徒桜の贈り物*
「大佛どこ行ったんや…」
多くの人々が行き交う遊歩道の片隅で神々廻は一人立ち尽くしていた。
桜の名所と言われているらしい公園は広い遊歩道の桜並木に加え屋台や飲食スペースなどが設けられていて、すっかり日も落ち夜へ移り変わった今も夜桜を楽しむ花見客で大変賑わっている。
何故そんな場所に来ているのか──全ては大佛の〝ある一言〟から始まった。
***
仕事を終えて帰路に就く車中、助手席の窓からぼんやりと外を眺めていた大佛が不意に「あ…」と短く声を上げた。
「神々廻さん、止めて」
「なに?トイレか?だからさっき行っとけ言うたやん」
「違うもん…見て、あそこ」
「いや脇見運転さすな」
「あそこの公園、お花見会場になってる。お花見したい」
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