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    かりゅ

    @k_is0816

    思いついたけど長文書くほどの頭がなかったやつをぽいぽい投げてます。ゆる〜〜く更新予定

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    かりゅ

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    和解後モダ期。

    友人にリクエストもらって書きました。

    イサ未満の一郎と左馬刻ですが作者がイサのつもりで書いたのでイサです。

    #ヒ腐マイ
    hypmic bl
    #ヒ腐マイ小説
    hifutsuMaiNovel
    #一左馬
    ichizuma

    今は、これで。気まずい。

    人と食事をするのってこんなに色々気にして食べてたっけ、と思う。

    あんなに気軽に毎日のように連れられて外食していたのが嘘のようで、あの時の俺達はどんな風に楽しんで食事をしていたのだろう。

    「…食わねぇのか。」
    「あ、いや…食う。何食べようか迷って…」

    全然嘘だった。

    左馬刻と和解した。誤解が解かれて抱えていた齟齬を取り除いたらお互いを憎む理由は一応無くなって。いがみ合わなくて済むようになった。でもそれでも、はいそうですかなんて昔の様にはなれないし、俺も…きっと左馬刻も昔のような関係に戻る事は望んでいないだろう。望んでいないけれど、今のままの関係を望むかと言えばそれもまた違って。飯でも行って近況報告するくらいの仲にはなりたいと俺は思っている。

    だけど、俺から飯を誘うのはなんだか癪だし断られたらムカつくしと機会の無いまましばらくそんな時はやって来ないのだろうなと思い始めていた頃。シンジュクで寂雷さんの依頼を受けた俺と、怪我の経過を見せに来た左馬刻が鉢合わせた。

    左馬刻は俺の存在を認めると数秒難しい顔をしてじっと俺を見ては口を開こうとしたが言葉が続く事はなく。またその数秒あとに

    「あー………先生んとこ終わったら暇かよ。」

    飯行くぞ。と視線を合わせずに言った。
    記憶の中にある飯の誘われ方とだいぶ違ったのもあり驚いてポカンとしたが、むず痒くありながらも嬉しい事は事実だったので了承した。そう、了承してしまったのだ。

    思えばあの誘われた時は自分でも気付かない程度に浮かれていたのだ。実際飯の席に着いたとき、どんな空気になるのかも考えないくらいには。あの瞬間の俺に言いたい、いきなりサシはやめておけ、と。

    寂雷さんは仕事中で無理でも、乱数はワンチャン暇だったかもしれないしDRBを経て増えた交流の中で暇な奴がもしかしたら居たかもしれないのに。

    そして今である。
    何か食いたいもんあるかよ、とぶっきらぼうに聞かれ俺と左馬刻と言えば焼肉しか思い付かなくて焼肉に来たのだが基本焼肉屋は仕切りが軽くだとしてもされている店が多い。その少し閉鎖的な空間が余計に気まずさを加速させる。いやほんとになんでサシで来たんだろう。

    腹は確かに減っているはずなのに、気まずさと変に緊張して全然メニューを見ても食べたい肉が思いつかない。せっかくの食べ放題が勿体無いこのままじゃ。

    「左馬刻は……何食べるんだよ。」
    「あ?………タンと、何か適当にお前が頼んだもんつまむわ。」

    そうだった。この人鍛えてるくせにあんまり食べないんだよな。昔それを言ったらお前が食い過ぎなだけだろって笑われたっけ。

    よく食うよな、って楽しそうにしてる左馬刻さんの顔が好きで。世話になってる左馬刻さんに何か返したくて、でもお前が美味そうに飯食ってくれりゃあそれでいいんだわなんて言われて。当時はそれが不満で。でも今なら少し分かる気がする。

    一緒にいる人が楽しそうにご飯を食べている光景は気持ちが良い。当時、俺が左馬刻さんにとってそんな存在になれていたのなら誇らしいと思う。…もう、そんな機会もないだろうけど。

    「あー……じゃあ、ハラミとカルビとサーロインとヒレと…」

    きっといつまでも迷っていても、左馬刻の機嫌がどんどん悪くなるだろうし頼んで口に入れれば美味い肉はきっと美味い。お腹が空いているのは事実としてあるしな。

    「………相変わらずよく食う野郎だな。」
    「食べ放題なんだから、沢山食べねぇと勿体無いじゃねぇか。」

    言われてる事は昔とそんなに変わらないというのに、笑わない表情と楽しくなさそうな素振りに少し寂しさを感じる。左馬刻が誘ってきたんじゃねぇのかよ。

    やっぱり、いくらお互いの根っこが変わっていない事を知っても関係性が変わってしまえば変わってしまうもんもあるのか。左馬刻は変わってなくても、俺に対する思いが変わったのは事実だろう。なんで飯に誘われたのかは分からないが、もう自分を慕わない年下の男に見せる柔らかい顔はないのだろう。

