ランウェイで踊る パッと照明がランウェイを照らす。ここは他でもない自分のためのステージで、自分と、それから自分が身骨を注いだ作品を魅せる、そういう場所だ。
しかし、晴天の霹靂、そこに不躾な侵入者があった。ラベンダーアッシュの髪をふわふわと揺らした侵入者はランウェイの先にいた滝夜叉丸の手を取って腰を捕まえた。まるで、今からワルツでも踊るみたいだった。
「喜八郎!」
会場から焦りを含んだ怒鳴り声がして、ハッとするには薄い反応で、その侵入者は「おやまぁ」と呟いてぱっと手を離した。急なことで頭が回っておらず、体を支えられないままその真ん中でべしゃり、と転んだが、引き起こした本人はケロッとランウェイを降りてしまった。
慌てて立ち上がり、澄ましてみたが、周りも呆気にとられている。平常心、平常心と言い聞かせながら引き返し、優雅な振る舞いを心がけていても、僅かに指先と脚が震えていた。
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