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    紫蘭(シラン)

    @shiran_wx48

    短編の格納スペースです。

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    紫蘭(シラン)

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    モデルgr氏×ハウスキーパーaoちゃんの現パロです。
    人を選ぶと思うので、ご注意ください。
    他のキャラも少し出ます。

    Home Sweet Home 1話/グルアオ1.

    ――アオイ、掃除を手伝ってくれてありがと。このままじゃやっぱダメだってわかったし、うちまた頑張ってみる。


    高校生の頃、荒れ果てた部屋を友達と一緒に片付けたら、そう感謝を伝えられた。
    泣いているようにも見えるぎこちない笑顔だったけれど、あの子の顔はとてもスッキリしていて これから何があってもやっていくんだ というしっかりとした意志を感じることができたから、お掃除って人の気持ちを前向きにする特別な力があるのかもしれないと思った。


    もともと好きだったお掃除を通して人の役に立ちたい、大変な思いをしている人に寄り添いたいという気持ちから、私は大学卒業後 親の反対を押し切ってハウスキーパーの派遣会社に就職した。

    最初は掃除以外全然ダメだったけど、二ヶ月間にも渡る研修の結果、全ての家事をプロとして胸を張って提供できるレベルまで上げた。

    研修が終わってからも一ヶ月間ペパー先輩に同行して、お客様との接し方も学んできたのだから、あとは自分で頑張ってこなしていくだけ!

    両頬を叩いて気合いを入れる。

    「じゅ、準備できましたー!それじゃ行ってきます!」
    「頑張ってこいよ!あと事故んなよー」
    「アオイさんなら大丈夫だ。いつも通り取り組めばいい」
    「オー、オヌシ緊張しすぎ。スマイル、スマイル」
    「帰ってきたら、一緒にどら焼き食べようねー」

    入社時から家事技術を徹底的に叩き込んでくれたペパー先輩やサワロ先輩に続き セイジ社長と事務のネモ先輩に見送られながら、事務所を出る。
    社有車に乗り込んで深呼吸をすると、ハンドルを握りしめて目的地へと向かった。

    今日は記念すべき独り立ちの日。
    初めて自分が担当するお客様のところに行って、ハウスキーパーとしての仕事をするんだ。

    すっごく緊張しているし、正直一人でやっていけるかという不安もある。
    だけど今ここで踏ん張らないと!

    全てはお客様の快適な生活と、仕事に集中できる環境を作り上げるため。
    それがハウスキーパーの役目だから。





    「わぁ…」

    同じ五階建てなのに、自分が住むアパートとは全然違う。
    駐車場は大きいし、マンションの外観もオシャレで見た目だけでもうセレブリティを感じる。

    やっぱり住んでる場所から違うんだなー。
    家賃て月どれくらいなんだろ。

    と俗っぽいことを考えながら ぽかーんと思わず見上げてしまったけど、いけない いけない。
    ちゃんと仕事モードに切り替えないと。

    コードレス掃除機などの仕事道具一式が入った大きくて重いトートバッグのストラップ部分をぎゅっと握りしめると、業者入り口へ向かった。
    警備員さんに社員証を見せながら名乗り、そして今日お掃除をする部屋を伝えたら、会社経由で話を聞いているからとすんなり通してくれた。

    上階へ行くエレベーターに乗ると、最上階のボタンを押す。

    き、緊張してきたー。

    初めて一人でやる仕事にドキドキが止まらない。
    なんせお客様はみんな有名人。
    粗相があってはいけない。

    求人の募集要項には特に記載はなかったから勝手に一般家庭向けだと勘違いしていたけれど、私が入社した派遣会社は、有名な芸能人や特定業界で大活躍されている 一般人とは線を引く特殊なお客様を専門としている。
    だからその人達が住んでいる場所は基本一等地の大豪邸や高級マンションだし、部屋の中には当たり前のように高級品が多く並んでいる。
    前にペパー先輩と一緒に行った茶道の家元では、一つ何十万もするという花瓶が置かれていて 拭き掃除をする際あり得ないほど手が震えた。
    もしもの場合 賠償金も目が飛び出るくらいになるだろうから、仕事中は気を引き締めて取り組まないと大変なことになる。

    ああー、それを最初から知ってたらなー。

    客層が特殊だと知ったのは、入社後の導入研修時。
    募集要項では、お客様の家に行って代わりに家事や送迎だとかのお客様の生活のサポートをするとしか書かれていなかった。
    だからこそ、普通に育児や介護 仕事などさまざまな理由で忙しく 家事まで手が回らないご家庭や、家事が苦手だから外部委託を希望する人達向けの家事代行に近いサービスを提供する会社だと思って履歴書を送ったのに…。

    実はそうじゃないと知った時、だから最終面接で好きな芸能人はいるかとか、口は固いかどうかを聞いてきたんだと ようやく理解した。

    後からセイジ社長に聞いたら、私がそんな華やかな世界に全く興味がなさそうなのと、なかなか気難しいお客様が多い中 きちんとコミュニケーションを取りながら、仕事をこなしてくれそうだという印象から採用を決めたと教えてくれた。

