Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    nbsk_pk

    @nbsk_pk

    @nbsk_pk

    文字を書きます

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 87

    nbsk_pk

    ☆quiet follow

    博さんのひげ剃りの話。博さんにはちょっとだけまばらに生えててほしい。

    #炎博♂

     身だしなみに最低限以上の興味がない人間の朝など、顔を洗って歯を磨いて、まあそのくらいで完了である。あとは一応、ひげ剃りなど。


    「何をって、ひげ剃りだよ。見ればわかるだろう」
     確かに彼の使っているような立派なシェーバーではないけれど、私だって一応は成人済みの男性なのでひげを剃る必要がある。エンカクのポカンとした表情は寝起きということを差し引いたとしてもさらに滑稽なほどで、人間とは驚くとここまで表情が抜け落ちるのかと笑ってしまいそうになるほどだった。無論、剃刀を持ったままで大爆笑などしてしまえば怪我の危険性があるため私の腹筋には過度な我慢を強いたが、おかげで午後ちょっと引き攣って痛かった。我が身体のことながらなんて脆弱な腹筋だ。それはともかく。
    「生えていたのか」
    「それ、君が最初に私の下着を引っぺがした時にも同じこと言ったよね」
     対象が性器のことであったのかそれとも体毛のことであったのかについては今の今まで聞きそびれてしまったが、彼はそれどころではなかったらしくて今回も答えは聞けなかった。前者はありえないだろうって? 私もそう思うんだけどまだ時々聞かれるし驚かれるし興奮されたりもするんだよね。まあ最後のは護衛についてるオペレーターがどこかへ連れて行ってしまうからその後はよくわからないんだけど。
     なんて下らないやり取りをしている間にひと通りひげを剃り終えたので、もう一度顔を洗ってこれで完了。あとは着替えて薬を飲んでメディカルチェックを受けなければならないのだけれど、彼は洗面台の前というか私の後ろを塞いでしまっているのでどうにも動けない。困ったなあと思っていると、私の手が剃刀から離れたのをしっかりと確認してから、エンカクはおもむろにぐいっと私の顔を掴んだ。
    「ぐえ」
    「これは処理する必要があるレベルか……?」
     なんだ、キスされるのかと思ったのに。とまあ冗談は置いておいて、彼の指は執拗に私の顎を撫でまわして、どうやらひげ剃り痕を確認していたらしい。そりゃあ確かに君のどこもかしこも頑丈な毛根に比べれば貧弱だろうけどさ、だからこその厄介さというものも世の中には存在しているわけで。
    「逆だよ、伸ばしてもあまりにも貧相すぎるから、処理しとかないと見苦しいことになる」
     実際、ロドスに来た直後に検査やら何やらで忙しかった時期に処理を怠ったことがあるのだが、それはもう悲しいほどに貧相な髭面だった。どれくらいかというとあのケルシーが直々に剃刀を用意してくれたくらいだ。さっさとその不器量な顔をさっぱりさせろと言わんばかりの眼差しにはそれだけではない圧が込められていた気がするのだけれど、残念ながら記憶喪失である私には思い当たる節がないので、ただありがたく身支度を整えさせてもらったのだった。
     ところでエンカクはいつまで私の顔を撫でまわしているつもりなのだろうか。そろそろLANCET-2が来る時刻なのだけれど、ひょっとしてこのまま受診させるつもりなのか。肉もないかさついた頬など触っても楽しくはないだろうに、彼はといえばまだ神妙な表情のまま指を離してはくれないので、そろそろタイムリミットの近くなった私はくるりと振り返って背伸びをする。
    「エンカク、ワイルドな君もたいへんに男前だとは思うのだけれど、私としてはヒゲをあたってさっぱりした君のほうが好みだな」
     ざり、と唇にあたる伸びかけた髭の感触に微笑みながらうっとりと告げると、ようやく彼は私の拘束を解いてくれた。直後に入り口からLANCET-2の入室許可を求める音声が聞こえてきたので、慌てて彼に背を向けて駆け寄る。だからその後の彼がどんな顔をしていたのかは見えていないのだけれども。
    「……今夜、おぼえておけ」
     その声に忍ばされた熱量に、私は素知らぬふりをして扉を開けたのだった。


    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏☺☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    nbsk_pk

    DOODLE岳博ギャグ、自分のもちもちロングぬいぐるみに嫉妬する重岳さんの話。博さんずっと寝てます。絶対もちもちロングおにい抱き枕寝心地最高なんだよな…
    180センチのライバル 重岳は破顔した。必ず、この眼前の愛おしいつがいを抱きしめてやらねばならぬと決意した。重岳は人という生き物が好きだ。重岳は武人である。拳を鍛え、千年もの年月を人の中で過ごしてきた。けれども、おのれのつがいが重岳を模したもちもちロングぬいぐるみを抱きかかえて、すやすやと寝台の上で丸くなっていることについては人一倍に敏感であった。


