体に多少の疲労を感じつつ欠伸を漏らしながら家のドアにカードキーを翳し開錠し中に入れば、どこか違和感を感じた。嫌な予感がする。
この部屋から出ろと叫ぶ本能を抑えつけ、玄関で靴を脱ぎ慎重な足取りで廊下を進んだ俺はリビングの扉に手を掛け…詰めていた息を吐き扉を開けた。
「帰ったか、ホワイト」
リビングのソファに悠々と足を組んで座っていた吐きそうなほど大嫌いな養い親。
「チッ!」
やっぱり入るべきじゃなかった!
踵を返し玄関に行けばハッシュヴァルトが扉の前に立っていた。立ち止まって睨んでも静かな顔で立つ相手に苛立つ。コイツにいつも阻まれてアレに捕まる。
「退け」
「まだ陛下の話を聞いていないだろう」
「聞く気はねえ」
「酷いな。私は久しぶりの出会いに感動しているというのに」
その声と共に後ろから腕が伸び、体に巻き付くソレに身体の自由が一気に消え失せた気がした。
「な、にが感動だよ…住居侵入しやがって。帰れよ」
喉がカラカラで声が出しにくい…視界がブレる。抵抗したいのに体に重石を付けられたように動かない。嫌だ…また、見えない鎖に繋がれる…。
「私の元に帰ってきても良いほど自由にさせていただろう?そう思い私が直々にお前を迎えに来たのだ」
「ハッ…誰が、頼んだよ…」
『私は、私がお前を引き取りたかった』
ああ、アンタに引き取られてたなら少しの枷があったとしても自由があったんだろうな。
「帰るぞ、我が息子よ」
ああ、心が冷えていく。
一護や無月、斬月サンたちのおかげで日々が楽しくて、忘れられていた…忘れたかった『期限』から目を逸らしていたのに。
アア、人形ニ戻リタクネエナ。