    「………今からでも誰か誘うか?」
    「は?」
    「いや……俺とサシってのも、なんかアレだろ。都合つけばMTCの人とかそれこそ乱数とか……」
    「要らねぇわ。」
    「……え、でもよ。」
    「しつけぇな。俺様は静かに飯が食いたいんだよ。銃兎も乱数もうるさくて敵わねぇわ、理鶯は今日忙しいしよ。」

    それだけ口にして、丁度そのタイミングで届いたタンを黙って焼き始めた。脂で汗をかいていくタンは食欲をそそる。

    「……今日、なんで俺を飯に誘ったんだ?」
    「あ?…………飯食いたい以外に理由あんのかよ。」
    「いや、…別に俺を誘う必要は無かっただろ?」

    その言葉に眉間に皺を寄せ左馬刻が俺を睨む。その返答は貰えないまま、また一枚肉が網の上に乗せられる。

    「てめぇの肉も来たぞ。ちゃっちゃと焼けや。」
    「あ…おう。」

    何か癇に障る言葉を発しただろうか。昔は色んな話をしてくれたけれど、今は最低限の会話すら繋げるのは困難だ。

    ハラミを一枚網に乗せる。牛肉だから両面色が変わればすぐ網から引き上げて昔から食べている。噛みごたえもあるし何だかしっかり焼けるのを待っているのも落ち着かなくて。

    焼肉食べ放題に来るのは随分久々なのに、当たり前のように今回もそうして肉を引き上げタレをつけて白米にバウンドさせる。

    あ、美味そう。

    「いただきます。……ん、うめ。」

    タレと牛肉と白米と。味も匂いも全てが刺激してきて急激に腹が肉を欲した。やっぱり食べ始めれば欲求は湧く。

    「ふっ」

    そんな息の音に視線を肉から上にあげれば、あの頃と同じ左馬刻の表情が目の前にあって動揺して大して噛みもせずに肉を飲みこんでしまった。

    「それだわ。」
    「ゲホッ、ごほっ…え、なにが。」
    「一郎が、いま世界で一番幸せですみてぇな顔で食ってるのを見ながら飯を食いたくて呼んだ。」

    幸せそうに食うもんな、お前。なんて本当に可愛いよなお前なんて言われていた頃と同じ表情で同じ楽しそうな顔で言われてしまって、心臓が馬鹿みたいな音を立てて動き始める。

    「そ…れが、理由?」
    「おう、…てめぇがいつまで経っても注文しねぇからやっぱり早計だったかと思ってクソ気まずかったけどよ。良かったわ。」

    そう言いながら俺が焼いたカルビをひょいっと一枚食べる。何だよ、それ。なんなんだよ…それ。

    「………おれ、も。」
    「ん?」
    「左馬刻と………飯、行きたいと思ってたから。今日来れて良かった。」

    少しびっくりした様な顔で左馬刻が俺を見る。なんだ、俺達考えていた事はほとんど一緒だったのか。

    「なぁ、左馬刻。」
    「何だよ。」
    「…………今度、ヨコハマでおすすめの店教えてくれよ。」

    何かを考える様に少し黙った左馬刻は、てめぇが誰か誘うかなんてクソ寒い事言わねぇならな。と俺の一番大好きな顔で笑ってくれた。

    うん、もう言わねぇよ。だって俺も左馬刻の楽しそうな表情見ながら食べる食事が昔から一番好きだからな。

    絶対言わねぇけど。今は、まだ。

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    うめこ

    TIRED【小説】2ndバトル前、和解前さまいち②思わずそんな言葉が出たが、詰ったところで一郎はこの有様だ。
     仕方なく濡れたタオルで身体を拭いてやると、腕や手のひらのあちこちに小さな擦り傷や切り傷、それに腹には小さな打撲痕があった。
     幸いにも大きな怪我はなかったが、心なしか頬がこけているように見えるし、唇も随分カサついている。どうやら長い間まともに栄養を摂っていなかったらしい。医者ではない左馬刻にすら一目で分かるほど、一郎の状態は散々だった。
     何か食べ物を取らせなければいけないのだが、当の一郎は未だ眠ったままだ。

    「一郎、オイ、起きろ」

     ペチペチと軽く頬を叩いてみても、一郎は苦しそうに荒く呼吸を繰り返すばかりで固く閉じられた瞼はピクリとも動かなかった。

    「ったく、ふざけんじゃねぇぞ」

     怒りというよりも愚痴るようにそう零すと、汗で濡れた額に張り付く黒髪をおもむろに掻き上げた。
     髪の生え際を指の腹でなぞりながら、観察するように一郎の顔をじっと眺める。TDDが解散して以降、一郎が左馬刻に見せるのはありったけの嫌悪を剥き出しにした怒りの表情ばかりだ。
     だから、こうして眉を寄せていない一郎の顔をじっくりと見るのは随分と久し 5640