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    小麦子

    @Ko_mugimugi

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    小麦子

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    ホルダーifアンソロジー「Fanfare!!」に寄稿させて頂きました小説のボツシーンになります。
    ノートレットさんのお葬式を大捏造。
    回想として使う予定だったので唐突に始まり、唐突に終わります。

    #シャディミオ

    眠れる森(ボツシーン)スペーシアンや長く宇宙で暮らしたアーシアンであっても、墓は地球にという者は多い。
    ミオリネの母、ノートレット・レンブランもその類の人物であったようだ。

    (─…勝手だな)

    シャディクは冷えた心で思った。地球を犠牲に宇宙で甘い汁を吸っておいて、最期は地球に還りたいと望むのか。それはシャディクには珍しく、純粋な憤りの感情であった。周りの人間に悟られぬよう深く息を吸い込む。故人との面識はほとんどなかった。ミオリネと共にいる姿を何度か遠目に見かけたくらいで、ノートレットの人となりについて、シャディクは何も知らないに等しかった。だからこの感情も、ベネリットグループ総裁の妻という〝記号〟への怒りに過ぎないのだ。
    白いカーネーションの花を献花台に置く。
    …勝手だ、と思う。
    けれど今は棺に横たわるこの人も、誰かにとってはかけがえの無い存在だったのだ。かつてのシャディクにとっての両親が、そうであったように。
    続く喪主の挨拶は、不在であるデリングの代わりにラジャンという男が務めた。故人を大切に思っていたひとりであろう少女は、その傍らで硬い表情で俯いていた。
    葬儀も終わり騒つく式場内で、シャディクはミオリネの姿がどこにも無いことに気が付いた。
    大人達は誰も気に留めていない。パーティーで出会った、気丈な少女の横顔を思い返す。ノートレットと一緒にいた時の年相応な笑顔も。
    気が付けばシャディクは、故人に縁のあるという広い敷地内で彼女を探し回っていた。
    どう考えても出会って間もない少女に、シャディクがそこまでする義理は無かった。だが、どうしてだか放っておけなかった。

    (一体、どこに…)

    辺りは日が落ちてすっかり暗くなっている。
    肩で息をするシャディクの目の前に、ひらりと、白い花弁が舞い落ちた。
    月明かりが、帯のように道に落ちている。その先に螺旋階段が見える。
    シャディクは何かに導かれるようにして、螺旋階段を上った。カツン、カツンと靴が硬質な音を立てる。
    上りきったその先、茨の絡んだアーチを潜ると、白い花畑が広がっていた。月光を反射し、敷き詰められた花の絨毯が仄光っている。どこか現実離れした光景に一瞬目を奪われる。
    その視線の先、見知った少女の姿が視界に入り、ざっと血の気が引く。花畑の中央。小さな身体を折り畳むようにして、ミオリネが倒れていた。地球に居た頃、銃弾の音と共に何度も見た光景がフラッシュバックする。

    「ミオリネッ!」

    自分でも驚くほど余裕の無い声で叫び、彼女の元へ駆け寄る。
    走った軌跡をなぞるように、白い花弁が舞い散った。

    「ミオリネ!ミオリネ!しっかり…」

    肩を抱き上げゆする。やがて瞼を縁取る睫毛が震えた。

    「ん…なに…。えっ…⁉︎シャディク⁉︎」

    目を覚ましたミオリネが状況を掴めず、目を白黒させる。
    彼女の身体に外傷が無いことを確認し、シャディクは知らぬ間に詰めていた息を吐く。吐いた息は意図せず震えていた。冷静になってみればわかることだ。ここはシャディクの育った紛争地とは違う。久しぶりの地球と死の匂いに、無意識の内に過敏になっていたようだ。

    「あんた、なんで…」
    「君が…」

    「君が、一人で泣いてると思って…」

    自分で自分の言った言葉に、驚く。
    それは親を亡くした彼女に、過去の自分や仲間達の境遇を重ねてしまっただけのことかもしれない。ただ、目の前の少女を案じた言葉であったことは確かだった。
    よほど予想外だったのか、シャディク以上に呆気に取られたミオリネはポカンと口を開けていた。
    暫くそうしていたミオリネは、やがてくしゃりと顔を歪めた。

    「なによ…それ」





    「この空中庭園ね、お母さんがデザインしたの」

    寝転んだミオリネが呟いた。
    まだ帰りたくないというミオリネに付き合って、シャディクも隣りに腰を下ろしていた。

    「〝眠り姫〟って言う童話の塔をモチーフにしてるんだって」
    「眠り姫?」
    「知らない?悪い妖精に呪われて、糸車の針で百年の眠りについたお姫様の話。迎えに来た王子様のキスで呪いが解けて、あとはお決まりの、二人は結ばれて末永く幸せに暮らしましたってやつ」
    「へえ…」

    寝物語に聞くような童話など、シャディクには縁遠いものだった。そんなものより詰め込むべき知識は山ほどあったからだ。

    「いつか連れてきてあげるね、って言ってたのに…」

    こんな形で、来ることになるなんてね。そう言ってミオリネは僅かに背を丸めた。

    「ミオリネにも、お姫様に憧れる気持ちがあったんだな」
    「は?」

    シャディクの言ってる意味がわからなかったのか、ミオリネは口を小さく開けていたが、庭園の中心で眠っていた自分を揶揄されたのだと気付くと、みるみるうちに顔を赤くした。

