Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    mitotte_kazu

    @mitotte_kazu

    自機ルガオスとエタバン相手のヴィエラとかよそよその話とかNPCよその話とか置いとく場所。
    リアクションとても嬉しいですありがとうございます

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 86

    mitotte_kazu

    ☆quiet follow

    ご都合主義で子供になったオルシュファンと🐇さんのお話

    #オルしる

    幼児の話 慌てた様子で呼び出されたヴィエラがフォルタン邸に戻ると、困惑した様子の一同が彼女を待ち構えていた。その輪の中心で一際困惑した表情を浮かべた子供を眺め数回瞬きした後、視線を周囲に向ける。彼女の視線に応えるように無言で頷く一同に嘘でしょ?とヴィエラは情けなく笑いかけてみた。
    「……困ったことに、現実なのだ」
     子供らしからぬ様子で溜息を吐いた子供が水色の髪を揺らして苦笑して答えた。


    曰く、一風変わったモンスターが見かけられたため冒険者の手を煩わせる訳にはと名乗り出たオルシュファンがそのモンスターを討伐したらしい。そこまでは良かったのだが、その際に浴びたモンスターの体液か何かの影響で身体が子供に戻ったとのことだった。
    「あまりこういった事は専門ではないから、恐らくはそういう経緯、原因だとは思うのだけれど……」
     魔力かその辺りに害を成すモンスターだったのか、など深刻な表情で呟くアルフィノを横目に幼くなったオルシュファンにヴィエラは歩み寄る。
    「情けないところを見せてしまったな」
     ふにふにと確かめるように自身の頬に触れてくる彼女にオルシュファンは眉根を寄せた。これからどうするの、と深刻な表情で尋ねてきたヴィエラの勢いに圧されながら、少し考え込んだ彼は答える。
    「……このままでは何の役にも立てそうにないから、治るまでは屋敷に篭るしかないだろうな」
     顎に手を添えたまま溜息を吐き、深刻な表情のまま黙り込んだヴィエラの整った顔を見つめた。イシュガルドにまで来て多くの厄介事に巻き込まれている彼女にとうとう呆れられてしまっただろうな、と珍しく気落ちしていると激しく肩を掴まれた。
    「じゃあ、マーケットに行こっか」
     彼女の表情は輝いており、どこか楽しそうであった。

     早く早く、と急かすように自身の手を引くヴィエラに連れられ、少しサイズの合わないコートに包まれたオルシュファンは足早にマーケットを進む。いつもより低い視点でマーケットを眺めるのはどこか不思議な感覚だった。普段通りの賑わいを子供の目を通して見るとこうまで印象が変わるのかと少し感動する。ここ、と彼女が立ち止まり示したのは服屋だった。店に並ぶ商品とこちらを交互に見比べる彼女に少し嫌な予感がした。

     彼女が選んだ服に袖を通し、目を輝かせているヴィエラに披露する。やっぱり似合う、いやでもこっちも捨てがたいと他の服を手に表情を次々変えていく彼女に普段と違った一面を見た気がしてつい笑ってしまった。真剣に考え込む横顔もイイなと思いつつ、ふと幼少期を思い出す。
    「どっちの色が好きかな!?」
     気に掛けてくれたり面倒を見て助けてくれた存在はあれど、ここまで真剣に自身と向き合ってくれた人は多くはなかったななどと物思いに耽りかけていたところを彼女の弾む声が遮ってきた。楽しそうに嬉しそうに胸元にかざされた服と彼女の顔を見比べて、両方着てみようかな、と返すと更に嬉しそうに彼女の頬が緩んだ。

    「世話をかけてすまない」
     必要な物品を一通り買い揃え、フォルタン邸に戻り一息吐いたところでオルシュファンが言った。不意を突かれたように目を丸くしていたヴィエラに続ける。
    「ただでさえ大変な状況の君を、こちらの都合に巻き込んでいるのにこんな情けない姿を見せてしまっているのが不甲斐無くて仕方がない」
     子供の外観と声色だが口調はいつも通りの彼に思わずヴィエラは佇まいを直した。手を伸ばし俯いているオルシュファンの頬を包み込んで優しく上に向かせる。
     優しい手つきとは裏腹に真剣な表情のヴィエラに反射的に下唇を噛み締めてしまう。また俯いてしまいそうになるが、首を振った彼女の表情が和らいだ。彼女の真意を図り兼ねて困惑していると、頬から離された手がオルシュファンの頭に移る。

     慈しむような手つきと表情のヴィエラは自身の頭を撫でてきた。そんなことないよ、と小さく呟いて彼女は続ける。
    「むしろ、小さい時の姿が見れて内心はしゃいでるかも」
     酷いよねぇ、と苦笑している彼女の先程の様子を思い出し、静かに納得してしまう。ねぇ、とどこか甘えるような普段と異なる声で呼びかけられ、首を傾げながらどうしたのか尋ねた。
    「……酷いことついでに、もう一個したいこと、させてもらってもいい?」
     俯いてこちらの反応を伺うように上目遣いで言う彼女に、その尋ね方は狡いだろうと思う。こんな子供に拒否権などあるものか、と返すと嬉しそうに表情を輝かせた彼女が腕を広げて抱き締めてきた。

