Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    koichan_77

    @koichan_77

    沢深がすき

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 6

    koichan_77

    ☆quiet follow

    ※大人沢深、ピョン、ご都合主義、情緒なし

    #沢深
    depthsOfAMountainStream

    no title「深津さん、沢北さんがいらしてます」
    内線から聞こえる女性の声が弾んでいるのがわかる。かつてNBAで名を馳せ、今も日本で現役選手として活躍している沢北栄治が来社するともなれば、社内は朝からちょっとしたお祭り騒ぎだ。チラチラと集まる視線が鬱陶しいが、すべてに気づいていないふりをして普段の自分を継続する。
    「わかりました。すぐ行きます」
    相手が誰だろうと、仕事は仕事。特に今回はプロジェクトリーダーを任されていることもあり、念入りに準備を重ねてきた。沢北選手(とあえて言うべきだろう)がモデルを務める我が社のスポーツウェアの、限定コラボデザイン発売に向けた重要な会議が始まる。


    「全部オッケーです。それで進めてください」
    資料を投影していた画面が暗転するやいなや、沢北が明るい声で言い放った。
    「ちょっと沢北さん、もっと真面目に…」
    「大真面目ですよ。事前に送っていただいた資料でほとんどイメージは掴めていましたし、今日は実際に素材も確認できたので。それに、深津さんのことは信用してますから問題ありません」
    安易な全肯定に、ついさっきまでの熱心なプレゼンが肩透かしをくらう。チームのメンバーはホッとしているようだが、俺はどうも釈然としない。ついそのままの感情が眉間に出てしまい、まずいと思った時には既に沢北に目ざとく拾われていた。
    「深津さん、このあと少し追加で打ち合わせお願いできますか?」
    他所行きの笑顔が俺だけにわかるメッセージを放っているが、このあとなんかあってたまるか。
    「あ、ではこのままここで…」
    「細かい話になるので深津さんだけで結構です。どうです、お食事でもしながら」
    沢北の有無を言わさぬ圧により一瞬でピリついた空気に、同席していた上司が顎でサインを送ってくる。「ご一緒しろ」…。
    ため息を押し殺し、またしても普段の自分を総動員して微笑むと、ミーティングは円満に終了という体裁を保つことができた。

    沢北と二人でエレベーターに乗り込み、チームのメンバーたちに見送られる。非常に居心地の悪い時間だ。バレないように「閉」ボタンを連打しながら、横に立つスポーツマンのいかにも爽やかな営業スマイルを観察する。しかし、ドアが閉まりきるとその貼りつけた笑顔はどこかへ消え、整った鼻先が即座に俺へ向けられた。
    「ふかつさん、」
    「お前、さっきのどういうつもりピョン?」
    狭い箱の中でぐっと距離を詰めてくる沢北に社会人モードで応じるつもりが、うまくいかない。背中はとうに壁に当たっており、目の前には好きな男。
    「ごめんなさい、でも本当のことだから」
    先ほどまで他を寄せ付けないオーラを放っていた沢北が、眉を下げ俺に許しを乞うている。
    「仕事してる深津さん見てたらかっこよくて…我慢できなくて」
    ああ、これだから沢北は。いや、俺か。
    「閉」にかけたままになっていた指をはずし、その上にあるボタンを押すとエレベーターが静かに降下する。
    俺は沢北の腕を引き僅かな死角へと誘うと、そのまま急いで唇を塞いだ。高層階用のエレベーターは1階まで止まらない。ほんのひとときのスリルを選んでしまった俺を、遠くから普段の自分が見ている。

    ブランドモデルに沢北を起用することになったのは、俺の経歴を知った上からの「コネを使え」というお達しによるものだ。公私混同だと俺は渋ったが、沢北が俺と一緒に仕事をしたいと乗り気だったためトントン拍子で実現することとなった。
    あくまで高校時代の先輩後輩。今もたまに連絡を取り合う程度。その体で臨んでいるが、実際には付き合っており、一緒に住んでいる。

    同じ家から別々に出勤し、こうして職場で顔を合わせるのは初めてのことだった。いつも家で会っている恋人なのに、仕事中の姿は何故こうもそそるのだろう。試合を観に行くことは昔から多々あるが、こういった所謂ビジネスの場での沢北を目にする機会は多くない。突然訪れた非日常のスリルに加え、ゆるやかな重力を感じながらの口づけに全身の臓器が波立つのを感じる。一秒が惜しく、いつもより急いて求めて息が荒くなってしまう。ずっと止まらなければいいのに。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖👏👏❤❤❤💗💗❤💖🍑🍑❤💖❤💖☺❤❤💯😍💗💗💗💗💗💯💯💯😭😭👏👏👏💖💖💖💖👏👏👏👏👏❤💖❤💖👏👔💅👔💓👔💓👔💓👔💓💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works