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    syako_kmt

    むざこく30本ノック用です。
    成人向けが多いと思うので、20歳未満の方はご遠慮下さい。

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    むざこく30本ノック③
    12日目
    無惨様と黒死牟がねるとんで出会う

    #むざこく30本ノック
    random30Knocks
    #むざこく
    unscrupulousCountry

    無惨様と黒死牟がねるとんで出会う 1989年、日本がバブル景気で沸いていた時代、ひとつのテレビ番組を真似た「ねるとんパーティー」というお見合いパーティーが大流行した。
     恋人を探すフリーの男女が集まるのだが、全員が全員、それが目的ではない。
     中には、この月彦のようにマルチ商法、所謂ねずみ講の勧誘の為に参加した者や、巌勝のように「客寄せパンダ」のアルバイトとしてやってきた者もいるので、玉石混交の中から運命の相手を見つけるのは本当に難しい。その上、惜しむらくは、そういった「マジの参加」ではない人物の方が容姿も良く、異性の食いつきが良いのだ。

     パーティーはまず自己紹介タイムから始まる。
    「鬼舞辻月彦です。職業は会社経営をしています」
     嘘ではない。実際、いくつかのネットワークビジネスで、元締めに近いところにいて、下っ端から相当な金を巻き上げている。愛車はBMWの3シリーズ、オーダーメイドのダブルのスーツに腕には金色のロレックスが輝いている。
    「彼女いない歴ですか? そうですね、仕事が忙しくて1年くらいいなくて……」
     嘘ではないが、本当でもない。ちゃんと付き合っている相手がいないだけで、毎日、違う女性と遊び歩いている。
     3分で移動してしまうのが惜しい。どのテーブルの女子も月彦を必死に引き留めようとしている。因みに月彦は、女性陣にもサクラが混じっていることは解っているので、サクラが誰か見抜きつつ、女子の持ち物などで経済状況をリサーチしているのだ。5番の女子がシャネルのツイードスーツにマトラッセを持っているので、なかなか羽振りが良さそうだ、とか、3番の女子はエルメスのスカーフにイブサンローランのフューシャピンクの口紅がよく似合っているので、今夜、連れて帰っても良いかなぁ……など考えている、本当に最低の男である。
    「継国巌勝です……えっと、大学生です……」
     高身長、高学歴、この調子だと高収入も間違いないだろう。「3高」の巌勝にも女子の熱い視線が集まる。しかし、彼はアルバイトでこのパーティーにやってきただけで彼女を作るつもりなど、さらさらないのだ。
    「彼女いない歴……えっと……あ、移動ですか?」
     話下手のようで、色々と質問されては、ちゃんと答えることが出来ないまま次のテーブルに移動となっている。
     彼女いない歴を訊かないで欲しい、と巌勝は質問される度に動揺していた。多分、正直に答えたら、みんな驚いて引くだろうし、そこから「どういうタイプが好み?」と訊かれたら余計に困ってしまう。
     そんな自分とは違い、あの「鬼舞辻さん」という男性はすごいなと見ている。
    「好きなタイプですか? 貴女のような人ですね」
    「好きなタイプですか? 家庭的な人が良いですね。僕、料理が全くできないので」
    「好きなタイプですか? 一緒にお酒を楽しみたいので、お酒が好きな人が良いですね」
     凄い、各テーブルで相手に合わせて全部違うことを言っている。しかも、相手が喜んでいるところを見るに、相手の言われたいことを瞬時に見抜いているのだろう。
     じっと彼を見ていると偶然目が合ったので、巌勝はすぐに顔を伏せた。
     なんだ、あいつ、こっちをじろじろ見て……というのが月彦の感想である。しかし、巌勝の感想は明らかに違う。

