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    さなか

    @o_sanaka

    成人腐(↑20)。主に石乙で文字と絵を投稿してます。

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    さなか

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    石乙オメガバース(β×α)

    #石乙
    stoneB
    #オメガバース
    omegaverse

    石乙散文 ギシリとベッドが軋む。
     その音に動きを止めれば、自分の腕の下で喘いでいた少年も、荒い息のままこちらを見てきた。
    「…いし、ごおり、さん…?」
    「……あー、気にするな、あんまりがっつくと、ベッドが壊れちまいそうだと思っただけだ」
     石流は苦笑してそう言い、ゆっくりと腰をグラインドさせる。それに少年も眉を寄せながら、それでも気持ちよさそうな声を漏らした。
    (……アルファでも、後ろで気持ち良くなれんだな…)
     そんなことを今更ながらに思いながらも、石流は先程よりは控え目に、腰の動きを再開させた。



     石流が乙骨と、身体を交えるようになったのは、1ヶ月ほど前からだった。石流が乙骨に好きだと気持ちを伝え、乙骨も戸惑いながらその気持ちを受け入れてくれた。両想いになって、キスは何度もしたしスキンシップも増えてきた。身体の関係まで持ち込んでもいいだろうと考えたところで、石流はふと考えた。
     自分は男であり、乙骨も男だ。つまり、性行為をするとしたら、どちらかが挿入される側にならなければならないのだ。乙骨は石流と第一性が同性であったが、第二性は確かアルファだ、石流はベータなので、これはもしかしなくても、自分が抱かれる側になるのではと思っていた。
     だが、いざ、乙骨にその話をしたところ、わりとあっさり「僕が入れられる側でもいいですけど」と言った。
    「いやでも、オマエはアルファだろ?」
    「そうですけど、僕、第二性の自認が遅かったから、本当にアルファなのかなってちょっと自信がないんですよね、正直ベータの方がしっくり来るというか」
     それに、と乙骨はほんのりと頬を染めて、石流を伺うように見て言った。
    「石流さんが……僕としたいなら、石流さんの望む形で、僕はいいですよ?」
     そんな風に言われて、石流も我慢出来るはずはなく、その日のうちに石流が乙骨を抱く形で、二人は初夜を済ませたのだった。

     それから何度身体を重ねただろう。もう片手では数えられない回数になっていると思う。乙骨と夜を過ごすようになってから、乙骨はポツリポツリと、自分の第二性について語り出した。
    「多分、なんですけど、僕の運命のツガイって里香ちゃんだったんだと思うんですよね」
     里香とは、乙骨と結婚の約束をしながら交通事故で死んだ、幼馴染みのことだ。
    「でも、里香ちゃんが事故で死んだことで、僕のアルファとしての本能は狂ってしまったみたいなんです。アルファですけど、オメガのフェロモンは殆ど感じないんですよね」
     運命の相手を無くしたことで、乙骨の第二性はほとんど意味を成さないものとなっていた、だからベータの方がしっくり来るというのだ。
    (…それでも、乙骨がアルファであることは変わりない、運命の相手ではなくても、別のオメガとつがうことは出来るだろ)
     そんな相手がいつか、乙骨にも出来るかもしれない。そう考えたらイラついて、思わず乙骨を乱暴に抱いてしまったこともあった。オメガに限らず、他の相手を抱くことが出来なくなってしまえばいいとそんなことを考えて。
    (俺はなんつーか……なんだかんだで女々しいよな…)
     シツコク交わった後、ぐったりして隣に眠る乙骨を見つめながら、石流は目を細める。それから乙骨の身体をぎゅっと抱き締めた。
     自分が彼を縛ることが出来たら、どんなにいいだろうと思いながら。





     この世界には、男女の性別の他に、外見的特徴では判別できない第二性と呼ばれる性別がある。第二性はアルファ・ベータ・オメガの3つに分かれ、殆どの人間がベータであるが、先天的にリーダー気質があり成績優秀であり、身体の造りも良く体力も特に優れている一部の人間がアルファ、そしてアルファより更に該当者が少なく希少とされているのがオメガで、オメガは生殖能力が3つの性の中で一番高く、男だとしても妊娠・出産が可能である。
     オメガには3ヶ月に1度発情期になる期間があり、その間は優秀なアルファを引き寄せるために、アルファにしか感じられないフェロモンを出す。そして、オメガがアルファとツガイという関係を結ぶことで、オメガのフェロモンはツガイとなったアルファにしか感じられなくなるという。
     ツガイはアルファとオメガとの間にしか結べない特別な関係であり、アルファとオメガにはその性別が表に出てきた時から、運命の相手がいるのだという。

