Beast Heart Stars 明かりは落ちていた。
広い談話室の、そこにもう誰も居なかったのだ。
寒い夜だった。
生憎と暖炉の火は宿主が絶やしてしまっているようで、吐く息ははくりと白い。毛布に包まれば寝れなくもないような、とはいえ手足は冷えるかもしれない温度である。このまま部屋に戻っても良かったが、明日からの旅路を思えば、少しでも睡眠の質は上げておきたかった。元々高くはないのを知っているので、余計にそう考えた。
そもそも何故降りてきたのだったか。
好きに使っていい、と部屋を借りる際に教えられた厨房でミルクの入った小鍋を火にかけながら、ぼんやりと未だ鈍足な脳みそが思考する。ゆらと揺れる乳白が、室内灯の橙の中で不思議に浮いていた。白は案外と、空気にとけない。
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