    一見華やかだからこそ、スキャンダルなどは御法度。
    何があっても動じず、口を割らずに仕事ができる人じゃないと信用問題に関わるとのこと。
    そして相手が望む行動は何かを日々の会話などから瞬時に察知し、普段激務だからこそ 家ではゆったり寛げる環境を作り上げていくのが、ハウスキーパーの役割なのだと話されていた。

    後出しでの情報に正直戸惑ったけれど、その考えが私がしたいことに近いと思ったからこそ、今も辞めずに勤めている。


    同行での実習中、やぱり有名な人って色々あるのかなと思ったけれど、そんなのに首突っ込むと碌なことにならないだろうから、全力で見ないふりをしている。
    とにかく私はお客様が多忙なスケジュールをこなして帰宅した後、何も考えずにリラックスできるようなお家にしていかなくちゃいけない。
    それが私の仕事なのだから、全力でやっていかなくちゃ。


    今回のお客様もかなり有名なモデルさんらしいけど、普段からテレビだとか見ないから名前を聞いても全くわからなくて、資料に挟まってた写真からようやく某高級ブランドの広告によく載っている人だと認識した。
    美容室で渡されて読んでいた雑誌だけじゃなく、空港や街中の広告パネルでも見たことある。

    水色の長髪に、黄色が混じった 見る人を釘付けにする 不思議なアイスブルーの瞳が特徴的な、それはもう美しい人。
    あまりの秀美さに神話に出てくる女神様みたい…とは思ってたけど、男性だったことを今回初めて知り非常に驚いた。
    資料を見て、思わず社長に性別欄間違ってません?って問いかけたほどで。




    「あ、ここだ」

    エレベーターが止まると、歩いて指定号室の扉前まで行ってインターホンを鳴らした。
    返事はない。
    物音もしないから、留守なのかな?

    資料の方ではいつ在宅かは日によって異なるとしか書かれていなかったから、今は留守なのだろうと結論づけると、会社から受け取っている合鍵を使って中に入った。

    トートバッグから取り出した室内用スリッパに履き替え、玄関からリビングに繋がる扉を開けると、よく言えばシンプル 悪く言えば質素な部屋が目に入った。
    空気の入れ替えをするために他の部屋も見てきたけれど、なんだか物が少な過ぎて生活感がまるでなかった。
    …ここ、本当に住んでいるのかな?
    セカンドハウスとかじゃなくて?

    妙な違和感に胸騒ぎを覚えつつも、とりあえず自分の仕事に取り組むことにした。
    時間は限られているからテキパキやっていかないと!


    契約内容としては家事全般と毎食分の料理を作ること。
    だから掃除・洗濯・料理を中心に行い、あとはお客様の要望に合わせて順次取り組んでいくしかない。

    冷蔵庫の中身を確認すれば水ぐらいしか入ってなかったけれど、独身の芸能人だとよくあることだから後で買い物に行かなくちゃ。
    特にアレルギーはないって聞いてるから、いろんな種類のご飯を作ってみて そこからどれが好みか探っていこう。

    「よーっし、始めるぞー」

    一人で行う仕事に気合を入れると、まずは洗濯機を回すためにランドリールームに向かうとそれはそれは広くて、洗濯から乾燥を一気に行える最新のドラム式洗濯機が設置されていたり、室内干しやアイロンがけができるスペースがあったりと大変素晴らしかった。
    やっぱり設備が整っているのはいいなあ。
    さらにキッチン含めて家事動線を意識した間取りだから、各部屋を行ったり来たりと動き回らずに済むから楽そうだ。

    鼻歌混じりで乱雑にラックの中に入っていた服を色物と白物 そしてクリーニングに出すものとの選別を行なっていく。

    「あ」

    中には下着もあったけれど、あまり見ないようにして色物衣服の中に紛れさせた。
    仕事でしていることだから、恥ずかしがっている場合じゃない。

    先に色物を洗濯機の中に入れてスイッチを押すと、それが終わるまで掃除をしようと掃除機を取りにリビングに戻ろうとした その時だった。

    「あんた、ここで何してんの」

    振り向くと、女性かと見間違うほど美しい人がランドリールームの入り口で寄りかかるように立っていた。
    水色の長髪などの様々な特徴から、この部屋の主のグルーシャ様だろう。

    急いでポロシャツの胸ポケットから名刺を取り出すと、今まで練習してきた通りの笑顔で名乗る。

    「いつもお世話になっております。
    株式会社パモパモホームから派遣されましたハウスキーパーのアオイです!
    今日からグルーシャ様の担当になりましたので、よろしくお願いします」

    よし、噛まずに言えた!
    先輩達から仕事中にお客様が帰ってきたらまずは笑顔でご挨拶 と教わったから、早速その教えに従った。
    これまでの実習中もこれを行なったら お客様からいつもありがとうと微笑んでくださっていたけれど、目の前の美しい人の眉は中央に寄せたまま 怪訝そうな顔で見下ろしている。

    「は?ぼくはそんなの頼んでないけど」

    ん?頼んでない…?

