Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    subaccount3210

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 121

    subaccount3210

    ☆quiet follow

    「紅葉」 「彼岸花」 「徒競走」
    先月の更に続きです。
    ざっくり言うと「けけがあきとくんへの片想いを拗らせて夢の中で少年に戻って逃避してたところをあきとくんが迎えに来て無事に両想いになった」その後です。

    ##K暁

    どうせ山の怪異を調査するなら紅葉狩りに行こう!ということになった。
    「いいけど、何で直接の調査は僕たちだけだったの?」
    すっかり山ガールの装いの麻里と絵里佳にスカートではないがよそゆきの服装の凛子と違って暁人とKKはいつものタクティカルジャケットだ。
    「この辺の遊歩道はいいが、昔から山の神様は女でな。 同じ女が入ると怒ると言われてんだ」
    「あーだからお爺さんは山へ芝刈りにお婆さんは川へ洗濯になんだ」
    「そういうこった。 それに女は虫がキモいだなんだうるせえだろ」
    男性にも虫嫌いはいると思ったが暁人は黙っておいた。少なくとも麻里が蛾程度で大騒ぎするのは事実だ。暁人も正直、巨大蜘蛛は気持ち悪いと思っていたが。
    結局怪異は妖怪の仕業だったので男二人は野山を駆け回り、女三人は車で位置情報の連絡係だった。因みにエドとデイルは留守番である。
    人が嫌だったのか虫が嫌だったのか定かではないが
    「お土産買って帰ろうよ。 途中に道の駅あったよね」
    KKが無言で手をヒラヒラと動かす。了承の印だ。ついでに山菜なども買って帰りたいなと思いながら暁人は空を見上げた。
    「晴れで良かったね」
    怪異のことを微塵も知らない普通の人たちも遊歩道を散策している。数年前までは暁人もそちら側だった。
    「場所によっては運動会とかやってるのかな」
    「さあな……オレは見に行ったことがねえからな」
    「KKが子どもの時の話をしてるんだけど」
    若干不貞腐れかけていたKKが途端に表情を変える。これは照れてる顔だな、と暁人は判断した。
    「昔の話はいいだろ」
    「僕にとっては最近なんだけど」
    先月、暁人への恋心を自分の胸の内に封じ込めようとしたKKは直近の怪異の影響も受けてやり過ぎてしまい、自らを昏睡状態に陥れてしまった。
    防衛反応のようなもの、とはエドの言葉で詳しくない暁人はエドがそういうならそうなのだろうと納得した。
    精神と記憶を子どもの状態で安定させていたものの、結局暁人たちに介入されて殻を破られてしまった。最後に起きる決心をしたのはKK自身だが。
    そして今、KKは暁人と二人、女性陣からは距離を取ってのんびりと歩いている。つまりはそういうことだ。
    「徒競走一番でリレーの選手っぽかったもん」
    「オレより速いヤツもいたぞ」
    暁人はどうだったのだろうとKKは考える。運動神経は悪くないし穏やかに見えて負けん気も強い。ついでに顔もいいのでモテただろう。野生児扱いの自分と違って。
    「今勝負してみる?」
    「断る。 つーかさっきまで走ってただろ」
    「グラップル使ってただろ」
    だとしてもこれ以上全速力で走る元気はKKにはない。むしろ今すぐ帰って風呂に入ってビールを飲んで寝たい。
    若い暁人は前方にいる麻里たちに手を振ってスマホを出した。
    「この先は彼岸花がいっぱい咲いててフォトスポットになってるんだって」
    「ありゃあ毒草だぞ」
    そもそも暁人は彼岸花が密集している場所にいい思い出はないと思うのだがいいのだろうか。
    「大体彼岸っつーのはあの世のことだからな、あっちに繋がっても知らねえぞ」
    「嘘つき。 助けてくれるだろ、KKは」
    僕のこと大好きなんだから。
    声に出さずに口を動かすのを見てKKは頭を抱えた。
    反対に暁人はからからと秋の空に響くように笑う。
    「やっぱり知られない方が良かったかもね」
    「うるせえ、オマエだって同じだろ」
    「うん、大好きだから絶対に助けるよ」
    何の衒いもなく言い切る暁人にやはり彼岸花は似合わない。
    だから二度とあんな場所にいかせない。
    「徒競走でもかくれんぼでもオレの負けだと思うがな」
    「負けず嫌いのKKにしては珍しいな」
    本気で不思議そうにしている暁人に負けず嫌いなのも同じだろうと思いつつ、年長者らしく教えてやる。
    「惚れたモン負けってな」
    「…………なるほど?」
    桜以外にも赤くなる植物はある。紅葉のように、彼岸花のように。それから暁人のように。
    「僕は植物じゃないよ」
    「そうか? 膨らむ草木もあったような気がするが」
    「もう!」
    先に行くよと足音を立てて大股で歩く暁人のウブさに笑いながら早足で追いかける。
    夢の中では散々弄ばれたのだから現実で少しくらい意趣返ししても許されるだろう。
    「暁人、髪に紅葉がついてるぜ」
    「え、どこ…っん!?」
    キザだのバカだのかわいらしい罵倒を背にKKは女性陣の待つであろう彼岸花畑に向かって悠々と歩き出した。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖👏💖💖💖💖☺☺💗💗💗💖💖💖💖💖👏☺☺💖💖💖💖💖👏💖💖💖🙏💖💖💖💖💖💖💖💖💖👏👏👏👏👏👏👏❤❤💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    32honeymoon