     そんな第二性についての知識を、石流は受肉した肉体から得ていた。石流が呪物になる前の生前では第二性なんて呼び名も、アルファ・ベータ・オメガなんていう種類も分かってなかったので、納得した部分もあった。
    (それを踏まえると、生前の俺はアルファだったのかもな)
     他者から能力が低いと虐げられている弱者から、たまに惹き付けられるような甘い匂いを感じることがあった。あれは恐らくオメガが発するフェロモンというやつだったのだろう。石流はそれに惹かれることはなかったけれど、元アルファだからこそ分かることもある。
    (乙骨がアルファなら、あいつだってあの匂いを感じたりしてるんだろ…?今は鈍感だとしても、いつまでもそうだとは限らない)
     いつかあいつにもつがうオメガが現れるかもしれない。
     いっそ自分の受肉した肉体がオメガだったら、そのツガイとやらになれたんだろうかとも思ったが、その理屈もなんだか違う気がして、溜め息を吐いた。そんなたらればの話をしてもしょうがないと思った。
    (俺のこの肉体がベータで、乙骨がアルファであることは変わりねぇんだ)
     そう自分に言い聞かせても、もどかしさが晴れることはなかった。



     そんなある日、乙骨と石流に、1つの任務が割り振られた。
     とある病院で発生した呪いを祓うというもので、特段難しいものではないように思えた。
    「ただ、その病院というのがバース病棟とよばれるもので」
    「バース病棟?」
    「第二性絡みの性病に特化した病院なのです。なので、呪いもそれ絡みだと思われています」
     だから第二性がオメガの場合は取り込まれる可能性が高く、ベータもしくはアルファの呪術師に割り振りされているのだという。
    「場所が場所ですし、呪いもかなり濃いため、二級術師では近づくことすら難しいようです。そのため下調べも不十分でして…」
    「なるほど、分かりました」
     補助監督の説明を聞いて、乙骨が頷く。石流も乙骨に付き合っていくつか任務をこなしたが、特級呪術師である乙骨に割り振られる任務というのは、こういう全容が曖昧なものも多かった。だから、乙骨もそれを承知の上で任務にあたる。補助監督が「ご武運を」と言って、帳を下ろした。