    「え、いや…そんなはずないですよ。
    だって契約書のコピーもありますし」

    トートバッグ内にある仕事用タブレットに保存されている契約内容のコピーを取りにいこうと立ち上がったけれど、彼によって入口で通せんぼうされる。
    そして冷ややかな目で見られて、思わず体がこわばってしまった。

    「自分から帰るか、警察に連れられて出ていくか、五分以内にどっちか選んでよ。
    選べないなら、すぐ警察呼ぶから」
    「けけけ警察!?ちょっと待ってください!」

    とんでもない選択肢に慌てるけれど、こっちの話もちゃんと聞かないで出て行かせようとするのは酷くないですか!?
    いくらお客様でもそんな横暴は許せないし、負けてられない!

    「私を不審者だと思われるんでしたら、まずあなたの社長に電話してください!
    オモダカ様から依頼を受けているんです。
    その確認をされるまで、私ここから一歩も動きませんから!」

    その場に座り込んで抗議すると、目の前の人物が舌打ちしながらポケットからスマートフォンを取り出して操作をすると耳元に当て始める。
    人に向かって舌打ちとか有り得ない…!

    「アオキさん?オモダカさんはそこにいる?いるなら代わってよ。

    …ぼく、ハウスキーパーを雇ってほしいだとか言ってませんけど、なんで勝手に契約とかしてるんですか?」

    想像もしていなかった展開に衝撃を受けている間に相手に繋がったようで、彼は言葉尻に苛立ちを隠さないまま静かに話し始めた。
    電話口からの声は聞こえないけど、だんだんグルーシャ様の声が大きくなってきたからオモダカ様…彼が所属する芸能事務所の社長と揉めているんだろうなと察した。
    とにかく彼は私がここにいることが気に入らないみたいで、なんとか追い出そうと必死だったけれど、最終的には深い深いため息を漏らすと電話を切った。

    そして眉間に皺を寄せながら私を見下ろす。

    「確認は取れたしあんたが嘘言ってないことわかったけど、適当に仕事を終わらせたらさっさと帰って。
    他人が作った料理も食べたくないから作らなくていい」

    そう吐き捨てると私に対する興味も無くなったのか、どこかの部屋に入っていき 鍵を閉められた。


    少しの間ランドリールーム内で一瞬呆然としていたけれど、気を取り直して立ち上がる。
    今洗濯中だから、彼が籠る部屋以外のところの掃除と食材の買い出しに行かなくちゃ。

    再度頭の中でこれからの段取りを立てていくけれど、心の中では彼の発言にふつふつとした怒りを感じていた。


    適当に仕事したら帰ってだなんて、ふざけないでほしい。
    私は責任とプライドを持ったプロとしてこの仕事に取り組んでいるのだから、手抜きとか絶対にしない。

    でもいくらそう伝えても、あの態度だとまともに取り合ってはくれないだろう。
    契約内容通り 家事だとかを効率よくこなしていくことも大事だけど、まずはグルーシャ様からの信頼を勝ち取らなきゃ。
    お客様との信頼関係があってこそ、私達ハウスキーパーは全力で働くことができるのだとサワロ先輩が言っていたのを思い出す。

    「…よし、頑張ろう!」

    初めての私のお客様だから、あの人にとって快適な環境を提供したい。
    頬を軽く叩いて気合いを入れると、リビングに向かい掃除機を組み立てるとスイッチを押した。


    続く
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    chikiho_s

    PASTTwitterに上げたバレンタインとホワイトデーの連作。
    プレゼントは死ぬほど貰うけど、自分からあげるなんて無いだろうから悩み悶えていればいい
    ココアの件はフォロワーさんのリクエストで。グランブルマウンテン(砂糖たんまり)でもいいね。可愛いね。

    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19706108
    氷の貴公子とチョコレイト今年もこの日がやってきた。一年の中でも憂鬱な日。バレンタインだ。

    ジムの建物内を埋め尽くす勢いでチョコレートやプレゼントが届く。言うまでもなく全部ぼく宛て。わざわざ雪山の山頂にあるジムまで届けにやってくる人もいる。多分明日は本部に届けられた分がやってくる。正直、意味がわからない。
    この日だけ特別に一階のエントランスに設置されるプレゼントボックスは何度回収しても溢れていて、業務に支障が出るレベル。下手にぼくが表に出ようものならパニックが起きて大惨事になるから、貰ったチョコレートを消費しながら上のフロアにある自室に篭もる。ほとぼりが冷めたらプレゼントの山を仕分けして、日持ちしない物から皆で頂いて、残りは皆で手分けして持ち帰る。それでも裁ききれないからポケモン達に食べさせたり、建物の裏にある箱を冷蔵庫代わりにして保管する。これは雪山の小さな特権。
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