「日本代表」の四文字を背負って、正捕手として尽力し、世界大会で優勝する。それが実現したのにこんなに嬉しくないなんて、デジチャレを受ける前の桃吾は考えてもいなかった。
U12優勝の立役者として華々しく語られるのは突如現れたピッチャーだけで、他の代表選手についてはその他一同扱いだ。たまに、綾瀬川の球を落とさず捕りきった桃吾のことにだけさらっと個別に触れられることはあるが、他の代表選手についてはほぼ語られずという異様な状況。それだけ鮮烈な才能が荒らしていったU12で、桃吾の夢が叶う隙は一切なかった。
そして、単に夢が叶わなかっただけではなく。
『綾瀬川の球速は、U12の枠組みで捕れる捕手はまずいない。同じ年に雛桃吾という捕手がいたことで、彼の投球が世界に届いたのだ』
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