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    五七の七夕(2021年)

    #五七
    Gonana

    七夕の話「「あ、」」


    マンションのエントランスで鉢合わせた僕達は、互いの手にあるモノを見て同時に間抜けた声を上げたのだった。

    ◆ ◆ ◆

    「いや、まさか七海が買ってくるとは思わなかったよ」

    「…たまには良いでしょう」


    不貞腐れたようにビールを呷った七海が流した視線を追いかけて、僕も林檎ジュースを口に含んだ。
    僕等の視線の先、ベランダにあるのは笹。
    そう、今日は七夕なのだ。

    七海ん家に帰る途中、通りがかった花屋に売られていた、子供騙しの細っこい笹。
    それを買ったのはただの気まぐれだったけど、まさか七海まで同じ店で同じ物を買ってくるとは予想外だった。


    「それじゃさ、アレももらった?短冊」

    「ええ、もらいましたよ」


    テーブルの端っこにあった雑誌の下から取り出した二枚の短冊を見せて、七海は「アナタは?」と首を傾げる。
    うっ、カワイイ。


    「勿論、もらったよ。色も一緒」


    僕もシャツの胸ポケットからソレを出して、七海に見せる。
    青と黄色、二枚の短冊。
    と、なれば。


    「書いちゃう?お願い事」

    「…アナタ、幾つですか。まさか本当に星が願いを叶えてくれる、とでも?」

    「えーっ、じゃあ書かないの?」

    「書きますけど」

    「書くんじゃん」


    珍しくほろ酔いでご機嫌なのか、七海のノリが良い。
    二人してペンを手に取り、僕が青、七海が黄色の短冊を取って、いざ書かんお願い事。


    「うーん、何にしよう。七海、なんて書くの?」

    「くたばれ時間外労働」

    「わぁ、過激。そんじゃ僕は、この世の全てのスイーツが僕に貢がれますように、っと」


    酔っ払いと悪ノリの過ぎた短冊の出来上がり。
    こんな願い事される彦星と織姫、カワイソウ。
    ま、君達の代わりに僕と七海が存分にいちゃついておくから、許してね。

    二人してベランダに出て短冊を飾り、妙な達成感に満足して。
    それから七海の肩を抱いて、部屋に戻った。
    勿論、彦星と織姫の代わりにいちゃつく為に。


    ◆ ◆ ◆


    夜中、ふと目が覚めた。
    時刻を確認すると、まだ三時前。
    起きるにはまだまだ早すぎる時刻だ。


    「…喉、渇いたな」


    隣でグッスリ眠っている七海を起こさないよう気を付けながら、ベッドから下りる。
    流石に素っ裸だとアレなんで、床に散らばっていたパンツだけは身に着ける。
    因みに七海は割と平気で素っ裸でうろつく。
    オマエは裸族か。
    良いぞもっとやれ、ただし僕の前でだけな。

    そんなどうでも良い事を考えつつ、キッチンへ向かう。
    冷蔵庫から冷えた葡萄ジュースを取り出し、グラスに注いで一気に呷った。
    あーっめっちゃ美味い、生き返った。

    さて、朝までまだ時間もあるし、七海と一緒に寝ようと寝室に戻りかけて、ふと気が付いた。
    リビングのテーブルの上、余った短冊に。


    「…そうだ、」


    脳裏を過った考えに一人頷いて、ペンを取る。
    そして短冊に手を伸ばして───


    「……あれ、青がないな」


    もらった短冊は僕と七海で二枚ずつ、同じく青と黄色の組み合わせだった。
    さっき書いたのは僕が青、七海が黄色。
    だからここには二枚、やはり青と黄色の短冊が残ってる筈なのに、何故かあるのは黄色だけ。


    「…ま、良いか」


    僕は最初から黄色を使うつもりだったし、ちょうど良い。
    ペンを取って、さらさらと短冊に字を滑らせて…よし、書けた。
    さっきは気恥ずかしくて書けなかった、本当の願い事。