     やっばい……めちゃくちゃかっこいい……。

     そう、巌勝は同性愛者なのだ。
     なので、彼女いない歴は年齢。しかし、彼氏はいる。働かない彼氏で、最近、新しい仕事を始めると意気揚々と借金してきたので、返済の為に実入りの良いアルバイトをする必要があり、その為にこんな胡散臭いパーティーに参加したのだ。
    「君だったら、もっと稼げるアルバイトがあるけど」
     と誘われたが、首をブンブンと横に振って断ったが、実はちょっと迷っている。
     当時、同性愛者は未だ肩身の狭い想いをしていて、「ホモ」だ「オカマ」だと蔑まれていた。そんな中で彼氏を探すのもやっとだし、そんな貴重な彼氏を手放したくないので、生活の面倒を見ていたのだ。
     そんな微妙な自己紹介タイムが終わり、次はフリータイム。立食パーティー形式になっている。
     勿論、大半の女子は月彦の周りに群がっている。そして、残りの女子は巌勝の周りに群がっているので、他の男性陣の視線がかなり痛い。自分はサクラとしてパーティーを盛り上げる為に来たのだ、このままで終わらせてはいけない、そう思って、巌勝は女子を掻き分けて月彦のところに行った。
    「あ、あの!」
     長身の月彦が見上げるくらい背が高い巌勝に、月彦は思わず「でかっ……」と呟いた。巌勝は間近で月彦を見て、めちゃくちゃ男前……とドキドキしてしまっている。会場の女子が全員、二人を注目する。
    「その時計、いいですね!」
     シャンパンを持つ左手を掴む。キッラキラのロレックスを見て、巌勝は「すごいですね、めちゃくちゃ高いんですか?」と時計など全然興味がないが話しかける。
     月彦も普段なら「なんだ、お前」と手を振り払うところだが、シャンパングラスを右手に持ち換えて笑顔で話す。
    「大したことないよ。ハワイで買ったロレックスだよ。今、海外で買い物すると安いからね」
    「ハワイ、よく行くんですか?」
     なんで、こいつが質問してくるんだよ……と月彦は顳顬をピクピクと動かしながらも笑顔を崩さない。しかも、巌勝がこうして邪魔するせいで、暇になった女子たちに他の男が声を掛け始めて、二人の周りから女子が徐々に減っていく。
     あ、ねずみ講のカモが……、あ、今夜のエッチの相手が……、月彦が目星を付けていた相手が違う男に連れて行かれ、月彦の元に残ったのは巌勝一人である。
     もう、こうなれば、ねずみ講のカモなら男でも女でも良い。
    「君、学生さん?」
    「あ、はい」
    「どこの大学?」
     月彦の色々質問され、舞い上がって色々答える。
    「大変だね、こんなアルバイト」
    「いえ、結構バイト代良くて……あっ!」
     やはりサクラか。月彦は冷ややかな視線で巌勝を睨む。
    「どういう魂胆か知らないが、こっちは高い参加料払ってんだよ。運営に苦情言うぞ」
    「それだけは……」
     サクラがサクラと気付かれるなど前代未聞である。しかも、それを運営に言われてしまったら違約金が発生する。
    「お願いです、何でもしますから……」
    「そう?」
     大学生などねずみ講の格好のターゲットである。しかも、巌勝は有名私学。金持ちの子息が多いことで有名である。月彦は下手に女を釣るより、こっちの方が良いかもしれない、と作戦を練り直しているが、巌勝は「何でもします」という言葉に月彦が乗ったので、何か良いことをしてもらえるのではないか、といかがわしい妄想をしていた。
    「しかし、大学生がするにしては不健全なアルバイトだと思うけど?」
    「どうしてもお金がいるので……」
     働いていない彼氏を養っている、とは言えない。しかし、そう言った時、キラッと月彦の目が輝いた。
    「もっと割の良い仕事に興味ない?」
    「え?」
     手を握られ、思わず真っ赤になる。月彦の価値観ではよく解っていないのだが、巌勝は自分に悪い印象を持っていないということだけは解る。なので、ぐいぐいと距離を詰める。
     具体的な話をしようとした時に、チリンチリンと司会がベルを鳴らした。
    「はい! では皆さん、運命のお相手は見つかりましたか?」
     フリータイムが終わり、それぞれが希望の相手の番号を書いて司会者の前の箱に入れに行く。
    「また後でね」
     月彦は巌勝の耳元で囁いて、司会者のところに自分のメモを持って行った。
     互いの番号がマッチすれば連絡先を交換するシステムになっているので、皆、競争率の高い月彦や巌勝を避け、感触の良かった相手の番号を書いている。その為、割と多くのカップルが成立しているが、最後の最後、司会者が読み上げるのを躊躇った。
     なんと同性の月彦と巌勝が互いの番号を書いて、マッチングしてしまったのだ。
    「お二人とも書き間違いですか?」
    「いえ、合っています」
    「はい」
     月彦は巌勝の手を握って、カップル成立した者たちと一緒にステージの上に行く。
    「良い相手に出会えました! 気分は最高です!!」
     月彦の言葉に会場が拍手で包まれる。あぁ、こんな格好良い人に選んでもらえて俺は幸せだ! もう、あの働かない彼氏と別れて、月彦さんと幸せになろう! と思っていたが、帰りに駅前の喫茶店に入り、1冊のパンフレットを渡された。
    「君は自分の健康に気を付けているか?」
    「え?」
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    TRAININGむざこく30本ノック③
    13日目
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう 今日もやっと1日が終わった。
     朝から晩まで、あの鬼上司2人に扱き使われたのだ。
    「おい、零余子!」
    「はい!」
    「零余子!」
    「はいー!!!!」
     多分、この数年で確実に親より名前を呼ばれている。これまで割と要領良く生きてきたので、こんなに怒鳴り散らされることはなかった。
     初めは鬼舞辻事務所に就職が決まり大喜びした。
     今をときめくイケメン政治家、鬼舞辻無惨の下で働けるなんて……その上、彼は独身。もしかして、もしかする、未来のファーストレディになれるようなルートが待っているかもしれない!? と馬鹿な期待をして入職したのだが、それは夢どころか大きな間違いだった。
     毎日怒鳴り散らされ、何を言っても否定され、無惨だけでも心がバキバキに折れそうなのに、これまたイケメンの秘書、黒死牟が更にエグイ。まず行動原理が「無惨様のため」なので、無惨の怒りを買った時点で、どんな言い訳をしても通用しない。こちらに非が無くても、無惨に怒鳴られ、黒死牟にネチネチと嫌味を言われ、最悪のコンボが待っている。
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