の指を締め上げ、彼を挑発してみせた。すると藍忘機の瞳に確かな熱が灯り、魏無羨の期待は最高潮に達した。
    「んあっ!? いきなり引き抜くなよ……あぁ!!」
    藍忘機は魏無羨の秘部から指を引き抜くと、続けて自身の一物を半分ほど挿し入れた。突然の圧迫感に、魏無羨は息が詰まりかけた。
    (何だ、これ……っ、藍湛のがすごく……熱い!!)
    普段と違う一物の感覚に、魏無羨は戸惑いを覚える。藍忘機は、息を整える魏無羨へ口を開いた。
    「子を産みたいと言ったな」
    「うん……」
    藍忘機は残りの半分をゆっくり挿入し終えると、一言放つ。
    「今から君を、孕ませる」
    「ちょっ、待っ……!! うあっ!?」
    魏無羨の制止も聞かず、藍忘機は腰を打ちつける。魏無羨の腰をガッチリ掴み、強靭な一物で腟へと続く管を圧し拡げていく。
    「あっ、あっ、んぅ……! んあっ、ぁんっ!!」
    魏無羨は途切れ、途切れに喘ぐことしかできず、思考力はどんどん低下していった。藍忘機の一物が進んでいく感覚に背中は痺れ、口から徐々に唾液が漏れてきた。
    「らんじゃ……っ、あっ、だめ……!」
    「何がだ!!」
    魏無羨は思いの丈を叫ぶ。
    「おれ……っ、ほんとに! 孕んじゃう!!」
    「孕め!!」
    藍忘機は魏無羨以上の熱量で叫び、激しくナカを突いた。
    「ああっ!!」
    魏無羨は藍忘機の一物が脈打つのを感じ、瞳をきゅっと引き締める。藍忘機は魏無羨を安心させようと、腰を打ちつけながら、口づけた。再度、絡ませた舌は先ほどよりも熱く、甘かった。蕩けきった魏無羨の瞳は、何とも淫靡なものだった。口を離せば、舌先から銀の糸が引き、熱の籠った互いの吐息がかかった。
    「はあっ、魏嬰……」
    「んっ、いいよ……藍湛……」
    そして藍忘機は、魏無羨の腟内へ自身の精を放った。
    (孕……んだ…………?)
    魏無羨は疲労感と満足感から目を閉じ、そのまま気絶した。藍忘機は、自身の一物を魏無羨から引き抜くと、彼の額へ口づけを贈る。

    翌朝。
    魏無羨の身体は元に戻っていた。寝台から飛び起き、下半身を覗けば男の勲章もしっかり生えており、魏無羨は静室中を走り回った。
    「やったー! 戻ったぞ! 藍湛!!」
    魏無羨の様子を見た藍忘機は安堵し、薄く笑った。
    「よかった……」
    魏無羨は太陽のような笑みを藍忘機に向けて、言った。
    「藍湛! 今日はどこに行こうか?」
    「君とならどこまでも」
    無事に男体を取り戻した魏無羨は、藍忘機と共に静室を後にする。
    「どこに行こうか……。そうだ! 雲夢に行こう!」
    魏無羨が提案すると、藍忘機はひどく嫌そうな顔をした。魏無羨は藍忘機の頬を指でつつきながら、それをからかう。こうして、二人の一日が始まった。今日は何が起こるだろう?
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