孫家では暑い夏にはスイカが人気であり、夫婦で世話をしている畑でも作っている。水分と甘みがしっかりとあるとなかなか市場でも人気の作物だ。市場に卸せなかったものはもちろんおいしく食す。
「たっでぇま~。今日もスイカ、全部市場で買ってもらえたぞ」
「おかえり、悟空さ。ありがてぇことだべなぁ」
市場から戻ってくるころに合わせてチチは昼食の準備をしている。すぐにでも食事を夫はねだってくるかと思ったが、想像とは違い悟空はチチに背後に隠し持っていたものを差し出してきた。
「あんれまぁ、パイナップルだべ」
「これちっこいから売り物になんなかったらしくてさ、チチ好きだったなぁって思い出してもらってきたんだ。冷やしてさオラ達で食おうぜ」
「悟天ちゃんの分は残してやらねぇとだべよ」
「いや、これそんなでっかくねぇだろ? 悟天のやつだと一個ぺろっていっちまうからさ」
悟空にしてはなんとなく言葉の歯切れが悪い。
それなりに夫婦もやっていて長いので、チチは彼のいわんとすることを察して笑う。
「おらに食わそうと思ってもってきてくれたんだべな、悟空さ」
「…へへ、まぁな。最近あっついからさ、チチさ、いつもより食う量減ってるだろ。スイカよりこっちのがいいかもなと思ってさ」
そんなに目に見えて食事量が減ったわけではないが、悟空から見ると心配になるようだ。暑いことを理由にしていたが、自分を労わらねばならないかなとチチは反省する。
「じゃあ冷やしておいておら達のおやつにするべか。でもまぁまずは、お昼にするだよ」
「おうっ」
その後甘い香りと共に元気の出そうな黄色の果実をふたりで食べたが、悟天には香りでバレてしまったのはちょっとした蛇足。が、次男としては食べ過ぎると舌が痛くなる印象が強いらしく、そんなに機嫌を損ねられなかったのは幸いだった。