Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    さなか

    @o_sanaka

    成人腐(↑20)。主に石乙で文字と絵を投稿してます。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 88

    さなか

    ☆quiet follow

    時代劇俳優×若手俳優の芸能パロ石乙。
    以前投稿したものと同設定の続き。

    #石乙
    stoneB
    ##芸能パロ石乙

    芸能パロ石乙 薄暗い廃ビルの中、抉れて鉄骨が露出した壁に配管が壊れたのか水の滴る床──という、現場のセット。
     目の前には頭と肩から血を流し、荒い息をしているスーツの青年──という、演技をしている乙骨。
     その彼に向かって、自分は深刻な表情で、決められた台詞を口にする。
    『てめぇ……どうして俺のことなんか庇った?』
     乙骨に屈み込んで様子を伺えば、乙骨はハッと笑って台詞を返してきた。
    『…っ、当然、でしょう…?あんただって、俺にとっては、護るべき……市民なんだ、から……』
    『……バカヤロウ』
     その言葉を受けて、石流がクシャリと表情を歪めてそう返す。それから少し見つめ合ったところで、監督から「カット!」の声が掛かった。
     石流が張っていた気を緩めれば、乙骨も少し無理な体勢だったので、よっと身体を起こした。監督やスタッフの方を見れば、モニターで先程撮影した映像を確認しているようで、少ししてから「よし、OK!」と声が掛かった。
    「二人ともすごいよかったよ~」
    「そうですか」
     石流はそう言って立ち上がると、自分も撮った映像を見せてもらおうとモニターを覗き込んだ。するとスタッフも映像を再生してくれた。

    『てめぇ……どうして俺のことなんか庇った?』
    『…っ、当然、でしょう…?あんただって、俺にとっては、護るべき……市民なんだ、から……』
    『……バカヤロウ』

     そしてそう会話する自分と乙骨の役を見ながら、うわぁと思う。
    (ゆうのこの表情……えろすぎねぇか?こんなの、映画館のデカいスクリーンに映して大丈夫かよ)
     そんなことをついつい考えてしまう。もちろんシーンの映像としては悪くなかったので「いいんじゃないですか」と頷いた。


     その日、石流はとある刑事ドラマの劇場版の撮影に参加していた。劇場版のストーリーとしては、東京の各地で爆弾騒ぎが起こり、その規模は段々とエスカレートしていき、遂に人死にが出てしまう。主演の刑事チームも捜査に参加することになり、乙骨はそのチームに所属する一番後輩の刑事の役だった。
     石流はドラマのテレビ本編でその後輩刑事と衝突や共闘を繰り返すヤクザの役だった。映画でも「俺のシマを荒らす爆弾魔は許さねぇ!」と後輩刑事に協力する流れになったのだが、あろうことか、そのヤクザが爆弾魔に命を狙われ、後輩刑事がそれを庇って助ける──というシーンの撮影を行っていた、
     基本的に後輩刑事とヤクザが繋がっている関係は、仲間にも秘密という設定なので(主役は気付いているがことを荒立てずにサポートしてくれている)ヤクザが絡むのは後輩刑事とのみだ。
     必然的に、石流の出番はほとんど乙骨との共演のみなのだが、乙骨は他の役との撮影もあるようで、休憩時間も台本を読みながら唸っていたりする。
    (まぁでも、出番は少ない割にはオイシイ役だよな)
     石流がそんな風に思っていると、スタッフから「次のシーン入りまーす!!」と声が掛かった。
    「乙骨くん、石流くん、このシーンで相談なんだけどさ」
     立ち位置やらカメラの配置を調整しているスタッフの話を聞いていると、監督が声を掛けてきた。
    「泰斬(ヤクザ)が怪我をした永倉(後輩刑事)を抱えて連れて行くシーンなんだけど、抱えられる乙骨くんはそのままやってもらいたくて、でも抱えるのはスタントにやってもらう?」
     つまりは乙骨を抱える役を安全を考慮して慣れてる他の吹き替え俳優にやってもらうかどうかという確認だったのだが、石流はあっさり「いや、俺がやりますよ」と言った。
    「え、龍さん…!?」
    「へー、イケる?」
    「こいつめちゃくちゃ軽いし簡単ですわ」
     そう言って、乙骨の腰を抱いて自分の肩にあっさり担いで見せた。乙骨の「うわぁ!!」という悲鳴があがるが、監督は「大丈夫そうだね」と頷いた。
    「乙骨くんもそのリアクション悪くないけど、その顔だと素だから、ちゃんとテストと本番は永倉の演技をしてね」
    「う……すみません……」
     石流の位置から乙骨の顔は見えないが、他のスタッフが微笑ましそうに「かわいい~」と言っている辺り、赤面でもしているんだろう。
    (なんだかんだでこいつ、俺のことが好きなのだだ漏れだからな……)
     他のスタッフたちは、乙骨が石流のことを慕っているが故の好意だと思っているようだが、その好意をもろに受けている石流には、どうにもそれだけで済んでいないように思えた。
    「石流さん、乙骨くん、公式Twitterに投稿するオフショット用にその状態で一枚撮っていい?」
    「ええ!!??」
    「おう、いいぜ」
    「そんな、ちょっ、ま…!」
     カシャッ
    「ありがとうございました~!」
    「だから待ってって……」
     乙骨の歯切れの悪い言葉はことごとく無視されて、そんな乙骨の身体を石流はゆっくりと降ろした。
    「もう…みんな……龍さんも、ひどいですよ…」
     そう言って赤面しながらも頬を膨らませる乙骨に、石流は苦笑して頭を撫でながら「悪い悪い」と言った。当然乙骨には「全然悪いと思ってない!」と言われたけれど。

