石乙散文 「好きだ」と言われて抱き締められてキスをされて、身体を押し倒されて触れられた。
なんでこんなことするんだろうとぼんやり思っていたら、嫌じゃねぇのか?と意外そうな顔で言われて、嫌じゃないというかなんというか。
「……さぁ?よく分かんないです」
「なんだそりゃ」
「よく分かんないけど、アナタが僕にそうしたいなら、好きにして下さい」
そう言ったら、何故か不機嫌そうな顔になって、触れてくる手を離してきた。
「そんなこと言われて、好きに出来るかよ」
「?なんでですか?」
「俺はなぁ、お前を抱きたいんじゃねぇ、抱き合いたいんだ」
そう言って、身体を起こしおもむろに着ていたシャツを脱いできた。そしてこちらの腕を引いて身体を起こさせて、触りたきゃ触っていいぞと言って来た。
ナニソレって思ったけれど、間近で彼の身体を改めて見ると、すごくゾクゾクした。自分にはない鍛え上げられた身体、筋肉、触れたらとても柔らかそうだなって思った。
恐る恐る触れたら、想像よりもしっかり硬くてでも、弾力はあって気持ちいい。その後もペタペタ触って、無性に自分の肌と合わせたくなって、そっとその胸筋に顔を押し付けた。
「……おい」
「ん……石流さんの筋肉、気持ちいいです」
「そうかよ……」
じゃあ俺もお前に触るな、と言って、石流も自分の身体に触れてきた。大きな節張った掌が、背中を撫でてそれが気持ちいい。自分も、彼の身体に頬ずりしながら、腕や背中に触れて、それからふっと彼の顔を見た。
そしたら目があって、ニッと笑って顔を近づけてくる。あ、キスされると思ったから目を閉じた。そのまま唇が合わさって、それも気持ち良くて。
さっきキスされたときはこんなこと思わなかったのに、夢中で彼の口付けを受け止め、夢中でそれに応えた。いつの間にか彼と触れ合いたくてたまらなくなっていた。
いつの間にか自分は。
「……好きだ、乙骨」
長いキスに息が切れた。そして囁かれたその言葉に、ふんわりと微笑みで返す。
「……僕も、好きです」
たぶん、あなたのことが。
その返しに、彼は少し瞬きをしながら、ったくよぉ~~~と言って、再び身体を押し倒してきた。
「……そんなの、ダダ漏れだってぇの!」
そしてそんな風に言いながら、再びキスしてきて、身体に触れてきた。
なんのこと?と思いつつ、それを受け止めながら自分も求めた。
身体を触れ合って求めてあって抱き合って。
好き合うのはこんなにも気持ち良くて嬉しいことだって。
アナタが教えてくれたこと。