マルコ死亡を伝えに行くジャンまだ訓練兵だったころ、
あいつは「ぼくになにかあったら彼女に知らせてほしい。ジャンを頼るように言ってあるから」と言っていた。
そんな日は来ないと思っていた。
マルコの幼馴染の家に迷わずにこれたのも
出てきた女の子がマルコの幼馴染の女の子だということも
弱視で目が見えないことも
知っている。
オレたちはお互いにマルコから話を聞いていた。
会ったことはないけどお互いを知っていた。
だから、すぐにわかった。
自分の説明はそれほどいらなかった。
だけど、何をしに来たかそれを彼女に伝えることを躊躇した。
なんていえばいい?
大事な子だと言っていた。
いつも一緒にいることが当たり前だったと。
言葉にしなくても悩んでるのか悲しんでるのかがわかるのだと。
そんな相手になんて、言えばいい?
「………」
焦点の合わない不安げな顔がオレを見ている。
突然家に来たのがマルコでなくてなぜオレなのか?
見えない目で何かを感じ取っているのかもしれない。
正直言いたくない。
だけど、あいつから頼まれている。
誰よりも、親よりも一番に伝えてほしいと。
ちくしょう。言うんだ。言えよ!はやく!さぁ。
言わなきゃならない。
「マルコは…」と、彼女が先に声を発した。
その続きを言わせるのか?
あいつの大事な幼馴染にそれを言わせるのか?
違うだろ。
グッとこぶしを握って勇気をかき集めて、口にした。
「マルコは、死んだ」と。
口にしてから、自分に嫌気がさした
オレは馬鹿か?もっと伝え方ってもんがあるだろう!
調査兵団の上の人なら、エルヴィン団長なら、リヴァイ兵長なら…、
もっとうまく伝えられたかもしれない。
だけど、これしか知らない。
ほかにどういえばいいかわからない。
「巨人に…喰われたと聞いてる」
灰色の瞳が揺れた。
目をそらしたかった。
だけど、それはできない。
炎の中にある骨の燃えカスが逃げ出すことを許してくれない。
「知らせてくれて、あり…が…っ、」
言葉が切れて灰色の瞳に涙が溜まった。
泣いてしまう。
そう思ったら、自然と手が伸びて彼女を抱きしめていた。
そっと、壊れないように。