    「…呪いの気配、します?」
    「ああ、そのかしこ」
     乙骨が得物である刀を抜き歩いて行けば、石流も拳を掌にバシッと当てた。
    「まず、低級を一掃しましょう」
    「だな、俺はこっちのやつをぶっ飛ばして行くぜ」
    「じゃあ僕はあっちを」
     そんな言葉を交わしながら二手に分かれて、石流と乙骨は建物中に湧いている低級呪霊を祓っていく。だが、一階の呪霊を粗方祓った辺りで、石流は違和感を覚え始めていた。
    (……補助監督は、呪いが濃くて二級術師でも近づけなかった、って言ってたが……今のところ、そんな呪いの濃さは感じねぇな……まるで、侵入されても構わねぇみたいな…)
     今まで来た呪術師は弾き、今回の自分たちは敢えて招き入れているような。
    「石流さん」
     妙な不快感を抱きながらも、石流が廊下を進んでいけば、階段のところに乙骨が立っていた。
    「ここから西側の呪霊は全部祓いました。上に行きましょう」
    「……ああ」
     石流も頷き、乙骨を追うかたちで階段を昇っていく。
    「…なぁ、乙骨」
    「なんですか?」
    「なんか…妙じゃねぇか?」
     敢えて曖昧な言葉で乙骨にそう問えば、乙骨も少し強張った声で「…石流さんも、そう思いますか?」と言ってきて、やはり乙骨も同じ違和感は抱いているようだ。
    「ああ…あまりにすんなり、中に入れすぎだよな?」
    「発生している呪霊もそこまで強くない。まるで奥まで、誘われているようですよね」
     乙骨が刀を持つ手にぎゅっと力を入れたのが分かった。石流も意識を階段を昇った先に向けた。
     昇ってすぐは二階のロビーになってるようで開けていた。相変わらずそこかしこに呪いの気配はするが、一階と変わりないように見える。それなら更に上階へ向かってしまおうかと思って、石流が上の階を見上げた、その時。
     二階のフロアに足を踏み入れた乙骨が「う、あ…!」と声を上げた。
     石流が視線を下ろせば、乙骨が足を踏み入れた先が謎の光を発していた。
    (結界術、か…!?)
     乙骨も当然、それを予想して対策していたのだろうが、不意にガクリとその場に膝をついてしまった。
    「う、ア……」
    「おい、乙骨…!?」
     そんなヤバい効果の結界術なのかと思って、乙骨の身体だけでも結界の外に出してやろうとすれば、乙骨に触れた直後、石流の足元も光り出した。
    (……くそ、中に入ったやつに触れたらそいつも対象ってことかよ…!)
     自分にまで結界術の術式効果が及ばぬように、こちらも効果を打ち消す結界術を発動しようとしたのだが──それより早く、石流の顔に、むあっと甘い匂いが被さった。
     思わず自分の鼻と口を手で覆った。その匂いがなんであるか、石流には身に覚えがあった。だが、それは今の肉体に受肉するより、もっと前──生前、アルファだった時に嗅いだことのある匂いだった。
    (まさか……オメガのフェロモン…!?)
     そんなバカなと思う、今の身体の第二性はベータで、オメガのフェロモンを感じるはずがない。それでも、かつてアルファだった頃の記憶から、この匂いがオメガのフェロモンであると分かってしまう。
     そして何より。
     自分の目の前にいる、先に結界術の術式効果を浴びてしまった乙骨は、蹲りはぁはぁと荒い息をしながら、自身の身体を抱き締めていた。その顔が、ゆっくりとこちらに向く。
    「…いし、ごおり、さ……」
     顔を真っ赤に染め、目元に涙を溜めたその表情は明らかに発情していて、更には石流が感じるオメガのフェロモンは、乙骨が発しているものだった。
     乙骨の身体がオメガになってる…?
     そんなバカなと頭では思うのに、本能は、身体は、その欲求に、抗えなかった。
     乙骨の身体をこちらに向かせてから、そのまま床の上にその身体を倒した。そして、その上に覆い被さりはぁはぁと荒い息を落とした。
    「…っ、おっ、こつ…」
     今すぐにコイツの着ているものをひん剥いてその身体に齧り付きたい。自分のものだという所有印を残して、それから自分の熱を思うがままに突っ込んで彼の中にこの欲をぶちまけてしまいたい。
     そんな欲求を必死に理性で抑え込んだ。ダメだ、こんなのはおかしい、この欲求に従ってはダメだと、必死に抑え込んだの、だが。
    「……いし、ごおり、さ……」
     石流に押し倒された乙骨がムンムンとフェロモンを吐き出しながら、石流にぎゅっと抱きついてくる。
    「たすけ、て…くださ……ぼく、のこと……」
     抱いて、ください。
     その言葉で、石流の理性は弾け飛んだ。



     これは、後で分かったことだが。
     その病院で入院していたのは、主にアルファから性的被害を受けたオメガだったという。
     オメガは自分たちの身体を弄んだアルファを恨み、彼らに自分たちと同じ苦しみを与えたいと思った。
     同時に、アルファからの被害に気付いていながら知らぬ存ぜぬ見て見ぬ振り他人事を貫いたベータたちをも憎み、彼らを当事者に引き摺り込みたいと考えていた。
     その憎悪と怨恨は呪いを生み、その呪霊の術式は人間の第二性を操作するものだった。

     自分たちと同じ苦しみを味わうように、アルファはオメガへ。
     他人事と不干渉を貫いた、ベータはアルファへ。
     自分たちはもう第二性に振り回されたくないと、オメガはベータへ。

     そしてその術式が発動する結界術の条件は、アルファとベータが揃って近づくこと。
     ふたりはその条件を満たしてしまっていたのだ。



    「っ、ああっ…!ひぁっ、やぁ…!ああ…!!」
     目の前で乱れる乙骨の背中を、まるで遠い世界の出来事のように石流は見ていた。そして、襟足からチラつく項が、どうしようもなく欲しくてたまらなくなった。
     そこに噛み付きたくて、たまらなかった。
     そして、その欲求に逆らうことなく、石流は思いっきりそこに噛み付いていた。
    「ああああアアア───ッ…!!!」
     一際高い乙骨の声があがった。
     その声すら、とても心地よく、気持ちの良いものに、聞こえた。
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