    「はあ⁉︎違うから!お母さんの事考えてたら寝ちゃっただけで、そういうんじゃないから!」
    「はは、そっか」

    上半身を起こし、こちらへ殴りかかってこんばかりの剣幕をいなしながら、シャディクは笑う。
    よかった。いつもの調子が戻ってきたみたいだ。

    「お姫様なんて冗談じゃないわ!勝手に眠らされたうえに、閉じ込められて、起きたら目の前のやつと結婚しなきゃならないなんて、最悪よ。サ・イ・ア・ク!」

    そうこうしてるうちに、こちらの思惑に気付いたらしいミオリネが憮然として、起こしていた上半身を再び花の絨毯に沈める。反動で白い花弁が宙に舞った。
    彼女に倣いシャディクも花畑に身を横たえる。甘く澄んだ香りが鼻腔をくすぐった。

    (…泣いてなかったな)

    シャディクが迎えにきてから、彼女は一度も涙を見せていない。悲しくない、わけではないだろう。花の中に蹲り、自ら時を止めるようにして眠っていた小さな身体を思い返す。そうする事でしか悲しみをやり過ごす方法を知らず、くしゃりと歪めた表情は、まるで上手く泣くことができないみたいだった。皆が羨む全てを手に入れているようで、泣き方ひとつ知らない女の子。

    (…。感情移入し過ぎだ)

    シャディクは自分の行動を冷静に分析する。利用するつもりで彼女に近付いた。なら、過剰な情を持つことは目的の妨げになる。

    「ねぇ」

    不意に呼びかけられ、内に向けていた意識を浮上させる。横を向くと思った以上に顔が近くにあって、心臓が跳ねた。
    月光に照らされて、敷いた花と同じ色をした長い髪が上質なシルクのように煌めく。白銀の虹彩がシャディクを静かに見つめていた。
    その美しさに息を呑む。頭の隅で小さく警鐘が鳴った。

    「キスでもする?」
    「……は?」

    瞠目する。一瞬遅れて顔に朱がのぼった。見惚れてしまっていたことを見透かされたようで、二の句が継げないシャディクを見て、ミオリネがニヤリと笑う。

    「嘘」

    満足そうにこちらを見つめるミオリネを見て、さっきお姫様だと揶揄った意趣返しをされたのだと気付き半眼になる。
    足を振り上げた反動でミオリネが上体を起こし、そのまま起き上がった。

    「だって王子様なんて要らないもの。助けて貰えるのを待ってるだけなんて嫌。自分の運命は自分で切り拓くの」

    ざあと吹く風に、流れた髪が一緒に舞った花弁と共に月明かりに濡れる。彼女の整った相貌も相まって絵画のような美しさだった。しかしそれより、シャディクは真っ直ぐに前を向く横顔に目を奪われる。鼓動が速くなる。
    いけない。
    冷静な声が警告する。なのに目が離せない。
    ─でも、迎えにきてくれて、嬉しかった。
    前を見据えたまま、風にさらわれそうなほど小さな声は、しかし確かにシャディクの耳に届いた。初めて彼女の心の柔いところに触れたような気がした。

    「さ、そろそろ帰らなくちゃ。小言じゃ済まなくなっちゃう」

    こちらに差し出された手のひらを見てシャディクは苦笑した。迎えに来たのはこっちなんだけどな。
    ミオリネの手を取り、庭園を後にする。
    ねぇ、私いつかまた必ず地球に来るわ。その時は─…



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    あもり

    DONEシャディミオの年少期の幻覚話です。12話前、公式が何も出さないので、幻覚が熱を持ったので書きました。
    シャディクが孤児院に拾われる前は、雪国で過ごしていた幻覚設定があります。
    シャディミオ、というかシャディク+ミオリネみたいな雰囲気ですがシャディミオです。
    幻雪「シャディク、あんた雪って見たことある?」
     薄ら寒い大人たちの挨拶の猛攻を上手く抜け出し、外の廊下を歩いていた時のことだった。久しぶりにパーティで出会ったミオリネは少しだけ背が伸びていて、背中に流れた髪の毛が歩くたびに揺れている。前を歩く彼女が視線を向けた先は、無駄に大きい窓の外は無機質な鉄の要塞、時折常夜灯が点滅するのが見えるだけだ。夢見る天然資源は何ひとつ映っていない。

    「映像だけなら」
    「そう」
     彼女がわずかに肩を落とした。意地を張る癖のある幼馴染にしては、珍しいほど分かりやすい仕草だ。
    「……何かあったの、ミオリネ」
    「うるさい」
    「俺は君の質問に答えたよ」
     質問にちゃんと答えなさいよ、と先日の喧嘩で目の前の彼女から貰った言葉をそのまま返す。ミオリネも思い出したのか、ぴたと足を止める。意地が悪いのはお互い様だ。ただ、今日は随分と踏み込みすぎてしまったらしい。
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