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    てぬたろ

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    てぬたろ

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    #TPVワンドロライ
    3月29日、お題「雨」「過去・昔」より
    ATSV ミゲミゲ(パパ×928)

    ※壊れかけのミゲのお話。
    ※パパミゲは登場しません。

    涙色の月命日彼が死んで一月が経った。それはつまり彼の代わりをし始めてもう一月が経ったということと同義だった。赤い瞳を隠すためにブラウンのカラーコンタクトを装着し、自分のものではない彼の服をまとって、彼の立ち居振る舞いを真似る。彼の居なくなった翌日に、仕事が忙しくなったと彼の大切な娘に拙い言い訳をして出来上がったのが二人目の"普通"のミゲル・オハラだった。
    彼が生きていると信じたいがために流し続けるモニターの映像の繰り返しはミゲルに現実を突きつけてくる。どうしたってミゲルでは彼にはなれないのだと。
    「まだ、たったの一月。」
    なんとなく独り言を呟いてみたがそれは完全に失敗だった。自分は正気で、自分の行動は正しいという確信が揺らいで今にも叫びだしてしまいたくなってしまった。銃弾が彼の胸を貫いたのはもうずっと遥か昔のことのようにも思えたし、たった昨日のことのようにも思えた。
    ミゲルの頭の中の認識も時間も何もかもがめちゃめちゃで、とうとうミゲルはモニターを見ていられなくなり、フラフラとソサイテォの最深部へと向かう。
    「ああ、ミゲル、君はどこに行ってしまったんだ。」
    道すがら、わざと感傷的に吟遊詩人のように口ずさむ。嘘だらけになってしまった自分を騙し続けるには道化のふりをするしかなく、それを滑稽だと笑うことすら今のミゲルにはできなくなってしまった。

    ソサイティの最深部にある一室はミゲルの秘密が隠されている。ミゲルのいたアルケマックス社の負の遺産、非人道的なサンプルの資料と残骸と、静かな作動音を響かせる棺のような冷凍ポット。
    「そうだった。"ミゲル"はここにいる。」
    冷たい金属の塊にすがりつく。
    ここに来るたびにミゲルはどうして花の一輪でも持ってこなかったのかと後悔するのだったが、眠っているだけの彼に花は必要ないじゃないか、とミゲルの中の詩人が歌い続ける。
    「眠っているだけなのだから花はいらないんだ。」
    どのくらいそうしていたのか。いつの間にかミゲルの足元にだけポツポツと雨が振っていた。
    「ここに来るといつも雨が降るんだな……この中にいるなら君は濡れなくてすむから。」
    良かった、とミゲルは笑ったつもりだったが聞こえたのはやけに乾いた笑い声だけだった。
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    てぬたろ

    DONE #TPVワンドロライ
    4月20日、お題「蜘蛛」「ヒーロー」より
    ATSV ミゲミゲ(パパ×928)

    ※いずれミゲミゲになるミゲとミゲ
    ※99ミゲがパパミゲを特別だと意識するきっかけのお話
    君がそう呼ぶのならばモニターとスクリーンだらけのオフィスでミゲルは今日も仕事をしていた。オレンジ色に発光する光の粒子ばかりを見続けていると、太陽の陽の色を忘れてしまいそうになる。それが健全が不健全で言ったらもちろん後者なわけなのだけど、使命に駆り立てられているミゲルにとってはどうでもいいことだった。
    あらゆる次元のスパイダーマンを観測できるようになってわかったことがある。
    ひとつはあらゆる次元の『ミゲル・オハラ』を観測してみてもスーパーパワーを得るのはこのアース928の『ミゲル・オハラ』、つまり自分だけだということ。
    ふたつめは蜘蛛から直接スーパーパワーを得ていないのは自分だけだということ。
    無限に広がる数えることもバカバカしくなるの次元のすべてを見たわけではないのだから、本当にミゲルが一人きりであるとは言い切れないにしても、ミゲルに孤独感を感じさせるには十分だった。孤独は胸を押しつぶすような不安をミゲルに与え、安らぎから遠ざける。他の次元のスパイダーマンと関わるようになって少しは孤独感が薄れているかもと思うこともあったが、顔色は一向に悪いままだった。
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    てぬたろ

    DONEセステオ(24話後)

    スミルナアンドカプリ
    セスとテオと香りのお話。
    セスの恋心が周りからみてもわかりやかったらかわいいです。

    ※セスがペトロとある程度打ち解けてます。
    香る恋心手に緑色を詰めこんだ籠を持って、セスは軽やかにペセルス城の長い長い階段を降りていく。足元でちょこちょこと精霊たちもセスと階段を一緒に降りていく。
    かつてはセスもランジェレスにあった城に暮らしていたとはいえ、このペセルス城はそれよりももっとずっと構造が複雑だ。オデアの首都にある城より小さいはずだが、ペセルスの城内を把握するためにあちこち散歩をしてはときどき迷子になった記憶はまだ新しい。とはいえここでセスに許されていることは少なかったから、城内とその周辺を歩き回るほかにすることもなくてセスが当初危惧していたよりはずっと早く把握できていた。
    すっかり慣れたペセルス城の台所へとセスはやってきて、使用人の中から見知った顔を探す。お昼すぎのこの時間帯、彼女が書斎にいるテオのためにお茶を用意することもセスはしっかり把握していた。歩くことに疲れた精霊たちはセスの頭と肩の上から探すようにキョロキョロとしている。もしかしたらセスの真似をしているだけかもしれなかった。
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