Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    さなか

    @o_sanaka

    成人腐(↑20)。主に石乙で文字と絵を投稿してます。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 88

    さなか

    ☆quiet follow

    サンタ石流の石乙

    #石乙
    stoneB

    恋人はサンタクロース ザンッと突き立てた刀から呪力を飛ばし、それで呪霊はザフリと消滅した。
     そしてそれが最後の一体だったのか、帳が解除されて、乙骨はふぅと息を吐いた。
    「お疲れさまです、乙骨術師」
     乙骨が帳が張られて居た場所より外に出れば、補助監督が待ち構えていて、そう声を掛けてきた。その人に乙骨はすかさず問いかけた。
    「次の現場は?」
     次はどこへ向かいどんな呪霊を祓えばいい?
     そんな意図を籠めて、乙骨はそう言った。

     今日はクリスマスイブだ。恋人や友人、家族と共に過ごす楽しい行事ではあるのだが、それと同時に呪霊も多数発生するXデーでもある。だから乙骨も朝から罰祓の任務に追われていた。もうかれこれ五件目である。
     それでも乙骨は特級呪術師であるし、一箇所でも多くの現場を巡り、呪霊を祓わなければならないと思っていた。他の呪術師で手に負えない現場があるのなら、すぐに行きたいと思っていた。

