GET MYSELFがライブラスト曲だったらの話那由多の歌声から始まるこの曲が、礼音は好きだった。
声を追いかけるようにギターをかき鳴らす。これが最後の曲ということもあって、皆汗を流しながらもこれまで以上に演奏から力を感じる。湧き上がる高揚感と観客の熱気に当てられ、礼音はふらりと定位置を離れた。
向かった先は那由多の隣。
一瞬、ちらりと赤眼が礼音を睨み上げる。
「……ッ」
気圧されそうになった礼音を尻目に、何事もなかったように視線は前を向いた。一心不乱にマイクに齧りつく那由多に、ちりちりと火で炙られるような心地がする。
こっちを見ろよ。
衝動のまま、礼音は那由多のすぐ横へ足を叩きつけた。ギターを爪弾く指も張り合うように激しくなる。
那由多は一切目を向けなかったが、歌声がより鋭さを増した。
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