    「失礼、ドクターはどちらに」
    「ドクターでしたら、仮眠をとると私室へ」
     あと一時間くらいでお戻りになると思いますが、と教えてくれた事務オペレーターに礼を伝え、重岳はくるりと踵を返した。向かう先はもちろん、先ほど教えてもらった通り、ドクターの私室である。
     この一か月ばかり、重岳とドクターはすれ違いの生活が続いていた。ドクターが出張から戻ってきたかと思えば重岳が艦外訓練へと発ち、短い訓練ののちに帰艦すれば今度はドクターが緊急の呼び出しですでに艦を離れた後という始末で、顔を見ることはおろか声を聞くことすら難しかったここ最近の状況に、流石の重岳であっても堪えるものがあったのだ。いや流石のなどと見栄を張ったところで虚しいだけだろう、なにせ二人は恋仲になってまだ幾ばくも無い、出来立てほやほやのカップルであったので。
    2835

    nbsk_pk

    DOODLE岳博、いちゃいちゃギャグ。寒い日に一緒に寝る姿勢の話。岳さんが拗ねてるのは半分本気で半分はやりとりを楽しんでいる。恋に浮かれている長命種かわいいね!うちの博さんは岳さんの例の顔に弱い。
    「貴公もまた……」
     などと重岳に例の表情で言われて動揺しない人間はまずいないだろう。たとえそれが、冬になって寒くなってきたから寝ているときに尻尾を抱きしめてくれないと拗ねているだけであったとしても。


     彼と私が寝台をともにし始めてから季節が三つほど巡った。彼と初めて枕を交わしたのはまだ春の雷光が尾を引く暗い夜のことで、翌朝いつものように鍛錬に向かおうとする背中に赤い跡を見つけ慌てたことをまだおぼえている。それからほどなくして私の部屋には彼のための夜着がまず置かれ、タオルに歯ブラシにひとつまたひとつと互いの部屋に私物が増えていき、そして重ねる肌にじっとりと汗がにじむような暑さをおぼえる頃には、私たちはすっかりとひとかたまりになって眠るようになったのだった。彼の鱗に覆われた尾にまだ情欲の残る肌を押し当てるとひんやりと優しく熱を奪ってくれて、それがたいそう心地よかったものだからついついあの大きな尾を抱き寄せて眠る癖がついてしまった。ロドスの居住区画は空調完備ではあるが、荒野の暑さ寒さというのは容易にこの陸上艦の鋼鉄の壁を貫通してくる。ようやく一の月が眠そうに頭をもたげ、月見に程よい高さにのぼるようになってきた頃、私は名残惜しくもあのすばらしいひんやりと涼しげな尾を手放して使い古した毛布を手繰り寄せることにしたのだった。だが。
    2030

    related works

    nbsk_pk

    DOODLE転生現パロ記憶あり。博が黒猫で花屋の炎さんに飼われている。博猫さんは毛づくろいが下手すぎてもしゃもしゃにされたのを自力で戻せないので、原因にブラッシングを要求しました
    ねことのせいかつ いくら朝から店を閉めているとはいえ、生花という生き物相手の職業であるためやらなければならない作業は多い。ましてや今回の臨時休業の理由は台風、取引先各所への連絡から店舗周辺の点検と補強までひと通り終わらせたときには、すでに窓の外にはどんよりとした黒い雲が広がり始めていた。


    「ドクター?」
     店の奥にある居住スペースの扉を開けても、いつものようにのたのたと走り来る小さな姿はない。しん、とした家の気配に嫌な予感を募らせたエンカクがやや乱暴な足取りでリビングへと駆け込んだとして、一体誰が笑うというのだろう。なにせあのちっぽけな黒猫はその運動神経の悪さに反して脱走だけは得手ときている。植物や薬剤をかじらないだけの聡明さはあるというのに、頑として水仕事で荒れた手のひらで撫でられねば一歩も動かないと主張する小さな生き物に、どれだけエンカクが手を焼いたことか。だがエンカクの心配をよそに、雨戸を閉めた仄暗い部屋の中で黒猫はあっさりと見つかった。キッチンの出窓、はめ殺しの小さな窓には雨戸もカーテンもないため、今にも落ちてきそうなほどの暗雲がよく見て取れた。自身が抱いているものを安堵とは決して認めないものの、やや歩調を緩めたエンカクは窓の外をじっと見つめたまま動かない黒猫の背にそっと立つ。
    1015

    nbsk_pk

    DOODLEおじ炎博、あんまり美味しくなかったのど飴の話。おじ炎さんが考えすぎている。庭園メンバーいつまでも仲良しだととても嬉しい。
    おじ炎さん一人称にした結果、おじ炎さんの認識がだいぶずれてるのでスズちゃんたちがめちゃ小さかったことになってたり鉱石病があんまり脅威じゃなかったりしてるのに博さんの体調にはすこぶる敏感で、自分で書いてて愛じゃん…て勝手にニコニコしていた。
    「だから置いていっていいよって言ったのに」
     何のことを言われているのかと尋ねられたところで、俺に返せるのは無言だけである。だが目の前の人間はといえばその無言からですら情報を引き出しあっさりと真相へとたどり着いてしまうほどの脳みその持ち主であるため、つまるところこれはただの意味のない抵抗でしかないのだった。

     鉱石病というのはそれなりに厄介な病気で、時間をかけて徐々に内臓の機能を奪っていく。そのスピードや広がりやすい箇所には個人差が大きいとされているが、やはり感染した元凶である部分、俺に取っては左肩から喉元にかけての不調が最近とみに目立つようになってきた。そもそもこんな年齢まで生きるつもりもなかったのだと言えば、目の前の妙なところで繊細な男はわかりやすく気落ちして、挙句の果てに食事量まで減らして回りまわって俺が怒られる羽目になるため口にするつもりはない。たかがサルカズ傭兵というそこらじゅうで使い捨てにされる命ひとつにまで心を割く余裕など持ち合わせてもいないくせに、固く握り込まれるその小さな拳をそこまで悪いものとは思わなくなったのは、まさしく病状の悪化のせいに違いない。決してこの男に感化されたわけではない。決して。
    1956

    recommended works