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    iria

    @antares_1031_

    小説と後書き置き場です

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    iria

    DONEお題「願いごと」「銀河」をお借りした小説です。
    しくじった。深夜の横浜、中華街。昼間の観光地らしい賑わいとは様変わりして、深夜はほぼ全ての店のシャッターが閉まり、しかし対照的にギラギラと大きな看板の灯りが照っている。
     簓は息も絶え絶え、追っ手から逃げている最中だった。片足を引きずりながら薄汚い路地裏へと転がり込むように身を隠した。暴れる心臓を押さえ込むようにぐっと息を潜め、周囲を伺う。どうやら人の気配はないようだ。その瞬間、急激にどっと疲労と痛みが体を襲った。
     張り詰めたものがプツンと切れたのと同時に、簓はズルズルとその場に座り込んだ。するとすぐにスラックスがじわじわと湿っていく。どうやら排水が地面に溜まっていたようだ。
     そんなことは気にする間もない。息をするたびに刺すように痛む肋骨はどうやら数本折れていそうだ。引きずっていた右足を見ると、足首がありえない太さに腫れ上がり、どす黒い紫色に鬱血している。かなり熱をもっているようだが、痛みに反するように感覚は鈍い。先ほどから何故かズキズキと痛む左手を見てみると、薬指の爪から血が出ていた。爪が半分剥がれかけている。額や瞼の切り傷からも出血し、他にも数える気にもなれないほどの擦り傷や、打撲の跡が全身にあった。青色のスーツに吸い込まれた血液は、濃紺のシミをつくっている。
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    iria

    DONE週ライお題 「乱反射」「制汗剤」をお借りした小説
     早朝の人気のない電車内。簓はイヤホンから流れる音楽をぼうっと聞き流しながら、肩にもたれかかっている盧笙の重みを感じていた。昨夜は緊張と興奮とでなかなか寝付けなかったと言っていたが、簓も同じようなものだった。なんせ初めてのテレビロケだ。無理もない。
     他県の海水浴場に設置された海上アスレチックに向かうため、二人して始発の電車に乗り込んだ。最寄駅からロケ地までは片道四、五時間かかる。海上アスレチックを体当たりでレポートするロケは、関西でのみ放送されるローカル局の深夜番組内で放送される予定だ。駆け出しの若手芸人に送迎などは勿論なく、今回はマネージャーも別件のため同行しない。交通費だって自腹だ。出演料と比べると決してプラスにはならない。むしろマイナスだ。それでもテレビ出演に変わりはない。小さな深夜帯のローカル番組でも、たった数分のワンコーナーでも、電波に乗って放送される。今回の仕事が次の何かに繋がるかどうか、自分たちにかかっている。そう考えるほど、また緊張感がぶり返してきた。気持ちを落ち着かせるために深く息を吸うと、盧笙の匂いがふわりと混ざった、電車の心地よい揺れに、いつの間にか眠ってしまった相方をじっと見つめる。眼鏡のレンズの奥に、長いまつ毛が朝日でキラキラと光る。先程の緊張とは違う意味合いの鼓動がドキリと混ざった。すぐに気づかないフリをし、手元の進行台本に目を落とす。
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    iria

    DONEろささ週ライお題「はにかみ」「雲間」をお借りして書きました。
    少女漫画展開です。
    風呂上がり、リビングに戻ってみると机に突っ伏して寝落ちている簓の姿があった。先に風呂に入れておいてよかった、と思いながら冷えたビールを片手に隣に座る。机の上には空の缶が多数、中身が残っている缶がちらほら。テレビは付けっぱなしで、けたたましい笑い声を響かせている。酔っ払って寝てしまうなんて、簓にしては珍しい。だいたい先に潰れて寝てしまうのは盧笙の方だ。よほどの量を飲んだのか、それとも疲れていたのか。おそらくその両方だ。
     プシュっと小気味いい音をたてて缶を開け、しばらくぼんやりとテレビ画面を眺めていたら、新しい恋愛ドラマのCMが流れた。幼馴染同士のもどかしい恋愛模様を描いたドラマだそうで、人気の若手女優を主演に、いま話題の男性アイドルが相手役をするらしい。【いつの間に、こんなに好きになったんだろう】というキャッチコピーと共に、初夏のような爽やかさを感じさせる主題歌が流れてきた。盧笙は横目で簓の寝顔を見た。普段の騒がしさとは打って変わって、あどけない顔で静かに寝息を立てている。そっと前髪に触れる。さらりとした感触が、ざわりと感情を加速させる。
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