どくせん「ルメリ?」
「あ?なんだ?」
疑問符を浮かべたようなエメリの表情にルメリは答えた
ルメリと言う人物は非常に言い表しがたい。
エメリの同一人物と言えばそうなるのだが、ルメリ本人がそれを酷く嫌っている、とでも言うのだろうか。しかし実際エメリの負の感情を何倍にも膨れ上がらせて生まれた存在がルメリなのは事実だ。
まぁ端的に言えば鏡合わせのドッペルゲンガーだと思って欲しい。
「首に虫刺されがあるっぽいんだけど、大丈夫?薬貸そっか?」
そう言われた気遣いの言葉は、ザイトゥン桃の様に赤くなったルメリの顔に溶けた。
首に虫刺され、人に言われるまで気づかない、痒くない。
これらの特徴をまとめたら、思い当たる人は思い当たるのではないだろうか。
単刀直入に言うと、キスマークなのだが、ルメリはとある人と深い関係を持っている。
◇◇◇
「っ………ふっ…うぅ…」
「んっ…………っぷはっ……、肩に噛み痕付いちゃったね。ルメリちゃん、」
悦び、その人物の表情を表すならその一言で充分だった
彼女は瑞、璃月に住んでおり、今はエメリ達と一緒に冒険をしている。深刻な過去を持っている様子だが、詳しくは彼女の笑顔の中に溶け込んでいる。
深い関係と言われたらセフレや恋人を思い浮かぶだろうが、この関係に名がない。
複雑な関係なのだ、水と油が分離する様に、この2人は全く逆の性格、観点、価値観を持っている。
何故関係を持っているのかは本人達にもよく分かっていない、週間になってきているのだ。1つの週間に名を付ける必要はない。
「これ、何日痕付くんだ…?」
「わかんないけど、これで当分私のモノって分かるようになったね。」
「……舐めるなってばか…」
ぺろ…と噛み痕を舐めると、その痕からはぴりりと痛い感覚がした。とんとんと背中を叩いて抵抗するも、力があまりないルメリはそれも虚しい抵抗となって消えた。
「ルメリちゃん、抵抗してて可愛いね、」
ちゅ、ちゅと顔にキスを施す
その蕩けそうな甘いキスに思わず絆されそうになる
「やっ、ちょ、キスするのやめろって、ぃあっ…?!」
ぢゅ、と可愛くない音が響く。
ぴくっと体を動かすルメリに対して、瑞は貪る様にルメリの体にキスマークを付けている
っぷ、と卑猥な音が鳴ったと同時に、ぁっ、とルメリの声が響いた
「キスマークで感じるようになっちゃったの?凄いね、いいこだね。」
肩で息をしているルメリの頭を優しく撫でる。その包容力に思わずうっとりしてしまいそうだった。
「っはぁ………っはぁ…っやりすぎだこのバカ、アホ!!」
ぽかっと瑞の頭にチョップを入れた音がした。
「いてっ、…ごめんね、ルメリちゃんの反応がつい可愛くて……駄目だった?」
こういう事を言ってくるから駄目なんだ、この女は。押しに非常に弱いルメリはそう感じた
「…ない…。」
「ん?」
「だ、だめじゃないっていってるだろ…。」
ボソボソとよそを向いて話すルメリに、瑞は微笑んだ。
「そっか、良かった。」
その表情は、独占欲そのものだ。
◇◇◇
「あぁ、だ、大丈夫だ。痒くないから心配要らない。」
「そう?それなら良いんだけど!痒くなったら言ってね!」
この純粋な笑顔が後ろめたさを掻き立てる。この齢15の少女にキスマークですと教えてもまた疑問符を浮かべるだけだろう、とルメリは思った。
「エメリちゃん、」
コツコツと歩いている音がする。
「あ!!瑞ちゃん!」
パタパタと瑞の元にエメリが駆け寄る。何か話しているようだった、表情が豊か過ぎるエメリはその表情だけで何か分かってしまいそうな位コロコロ喜怒哀楽を変えていく。
一通り話終わったのか、1人になっていたルメリの所に瑞が駆け寄る
「_ねぇ、ここに付いてるよ、ルメリちゃん?」
トントンと首のキスマークに指を置く、微笑んでいるが、その表現は間違っているのかもしれない。
心の奥深くにどこか独占の心があるからだ。
「…誰のせいだと…」
真っ赤になったルメリが瑞を睨んだ。
今日も天気は晴れ、良い一日になりそうだが、ルメリはそうは思わなかった。