「それでは今週もやって参りました。御影玲王のなんでもお悩み相談室! この俺、御影玲王が視聴者様から頂いたお悩みをズバッと解決していきます!!」
「ます〜」
「こら、凪! やる気だせー」
「うい〜」
「お前がなーんも答えねぇから、ついにタイトルコールから"凪誠士郎"の名前が消えたじゃん」
すかさず、やる気のない凪選手に御影選手がツッコむ。
この『御影玲王のなんでもお悩み相談室!』はBLTVの配信コンテンツの中でも一、二を争う人気コンテンツだ。タイトルの通り、御影選手が視聴者からのお悩みをズバッと解決するコーナーである。もっとも、初期の設定では凪選手も一緒だったが、先ほど御影選手が言った通り、凪選手は何も答えない回が続いたため、最終的に御影選手だけのコーナーになった。
「えー、では今週のお悩みは……ユーザーネームうさぎちゃん、十五歳! うさぎちゃん、聞いてっかな? えーっと、『御影選手、凪選手こんにちは』こんにちは!」
「ちはー」
「『私は御影選手のことが大好きです!』おっ、マジか! サンキューな!」
「……レオ、お悩みのところ以外は飛ばしてよ」
「は? それは送ってくれた人に失礼だろ。ごめん、うさぎちゃん。続けるな。『御影選手のことが好きすぎて、グッズもたくさん集めています。今回、私が送った内容はお悩みというわけではなく、純粋に知りたいだけなのですが、御影選手はどんな人が好みですか、教えてください』」
これはまた随分と怖いもの知らずな質問だ。御影選手も「すごい質問だな!」と笑っている。
私だったら、こんな質問は送れない。だけど、気になるのは事実だ。固唾を呑んで返答を待っていると、「それは俺が答えるね」と何故か凪選手が割り込んできた。
「レオは、サッカーがうまくて、才能があって、お世話しがいがあって、めんどくさがり屋な奴のことが好き」
「おい、勝手に決めんなよ」
「違うの?」
「……違わなくはない」
「でしょ? レオ、俺のこと大好きだもんね」
「それは友達として、な」
「本当に? あっ、ちなみに俺の好みは御影玲王ね。友達じゃなくて、ライクでもなくて、ラブな方の好みね」
そう凪選手が言い切った瞬間、御影選手の顔がボンと爆発した。熟れすぎたりんごみたいな顔で口をパクパクさせている。
それからの流れは早かった。
すぐに画面がブラックアウトし、音楽が流れ始めた。ちなみにコメントはオフになっているため、視聴者はただこの行き場のない感情を持て余すしかない。
程なくして、戻った画面には凪選手しか映っていなかった。
「つまり、そういうことなので、うさぎちゃんごめんね。レオのことは諦めてね。以上、凪誠士郎のお悩み相談室でしたー」