    【七海が幸せでありますように】


    僕がこの世で唯一愛する大切な七海ヒトが、どうか幸せな未来を歩めますように。
    流石に本人の前じゃ書けなかった、僕の願い。

    書き上がった短冊を手に、再度ベランダへ。
    万が一にも七海に見つかったら恥ずかしい、なるべく目立たないところに吊るそう。

    笹は僕と七海がそれぞれ買ったものを、根元でまとめて紐で結びボリューム感を出している。
    これなら下の方、後ろ側へ吊るせば気付かれないだろう。

    しゃがみこみ、下方へ短冊を吊るそうと手を伸ばした先、既に何かがある事に気が付いた。
    何気なく手を伸ばしたソレは、青くて───


    「…… アイツ…!」


    それは短冊だった。
    さっき、無いと思った青い短冊。
    勿論僕が書いたモノではない。
    となれば、これを吊るしたのは一人しかいないワケで。


    「…何だよ、先越されちゃったな」


    自分の黄色い短冊を吊るしてから、その青い短冊には何が書かれているんだろうと、悪気なくピラリとひっくり返してみた。
    そこには───


    「……っ」


    思わず息を呑む。
    僕に内緒で紡がれたその願いに胸が、心がじんわりと温かくなって───益々七海を愛しく想った。
    離したくないと、そう思った。


    「……さ、僕も寝るかな」


    ああ、早くベッドに戻って、七海を思いきり抱き締めたい。
    七海の温もりを全身で感じたい。

    ねえ、七海。
    オマエのその願いはさ、オマエが傍にいてくれなきゃ叶えられないんだよ。
    だからさ、これからもずっと。


    「…僕と、一緒にいて」


    呟いた声は空気に溶けて、星空へと昇る。
    部屋に入り、窓を閉めて、僕は足早に七海の眠るベッドへと戻った。
    まだ肌寒い風が僕達の願いを乗せた短冊を揺らし、天へと届けてくれる事を信じて。


    【五条さんがずっと笑顔でいられますように】


    ◆ 了 ◆
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    yu_kalino

    DONE2021-02-27 五七版ドロライ お題「喧嘩」パンッ、と小気味の良い音が余韻を残すような静寂。
     それとは裏腹に張り詰めた緊張感が二人の間にあった。

     七海がよく口にする「引っ叩きますよ」はあくまでポーズのつもりであった。
     五条にとって威嚇にも牽制にもならないそれは、謂わば気に食わない、不愉快であると言ったような感情を七海が彼に対して伝える手段でもある。
     恋人相手に手を上げるような野蛮な行為をするつもりはない。しかし、他人の機敏を無視しがちな男相手には、そのくらいの言葉の強さで丁度よいと考えていた。誰よりも強い男は、七海の知る誰よりも面倒くさい性格をしていた。
     
     実際に今の今まで五条は七海に手をあげられたことなど無かった。仕事で少し無理なお願い(無論、七海にならできるという信頼があってのことだ)をしても、ベッドで多少の無茶をしようとも、舌打ちや少し棘のある言葉で五条は許されてきた。
     七海が繰り返すその言葉は、つい加減が効かない己に対するブレーキであるとは理解している。それなのに、ついいつも許してくれるからと調子に乗ってしまったのだ。
    「──ゴメ、」
    「殴ってすみません。頭を冷やしてきます」
     言葉を遮って五条の下から抜 1385

    ケイト

    DONE同名の曲の雰囲気が自分の思う五七すぎて書きなぐったまとまりのない完全に自己満足の短文です。
    五七は静かな激情を湛えているふたりだなと感じていて。ふたりとも大人で聡明な人物だから自分たちの状況も行く末も見えていて、その上でお互いを慈しみながら今を過ごしていたのかなって思って。でもそうやって悔いのないように過ごしてきたつもりでもやっぱりそのときが来ると苦しいだろうなあ。
    五七に狂わされる毎日です。
    三文小説海風が気持ちいい。隣を見ると以前より少しくすんだ金髪の男が、風で乱れた前髪を整えている。
    「あ〜優秀な後進をたくさん育てておいてよかったなあ。優秀な元生徒たちのおかげで心置きなく毎日ダラダラできるってもんだよ。きっと最強じゃなくなった僕のことなんかみんな忘れちゃってるね。」
    「あなたもおじさんになりましたもんね。」
    虎杖くんたちに会っても気づいてもらえないかもしれませんね、と七海が笑っている。
    「ひどーい!そんなことないでしょ!だって髪の色は生まれたときからずっと白で変わんないでしょ?イケメンなのもずっとだし?年とっても一発でGLGな五条悟だって分かるでしょ!」
    「そうでしたね。あなたはいつまでたっても子どもですもんね。きっと気づいてもらえますよ。」
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