     いつもより低い視界一面が彼女の胸で覆われ、息苦しいくらいの強さで抱き締められた。ようやく呼吸が出来るぐらいの位置に顔を調整すると、背中を優しく撫でられた。慈しむような、大事なものに触れるような手つきだった。幼少期にこんな触れられ方などしなかったな、とまた思い出してしまう。自身の生い立ちに対する負い目などが頭を過ぎりそうになり眉間に皺が寄った。それでも側で見守ってくれたり肯定してくれる存在があったから、今の自分が居る訳で、そんな自分に真っ直ぐ向き合ってくれる彼女にも出会えたのだからそれに対する負の感情はなかった。こちらの背中に十分に腕を回してくる彼女の腰に手を回し返した。その背中に届かない自身の腕の長さや背にもどかしさすら覚えつつ、口を開く。
    「……これは、」
     とてもイイな。それだけ伝えると腕に更に力が込められ、嬉しそうにでしょう、と返された。

    「こういうのは慣れていないから、少し気恥ずかしいというか、くすぐったいな」
     くぐもった声でオルシュファンが呟くと、首を傾げたヴィエラが腕の力を緩めた。心地良さと共にどことなく照れ臭さを感じ、緩められた腕からそっと離れようとする。と、逃がさないとでも言いたげに更に抱き締められる。
    「これから慣れていけばいいよ」
     いっぱい甘やかしてあげるから。歌うように楽しそうに弾んだ声で彼女は言った。この盟友はどれだけ自分を助けてくれるつもりなのだろうかと思いつつ、首を振る。
    「……あまり迷惑をかけるのは良くないだろう」
     自身の発言に背中から肩に腕を回し、彼女は引き離してきた。珍しく狼狽たような表情を浮かべる彼女の顔を見て、やはり迷惑をかけたくないと再認識させられる。

    「そんなことないよぉ!!」
     力強く反論してきた彼女は普段の気丈さなどどこへやったのか、泣きそうな顔をしていた。迷惑だなんて思ってないのに、と俯いて呟いた彼女に今度はこちらが狼狽る。
    「……好きでやってるし、もっと甘やかさせてほしいぐらいだもん」
     俯いて耳を垂らしながら小さく続けた彼女の頭を思わず撫てしまった。こちらの様子を伺うような彼女と目が合った。嗚呼こういう気持ちから来たのかと思いながら、そんな顔をしないでほしい、と声をかける。
    「そちらの気持ちがわかるなどおこがましい事を言うつもりはないが、君の気持ちが少しわかった気がする」
     顔を上げた彼女の表情が綻んだのを見て、やっぱり笑顔がイイな、とつられて頬が緩んだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    mitotte_kazu

    PASTヴァレンティオンを満喫している🦍と🐇の短いお話
    贈呈 毎年恒例になりつつある、海都でのヴァレンティオンの催事場巡りに今回も付き合っていた。ヴィエラに付き添っていただけの当初に比べて多少慣れてきたルガディンも、露天を覗き見比べる余裕が出来てくる。
    「これは今年の新作か」
    「そう〜!去年から定番になったこっちも美味しいよ!」
     少しわかってきたと思っていたが、やはり彼女の知識量などには勝てない。真剣な顔で次の店の品定めをする彼女の手から、戦利品の入った紙袋を苦笑しながら受け取った。ありがと、と身軽になった身体で手早く会計をすませる彼女を遠巻きに眺めていた。
    「ここの好き」
     何軒目かを巡っていた時に彼女が呟いた店のチョコレートや包装に見覚えがあった。以前貰ったものだな、と何気なしに視界に入った価格を二度見して、目を剥いてしまう。横に書かれた説明を流し見て、ブランド物のククルビーンを手間暇かけて加工してウルダハで販売している有名店だとようやく把握できた。通りで高価で美味いはずだと1人納得している横で、また真剣な表情で陳列されている商品を吟味している彼女が頷いた。これとこれください、と慣れている彼女の指がチョコレートの上を滑っていく。彼女が選んだ商品が丁寧に包まれていくのを眺めながら、パッケージまで可愛いな、などと思った。
    805

    related works

    recommended works

    mitotte_kazu

    PASTバレンタインなのでチョコ渡す🐇さんとチョコ食べる🦍の短い話
    片割 この海の街にもイベントの余波が来ているようで、浮ついた雰囲気が漂っていた。幸せそうな人を見るのは嫌いではないが、この空気の中独り歩くルガディンはどこか居た堪れなさを感じていた。
    それでもイベントのおかげで普段ならあまり手を出さないようなチョコレートが並んでいる店頭を眺めるのは楽しいものだった。買ったところで勿体なくて食べられないのは目に見えているし、貧相な自身の舌はどれを食べても美味しく感じるのだろう。折角だからと思いつつ平凡な板チョコレートを手に取る。と、掌からチョコレートが消えた。目線を掌から上げるとルガディンから取り上げたチョコレートを興味深そうに眺めるヴィエラがいた。

    「買うの?」
     握ったチョコレートをひらひら翳しながらヴィエラが首を傾げた。まぁ、とルガディンが頷くとふぅんと数回頷いた彼女がそれを棚に戻す。買うと言ってるのに、と棚のチョコレートに伸ばされた彼の手をヴィエラの手が掴んだ。ルガディンが何なんだと困惑している間に人気の少ない通りまで引っ張り出される。されるがままだったルガディンの離された掌にちょこんと小箱が載せられた。どこか見覚えのあるデザインの小箱をしばらく眺めてから、目の前のヴィエラに視線を向ける。にんまりと意味深に笑った彼女が覚えてる?と首を傾げた。ルガディンが数回頷いて開けても良いか了承を得ると、勿論、と微笑まれた。
    903