初雪「深津サン!!起きて!!」
何やら騒がしい様子に重たい瞼を薄く開くと、ふかふかのニットにダウン、マフラー、耳当てと完全防備の恋人。興奮したように目を輝かせる姿は、耳をピコピコ動かし短い尻尾をブンブン振る小型犬さながらである。
「…」
「だめッスよ、起きてください!」
あまりの眠さに聞こえないふりをしても、今日のリョータは引いてくれないらしい。冬の朝は特に苦手だ。眠さに加えて深津の冷えた手先をリョータが拒むときた、動き出す気力が湧くまでに時間がかかるしそりゃあ目蓋も簡単には開かない。
「うるさいピョン」
「外見てくださいよ!雪かき、雪かきしましょう!」
目を輝かせて興奮した様子のリョータを撫でながら、開かれたカーテンの奥に目を凝らせば確かに、こんこんと雪が降っている。この様子じゃ相当積もっているだろう。
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