原案・SWITCH【冒頭のみ】 好きだから付き合ってほしい、と言ってきたのは流川の方からだ。聞きそびれたけど、一体いつからだったのか。
中学から続く先輩後輩の関係が、まさか二十代になって、今更変わるなんて考えもしなかった。
学生時代はよく知った相手と付き合うのはときめきがないようで、惹かれなかった。でも大人になると、それはそれでよく知る相手とそういう仲になるのは気恥ずかしさや失敗したときの不安が付き纏う──そう思っていたのに、流川なら、大丈夫だと直感が働いた。
だって流川は今まで一度も私を不安にさせたことがない。流川といて嫌な気持ちになったことが一度もない。
十年以上の付き合いで、それってすごいことだ。
そしてその直感は大正解で、彼氏になってからの流川はこれまで通りいいやつで、私をホッとさせた。
「それで十分、って思ってたのにな」
「何が?」
「わっ、ビックリした」
休日の朝。流川の家のベッドは本人に合わせて大きい上に、寝太郎のわりに寝相は良いので主が爆睡中に私ものんびりと寝転んだり本を読んだりして過ごせる。
あまりにも居心地がいいから、つい自宅にいるときみたいな独り言が漏れてしまった。
「起こした?」
「んなことより、何が十分じゃねぇの」
体を起こした流川は寝転んだままの私の髪を指で掬った。いつもはバスケ以外には全方位に鈍感なくせに、今朝に限っては冴えていてドキリとする。
「俺のことだろ」
「なんでそう思うのよ」
「……願望?」
「は?」
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投了