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    hjm_shiro

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    凪玲/今日の朝を半分こ

    同棲して初めての朝を過ごすngroの話。
    3/17の春コミ無配でした。当スペースまで足を運んでくださった皆さま、ありがとうございました!

    #凪玲
    #なぎれお
    lookingHoarse
    #ngro

     いつもとは違う朝だった。見慣れない天井、ふかふか過ぎるベッド、大きな枕、広すぎる寝室。
     そんな、眠り慣れていないキングサイズの大きなベッドに、俺だけがぽつんと取り残されている。昨日、玲王と一緒に寝たはずで、なんならたくさん楽しんでから眠ったはずなのに。
     同棲して初めて迎える朝に玲王が隣にいないのは酷く寂しかった。
    「レオ〜〜」
     一体、どこに行っちゃったんだろう。まだ、もう少し眠っていたいけれど、俺は仕方なくベッドから降りて、玲王を探しに行くことにした。ベッドから出たときにパンツ以外履いてなかったから、ちゃんと床に落ちていたスウェットも着てリビングの方へ向かう。
     案の定というべきか、玲王はキッチンで忙しなく手を動かしていた。
    「れーお」
    「うおっ、凪⁉」
     後ろから勢いよく抱き着いたら、玲王がビクッと肩を跳ね上げた。起きたばかりなのか、少しだけ瞼が重たそうだ。珍しく前髪も下がっている。いつもはきっちりと左右に分けてセットされているのに、今朝は前髪が下りて、あのつるりとした可愛い額を隠していた。ちょっぴり幼く見える玲王の前髪をかき分けて、露わになった額にキスをする。
    「おはよ、レオ」
    「おう、おはよ」
     ニカッと朝から眩しい笑顔を向けられて、うっと心臓に衝撃が走った。これがバトル漫画か何かだったら、俺は必殺『玲王の笑顔』で死んでいた。
    「ほら、もうすぐ朝ご飯できるから、そっちで待ってろ」
    「ヤダよ。っていうか、なんで勝手に起きちゃうのさ。俺、もっとレオとベッドの中でイチャイチャしたかったのに……」
     同棲初日の朝なのだ。もっと甘い朝を期待していたし、朝から玲王とイチャつく妄想までしていたのに。
    「やらしー凪くんから逃げようかと思って」
    「ひどい……」
     真横に俺の頬を抓って、冗談だと玲王が笑う。だけど、やらしいことを考えていたのは事実なので、たとえ冗談だとしても弁明できない。
    「それにさ、お前と同棲したらやりたかったことがあったんだよ」
     玲王がボウルを手に、冷蔵庫へ向かう。
     俺も玲王の腰にくっついているので、必然的にそのまま冷蔵庫まで移動した。歩きづらいと文句を言う玲王の言葉を無視して、ぎゅうっと腕に力を込める。
    「お前に、朝ご飯を作ってやりたくてさ」
     玲王が卵を取り出して、殻をボウルの縁にコンコンとぶつける。柔らかなヒビが入って、玲王は器用に卵をボウルの中に割り入れた。とぷんとボウルの底で波打って、ふたつ分の黄身が揺れる。
    「あ、」
    「双子だ! すげー!」
     割り入れた卵の黄身がふたつになっている。玲王は初めて見た! と声を弾ませて言った。
    「俺も初めて見た……」
    「ラッキーだな! なんか得した気分」
    「っていうか、このたまご、俺たちみたい」
     だって、ずっとくっついているから。薄い殻の中でくっつき合って、こうして外に出て来てもまだ
    くっつき合っている様はまるで俺たちみたいだ。
    「……お前、ときどきロマンチックな発想するよな」
    「そう?」
    「たまに恥ずかしー奴って思うけど……まぁ、嫌じゃねぇ」
     玲王がキッチン棚から菜箸を引っ張り出す。その箸先を黄身に突き立てようとして、やめた。もう一つ割り入れる予定だった卵を冷蔵庫に戻し、代わりにフライパンを取り出す。
    「混ぜないの?」
    「……なんか、勿体ないからやめた」
     そう言って、玲王はフライパンに薄く油を引くと、ボウルに割り入れた卵をそっとフライパンの上に落とした。
    「なぁ、この卵、半分こしようぜ」
    「うん」
     玲王の提案に、俺は力いっぱい頷く。
     そうして卵を焼いて、パンを焼いて。玲王は終始、くっつくなと言っていたけれど、結局テーブルに着くまで俺たちはくっついたままだった。

     このくっつき合っている卵みたいに、俺たちもこの先、ずっと幸せも朝も半分こにできたらいいなぁと、玲王と熱々とろとろの目玉焼きを半分こにしながらそう思った。
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