正しい性生活には、正しい知識をアルハイゼンに告白された。何を馬鹿なことをと思って一蹴するも、本気だと呟くように俯いた儚げな表情に、ティナリは腹を括った。もつれ込むようにベッドに倒れ込み、そのままの勢いで、盛った獣のようにあっという間に体を重ねた。
「ん、ふぅ…っ！あるはいぜん、あぁ…」
後ろから抱きしめしっかり解された後、ころりと表を向かされて、自分の後孔へ迫り来る一物に、きゅうとお腹に力を入れ覚悟を決めた、その時。
「ティナリ」
「んぅ、なに？」
「ナマがいい。だめか？」
「…っはぁ！？ふざけてるの？ダメだよ！ちゃんとゴムつけて」
突然の申し出に、ありえないと頭を振った。何を言い出すかと思えばおバカな後輩め。きょとんと見つめてくるアルハイゼンを、ティナリは思わず叱責した。
「でも、」
「雰囲気を大事にしたいから、ろくな検査もせずに肛門にちんこ入れるのだって譲歩してるのに…ゴムなしなんてありえない！」
「びょ、病気のことなら大丈夫だ。俺はお前以外と性関係を持ったことは無い。お前が初めてだから…頼む、ティナリ」
嫌だ嫌だと頭を振るのに、ぴたり、と先っぽが孔に触れ、ぞくりと嫌な寒気が背中をかけ登った。
「ちょっと待て！性行為の経験がないから性感染症にかかってないなんて誰が言った！？母子感染
や常在菌だってあるんだ、そういうことじゃないんだよアルハイゼン！」
「ちょ、暴れるな」
ばたばたと開いた両脚を跳ね上げて抵抗する。様々な性病と症状、その治療法や薬の調合まで知りうる限りの情報が無理やり頭から引き出され、浮かされた熱がさぁっと覚めていくのを感じた。ゴム無しでなんて入れられてみろ、なまじ知識がある分余計に恐ろしくて恐ろしくて、ノイローゼになってしまうかもしれない。
「やめて！明日一緒に検査を受けに行こう、それで大丈夫なら、僕ももっと念入りにちゃんと肛門を洗うから！今日はダメえぇ！！」
「声が大きい…分かった、悪かった」
成人男性の全力喚き散らしに、ようやく諦めてくれたようだ。謝ってきたアルハイゼンに、やれやれ全く、小さくため息を着く。
「というか叫んだら気分じゃなくなった…やり直し、もう1回最初から気持ちよくして。次はゴムちゃんとつけるんだよ」
「分かった。すまない」
とてもいちゃラブセックスを続けられる雰囲気じゃない。ぷうと不満そうに頬を膨らますと、触れるだけのキスをされた。
「まぁ、ちゃんと知らなかったのなら仕方ないよ。大丈夫、明日改めてちゃんと教えてあげるから」
「そうやって先生みたいなティナリも好きだ」
「楽しみにしててね、賢い生徒さん」
夜はまだ早い。
正しい性生活には、正しい知識を。