シンガポール・スリング「全員、ここに全部置いてけ。行くぞ!『MANIFESTO』」
アンコールのラスト1曲。
ステージも客席も最高潮で、肌から全身から熱が湧き上がる。
各々の激しい音が合わさって、交わり、那由多の歌が乗る。
ドラムの位置からは全体が見渡せ、全員が絶好調なのが音からも空気からも感じられ、この厚みを支えられる感覚が深幸はこの上なく気持ちが良かった。
◇
「お疲れさま」
「お疲れ様です!」
「おつかれ〜」
楽屋へ入りがてらバラバラとメンバー間で挨拶を交わした。
表情には出ないものの、那由多から文句が出ないという事は、間違いなく今日は“良かった“のだ。
「ほら那由多、汗拭きなよ」
「ふん」
深幸が差し出したタオルを奪うように那由多が受け取る。
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