    TRAINING・先日アップした画像版に修正を加えて、今までとおなじ横書きにしました。前回読みにくかった皆様はよければこちらで。
    ・修正したのは暁人くんの心情描写が主です。まだKのことを好きになりかけてきたところで、信じる心と無くしてしまう不安の板挟みになっている雰囲気がちょっと出てないかなと感じたので、台詞回しを少し変えてみました。まあ内容は同じなので、再読頂かなくとも問題ないと思います…単なる自己満足。
    【明時の約束】「ねえ、KK。たとえば今、僕がこの右手を切り落としたとして、ーあんたの宿っているこの魂は、何処に宿るのかな」

    ー突然。自らの右手に在る、そのあたたかな光と靄のかかる手のひらに向かって、突拍子もないことを言い出したその体の持ち主に、KKは呆れたように何いってんだ、と返した。

    『ーオレの魂が宿る場所は、ココ、だろ。手を失ったとて、消えるわけがねえ。ああ、ただー大切なものが欠けちまったって言う事実に対して、クソみてえな後悔だけは、一生残るだろうな』

    気を抜いたままで容易に操れるその右手。ぶわりと深くなった靄を握り込むようにぐっと力を込めると、とんとん、と胸を軽くたたく。

    「後悔、?」
    『ああ、後悔だ』
    「どうして?これは、僕の体だ。例え使えなくなったとしても、あんたには何の影響も無い筈だよね。それとも、使い心地が悪くなったとでも文句を言う気?ーああごめん、言い過ぎたかも。…でも、そうだろ」
    2932

    takeke_919

    DONE #毎月25日はK暁デー
    素敵タグにギリギリ間に合いました💦
    お題は「おはよう」
    Kは成仏したのではなく、暁の中で眠りに付いたという説を添えて。
    毛色の違う話が書きたいなぁと思い至ったまでは良いものの、毎度のことながらお題に添えているかは迷走してます🤣
    目醒めの言の葉 東京の街を覆っていた濃く暗い霧は晴れ、東の空からは眩い光を放つ日輪が顔を覗かせている。

     幾重にも連立する朱鳥居を潜り、石燈籠の淡く揺らめく灯りに照らされた石階段を登る暁人の胸中には全てを終わらせた事による達成感と、追い求めた者を失ってしまった喪失感。そして、自身の中に宿る男への寂寥感が入り混じっていた。男の悲願は達成され、その魂が刻一刻と眠りに就こうとしているのを肌身に感じる。

     本当に独りぼっちになってしまう。

     そうは思うものの、妹に、両親に誓った。泣いても、みっともなくても生きていくのだと。次に会うのは、最後の最後まで生き抜いた、その後なのだと。

     一歩一歩、階段を登る最中にKKから彼の妻子に向けての言伝を預かった。『最後まで、あきらめずに生き抜いた』と、そう語られた言葉は、彼の想いが沢山、たくさん詰まった大切なモノだ。何があっても絶対に伝えなくてはと、しかと心に刻み込んだ。
    5216

    na2me84

    DOODLE #毎月25日はK暁デー 
    お題【初デート】
    参加させて頂きました。宜しくお願いします。お題が可愛すぎて悩みました…
     渋谷駅前、かの有名な交差点は深夜になっても人も車も途切れることはない。煌々と輝くモニター画面には雑多な情報が流され続け、色鮮やかなLEDに彩られた看板は星の光をかき消すように輝いている。夜の闇さえ寄せ付けない光の奔流は、月の存在までも薄く儚いものに変えてしまったようだ。
     信号が青に変わると一斉に人の流れが動き始め、それぞれの進行方向へと、人々が双方向に入り交じりながら滔々と流れていく。その人混みから少し離れて道路を眺めていた青年が、隣に立つ男に話しかけた。
    「ここだったよね、KK」
    「ああ、そうだったな」
    あの夜、二人が『運命的』に出会った場所がここだった。

     
    「ねぇ、夜の散歩に行かない?」
    暁人がそう声をかけてきた。正直なところ面倒だな、とKKは思った。もう飯も食って風呂もはいって、後は寝るだけ、という状態だ。出来ることならこのまま暁人を寝室まで引っ張って行って、さっさと押し倒したいところだが。まるで飼い主に散歩をねだる犬のような目で見つめられては、異を唱えることなど出来ようはずがない。甘いな、俺も。そう思いながら答える。
    2638