信頼は表裏一体U12国内最後の練習試合は、点の動かなさとは裏腹に、各選手の心境に大きな影響を落とすものだった。
格上相手を当然のように抑えたエースピッチャーに対し、ある人は球威の凄さに圧倒され、ある人はそのコントロールの正確さに魅了され、またある人は安定した守備に魅了され。とにかく鮮烈だったのだ。綾瀬川次郎という才能は。
無邪気な笑みを湛えながらアウトを積み重ねていく様は、これまで巴円と雛桃吾が見ていた世界を、すべて過去のものにしてしまった。
一巡目をストレートだけで打ち取り、二順目は解禁した変化球を織り混ぜながら、打者を塁に出さずアウトだけを積み重ねていく。コントロールも精密で、捕る前に桃吾のミットが動くことはなく、打ちにくい低めに球が集められていた。
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