【天猪】何も出来ない律の体調が良くない。
食事に関しては、もとより進まないことが多いのだが、今は見るのも辛い様子で、かろうじて同席しているような状態に見える。
足取りも、いつもより重たく、話しかけても上の空といった様子だ。(これは食事をとっていないことも関係しているのだろうが)
コンビニで好きな酒類を買ってよいと伝えても、首を振ったことを鑑みても、かなりの重症に思えた。
こうなると、私にできることは殆どない。無理に食べさせても、戻してしまうだろうし、そんなことになったら彼はさらなる罪悪感に押しつぶされるのは想像に容易い。
では、どうしたらいいか…?などと考えているうちにあっという間に夜になる。
「律、おやすみなさい」
ベッドの隣に入る、平常よりやつれた彼の綺麗な水色に透ける白髪を撫でる。
こんなに弱っている彼の為に、何もできないことに罪悪感が沸いてくる。
彼は、少し微笑んで、返事を返してくれる。別に、自分の前では無理に平気な顔をせずとも良いのに。
布団に入り、つい、彼の一回り小さくなった体を抱き込んだ。
「暑苦しければ、言って下さい。…許していただけるのであれば、今夜はこうやって眠らせてください」
そのまま、背中に手を回されたところを見ると、それほど嫌ではないようだった。
一つ、呼吸をして、もう一度「おやすみなさい」とつぶやき、彼の額に口づけをする。
彼が安らかに生きるために、自分に何ができるのだろうか。答えは出ないまま、夜は更け、また朝が来る。