金魚になれないこいつを飼ってもいいか?とヴェントルーは手を差し出してきた。見ると屋台で売られているような赤い金魚がビニール袋に入っていて揺蕩っている。近所で夏祭りがあったことを思い出して金魚すくいでもやってきたのかと問いかけると捨てられていたのを拾ってきたのだとヴェントルーは言った。
洗面器を借りるぞと風呂場に向かったヴェントルーに袋を押し付けられる。見るからに入っている水が少なく、袋の底に横たわるように漂っている金魚が弱っているのは明らかだった。
「飼うのはいいが長くは無いかもしれないぞ」
風呂場から戻ってきたヴェントルーに言う。
「承知の上だ」
ヴェントルーは薬缶に水道水を入れ沸騰させた後、直接薬缶にがらがらと氷を入れた。水温が常温になったのを確かめてから洗面器に移し、袋ごと金魚を洗面器に浮かべる。
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