     だがその補助監督は、乙骨に「いえ」と返した。
    「今のところ落ち着いているので大丈夫です。むしろ乙骨術師を少しでも休憩させるようにと伊地知さんから…」
    「えぇ?」
     思わずそんな声が漏れた。
    「いやいや、僕は休憩なんて取らなくて大丈夫です。他の術師で、等級に見合わない現場に割り当てられている人はいませんか?すぐに僕が行くので──」
     そう言って、補助監督が持っているタブレットに手を伸ばそうとすれば──不意に後ろから襟首を掴まれてそれを静止させられた。
    「ぐ、え……」
    「……落ち着けよ、休憩しろって言われてんだから休憩しろ」
     そして聞こえたそんな声に、絞まった首を抑えながら、乙骨が振り返った。
    「石流……さん……!?」
     乙骨が思わず驚いた声をあげてしまったのは、いつの間にか石流が背後にいたのもそうだが、何故かいつも着ているジャケットが黒ではなく赤だったからだ。しかも頭にも三角で先端にポンポンの付いた赤い帽子を被っている。
    「……どうしたんですか、その格好」
    「うるせぇ、あの目隠し教師やらオマエのダチらのせいだっての!」
     なんとなくサンタクロースを彷彿とさせる格好ではあるが、前を開いて胸筋と腹筋を晒しているサンタとかワイルドにも程があるだろう。というか寒くないの??
     そんな石流の格好に乙骨が呆けていれば、その間に身体に腕を通され、そのまま肩に担がれてしまった。それはもう米俵みたいに。
    「つーわけで、こいつは俺が休憩させるから、時間になったらあんたも呼びに来てくれ」
    「分かりました、よろしくお願いします」
     石流の存在は補助監督にも示し合わされていたのか、あっさりとそう言われてしまい、乙骨だけワケが分からず「え、え…!?」と戸惑っている。
    「どういうことですか、石流さん…!?」
    「どうにもこうにも、オマエがちゃんと休憩取らねぇから、俺にお鉢が回されたんだよ」
     そう言いながら石流は乙骨を抱えたまま歩いて行く。え、このままどこに行くの!?と思ったら、見えてきたのはラブホだったので「ほぁ!!??」とまた変な声をあげてしまった。
    「ままままさかあそこですか…!?」
    「休憩二時間ポッキリだ」
    「なに言ってんですか!!僕はまだ任務に行かないといけないのに!!」
     一旦休憩を取るのはともかくとして、ホテルになんて連れ込まれてしまったらもう今日は使い物にならなくなってしまう。
     石流の肩の上で藻掻いていれば(もちろん呪力は籠めたが、石流の方が呪力出力が高いので完全に抑え込まれている)石流が呆れたように「なに言ってんだ」と言ってきた。
    「高専まで帰ってるだけで、数時間使っちまうだろ。手っ取り早く休憩するならこういう場所が都合がいいし、ほんとに休憩だけで、なにもしねぇよ」
     そう言いながら建物に入り、無人の受付も済ませて、部屋に向かっていく。しかし、石流とラブホに入るというだけで、乙骨はむずむずしてしまう。
    「で、でも……」
    「なんだよ、手ぇ出してもらいたいのか?」
    「そんなワケないじゃないですか!!」
     乙骨はそう声をあげたけれど、正直、出してもらえるなら出してもらいたいくらいなのだ。
    (アアアそうじゃなくて……もう僕、なに考えてるんだろう……)
     あわあわとしているうちに、部屋に到着した。もう明らかにそういうことをするための装飾だらけのその部屋の、明らかにそういうことをするためにデザインされたベッドの上に、乙骨はとさりと落とされた。
    「…っ、石流、さん……」
     そんな乙骨に、石流は覆い被さってきて、顔をあげたところでキスをされた。いや、そういうことはしないんじゃなかったの!?と思いつつ、そのキスが気持ち良くて、思わず目を閉じて受け入れてしまう。
    「ん、はぁ、ン……」
     口内に舌が入ってきて、こちらの舌と絡み合う。石流が更に身を乗り出して来て、乙骨も支えきれずに、ベッドの上に倒れ込んだ。
     パサリと石流が頭に被っていた赤い帽子が取れた。
    「……乙骨…」
     熱い眼差しでこちらを見つめてくる石流に、ゾクリと背筋が震えた。
    「……休憩するだけ、じゃ、なかったんですか?」
     明らかに欲情しているように見える石流に、乙骨がそう問えば、石流は「ああ」と頷きつつ、乙骨の首元に顔を埋めてくる。そして同時に、乙骨が着ている制服のボタンを外してきて、乙骨は「ちょ…」と声を上げた。
    「ぜんぜん、『ああ』じゃないですよね…!?」
    「オマエがその気になったらその時はしょうがねぇかなぁと思っている」
    「そ、そんなのズルいですよ…!」
     乙骨が慌ててそう言えば、石流が顔をあげてきて、「ジョーダンだよ」と苦笑した。
    「抱かねぇけど、イチャイチャした方がオマエも元気になんだろ」
    「……ドキドキして、逆に心安まらないんですけど」
     乙骨がムッとしてそう言えば、石流はケラケラ笑って身体を起こした。
    「腹が空いてるなら、適当に飯も買ってきてあるから食うか?」
    「……食べます」
     乙骨が不機嫌そのままにそう言うけれど、石流は気にした風もなく「はいよ」と言って、サイドテーブルを寄せてきて、そこに乗っていた袋の中身を出した。コンドームとかローションが入ってるのではも思っていたその袋には、おにぎりとサンドイッチが入っていて、少し申し訳ない気持ちになった。
    「お湯でも沸かすか……こういうところに、そういうのあんのかねぇ」
     そう言いながらベッドを離れていく石流を見送りつつ、乙骨はもそもそとサイドテーブルからおにぎりを手に取り、開けてからもふもふとそれを食べた。
     確かに何だかんだでお腹は空いていた。朝から任務に出て、移動中に固形の携帯食料は食べたが、それくらいだった。少し塩っぱい味が更に空腹を誘い、サンドイッチのパッケージも開けた。
    「お、食ってるな」
     なんとかお湯を用意できたらしい石流が、インスタントスープにお湯を入れた状態で戻ってきた。それももらって口に入れ、その温かさにホッと息を吐いた。
     そんな乙骨の姿を、石流は隣に座って眺めていた。そしてその視線に気付いて顔を向けた乙骨に苦笑をうかべて、そっと頭を撫でてくる。
    「オマエがさ、強ぇ術師なのは分かってんだけどよ、少しは自分のことを労ってやらねぇと、大事なときに誰も助けられなくなるぞ」
     もきゅもきゅと食べていたサンドイッチをごくりの飲み下し、乙骨はポツリと言った。
    「……もう、みんなが大変なときに、助けられないのは、嫌です」
    「そーだろそーだろ、だったら大人しく休んで、次の任務に備えろよ」
     あいつらには、オマエを思いっきり甘やかせって言われてるからな。
     そう言って笑った石流に、乙骨は瞬きをする。
     石流のいうあいつら、というのは、恐らく乙骨と同じ特級呪術師の五条や同級生たちのことを言っているのだろう。なんだかんだで心配掛けちゃったのかなって思ってしまった。
     そしてそれなら、思いっきりこの人に甘えてしまおうと思って。
    「…石流さん、ちょっと僕の後ろに来てもらっていいですか?」
    「ん?おう」
     言われて後ろ回り込んできた石流に乙骨はそのまま寄りかかった。背中に、石流の柔らかい筋肉があまって気持ちがいい。
    「……やっぱり、石流さんの胸筋はちょうどいい柔らかさで最高です」
    「俺はオマエの背もたれか?」
    「甘えさせて、くれるんでしょ?」
     乙骨が石流を見上げながらそう言えば、石流も笑って「違いねぇや」と言った。
    「これが俺からの、オマエへのクリスマスプレゼントみたいなもんだ」
    「……そうですか」
     だからサンタみたいな格好していたのかと、どうでもいいことに納得してから、乙骨は身体を起こし、石流に向き直った。
    「乙骨?」
    「……じゃあ任務が終わったら、僕からもあなたに、プレゼント渡しますね」
     そう言ってからちゅっと口付ければ、石流は目をキョトンとさせたあと、その意図を理解したのか笑って「楽しみにしてる」と、言った。
     それからもう一度、自然流れで、二人はお互いの唇を合わせた。
     休憩時間も残り僅か、その間にお互いの気持ちと温もりを確認し合った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👍👍🎄❤❤😍💘💞💘🎅☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works