眠ると夢を見る。見る夢は大抵“彼”の夢だ。
見る夢は過去だった。確証などないが、そうだったのだろうという漠然とした、けれど確実な思いがある。
そして過去、何度も“彼”と出会い惹かれ合った。それが運命であるかとでもいうように。何度も生まれては出会い、そして死に別れた。
葛之葉雨彦は今まで過ごした数多の人生を、その中でも“彼”と過ごした日々を夢に見る。
だから、雨彦は眠ることを厭うようになった。
海はあまり好きではない。“彼”の死に際を思い出す。
“彼”はいつでも美しかった。美しいまま、必ず海で死んでいく。ある時は生贄として、ある時は人間の手にかかり、ある時は世界に絶望して、ある時は事故で、ある時は雨彦を助ける為に。
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