    (恐らくだが、ゆうは俺のことが好きなんだろうな、そういう意味で)
     そのことは薄々感じていたけれど、少し前に決定的なことが起こった。刑事ドラマのテレビ放送が終わった後の打ち上げで、酔っ払った乙骨に石流はキスをされたのだ。結局、乙骨はその時のことを綺麗さっぱり忘れていたので、石流からその行動を深く突っ込まなかったのだけれど、後からじわじわとその出来事は、石流の感情に影響を与えていた。
     乙骨が向けてくる好意に嫌悪なんてしてないし、むしろ本当に好きなら嬉しいとすら思うこと、そして何よりあの時のキスが忘れられなくて、またしてぇなぁと思っていること。
    (まぁでも、そんなおいそれと出来ることでもないし、その前にちゃんとあいつの気持ちを確認しねぇとな)
     そんな風に思っているうちに、劇場版の撮影が始まって、乙骨と会う機会も増えたので、そのタイミングを見計らっている状態だった。


     そんな時、石流の自宅から直接行けなくもない場所でロケがあったのだが、天候に左右されてしまい、中々撮影が終わらず深夜まで掛かってしまった。本来のスケジュールであれば、終電には間に合う時間に終了するのだが、その日は結局、解放されたのはとっくに終電が終わっている時間だった。
     スタッフが撮影が押したことを詫びつつ、必要であればタクシーを使って帰るように呼び掛けていた。乙骨もタクシーで帰るのかと思っていたのだが、口元に手を当てて、顔を顰めていた。
    「どうした?タクシーで帰らねぇのか?」
     石流が何気なく声を掛ければ、乙骨は「ええと…」と言いながら、その問いに答えてくる。
    「タクシーで帰ってもいいんですけど、この時間だと帰宅がかなり遅くなりそうで…でも明日は割と早い時間から撮影が入ってるんですよね…だから、下手したら、この近くのネカフェでも行った方がいいのかなって」
     いやそこはせめてビジネスホテルにでもしとけよと内心突っ込みつつ、石流ははたと、あることを思いついた。
    「明日の朝からの撮影って、場所はここでいいのか?」
    「あ、はい、正確には、近くの施設ですけれど」
    「それなら俺のうちに泊まって行けよ、俺の家、ここから近いからよ、今日の撮影も、家から直接バイクで来たんだ」
    「え……」
     石流の提案に乙骨が目を見開く。そして、パチパチと瞬きをしながら言ったのだ。
    「いいん、ですか…?」
    「いいも何も、俺が来いよって言ってんだぜ?いいに決まってんだろ」
     石流がさらりとそう言えば、乙骨は再度口元に手を当てて少し考えた後「なら、よろしくお願いします」と頭をさげてきた。
     お願いなんて、する必要はない。
    (俺の家なら、その辺の話を少しは出来そうだからな)
     その提案にはそんな下心も、含まれているのだから。




    ※後もう少しつづく
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤❤❤😍👏💘💘💞❤❤❤👍💗💗💗💗💗
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works