Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    nbsk_pk

    @nbsk_pk

    @nbsk_pk

    文字を書きます

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 87

    nbsk_pk

    ☆quiet follow

    おじ炎博、二人でウェディングケーキ(の一部)を食べる話。
    この炎博は結婚済みです。なお残りのケーキのほとんどは炎さんが食べたそうです。

    #炎博
    yanbo

    ノア休開催おめでとうございますイエアーーーーーー!!!!!「これ、どうやったらバレずに済むかなぁ」
     そびえたつ巨大なケーキの前を見上げながら、ドクターは呆然と呟いた。

    「何がバレるまずいんだ?」
    「ぎゃー! もう帰ってきちゃったの!?」
    「直帰すると伝えておいたはずだが」
     背から刀を下ろしもしないまま、長身のサルカズはじろりとドクターを見下ろした。その眼差しに射すくめられたドクターは何とか必死に逃げ道を探そうとしたが、そもそも背後の巨大ケーキを隠せていないので、最初からドクターの負けではあったのである。
    「言い訳は聞いてやる」
    「えーとね、はい、確認を怠った私のミスでございます……」
     かいつまんで説明すると、とある案件でドクターが少しだけ手を貸した相手が炎国内でもそこそこ名の知れた洋菓子チェーンを展開しており、是非ともお礼にと言われたしつこ、もとい熱心な申し出を断り切れなかったことに端を発する。会議の合間の雑談で結婚記念日が近いのだとぽろっともらしてしまったのも悪かった。ロドスに帰還してバタバタと溜まっていた業務を片付けながらすっかりそのことを忘れていたドクターの元に届いたのは巨大なウェディングケーキで、しかもよくある一部分だけが食べられるように出来ていて大部分が模型という代物ではなく、大小重ねられた三段ともがすべて当日中にお召し上がりくださいの立派なケーキであったものだから、さすがのドクターでさえも呆然と立ちすくんでいたというわけである。
     ということを説明した結果、エンカクの眉間にはテラ中央部にある大渓谷にも匹敵するほどのそれはもう深いしわが刻まれた。さもありなん。ドクターだって逆の立場であれば同じ表情を浮かべていたことは確実であるので、黙ってエンカクの口が嘆息とともに開くのを眺めていた。
    「で、それをどうするつもりだ」
    「食堂には連絡したから、もう少ししたら引き取りに来てくれる手はずになってる。全員には行きわたらないだろうけど、切り分けて本日限定の特別なデザートとして配ってくれるって」
    「では何を余計なことを考えている?」
    「なんでバレるかなぁ。うん、一番上の小さいの、あれくらいなら私たちだけでも食べられるかなって」
     一番上の段は、大きなチョコレートのプレートと色とりどりのフルーツで飾られてはいるものの、大きさはエンカクの手のひらほどしかない。小食と偏食を医療部からでさえ匙を投げられて久しいドクターではあるが、チャレンジしてみようかと思わせるくらいには、このキラキラと輝くケーキは美味しそうではあったのだ。
    「取り外せばいいのか」
    「え」
    「食べるんだろう。お前が自分から食事を欲しがるのは珍しい。付き合ってやる」
     珍しいのは君のほうなんだけど、という口先まで出かかった言葉を、ドクターは何とか飲み込んだ。でなければすぐにでも彼がドクターを見捨ててこの部屋を出て行ってしまうのは目に見えていたので。
    「お礼のね、さすがにこれは手紙をしたためなきゃいけないから、君が一緒に食べてくれるととても助かる」
    「期待はするなよ」
     各段は支柱付きの台座に載せられているだけであったので、慎重に取り外しさえすれば分解は容易だった。ドクターが慌てて持ってきた皿の上へと移されたケーキは、つややかに表面を輝かせて食べられるときを今か今かと待ち望んでいた。
    「食堂に連絡した時についでにケーキナイフも頼めばよかったな」
    「スプーンでいいだろう」
    「式のファーストバイト思い出すね」
    「手掴みでいいか?」
    「流石にこのケーキでパイ投げされたら私泣いてしまうかもしれない」
    「なら黙って食え」
     えー、と不満の声を上げるも当然のように無視されたので、ドクターは渡されたスプーンを渋々とケーキ表面へと突き立てる。硬めのクリームとスポンジ、間にサンドされていたのはベリーのコンフィチュールでシンプルながら間違えようのない美味しさだ。ドクターがひとくち食べる間にその三倍の体積をあっさりと胃に収めたエンカクは、じっとドクターの口元を見ていた。
    「美味しいね。ここのウェディングケーキは人気らしいんだけど、なるほどこれならわざわざ注文するのもわかるなぁ」
    「お前は妙な連中に好かれるな」
    「私と結婚式を挙げてくれるような酔狂な人間なんてひとりしかいないと思うけどね」
    「そんな物好きな奴がテラにいるのか」
    「驚いたことにいるんだなぁ、目の前に。で、さっきから何が言いたいのかな」
    「口の端にクリームが付いているぞ」
     え、と指先で拭ってみるも、どうやらクリームが鎮座ましましている場所は違ったらしい。頭上から呆れ果てた吐息が聞こえた次の瞬間、ドクターのくちびるはもう一回りは大きな口に飲み込まれてしまっていた。
    「んっ、ふ、ふぅ……」
     甘ったるい。互いにケーキを食べている最中であったのだから当然ではあるのだが、クリームのべったりとした甘さをまとった舌に口腔内を蹂躙されドクターは思わず目を瞑り、そして即座にそのことを後悔した。視覚情報を遮断してしまったことで、その他の――例えばぬるつく長い舌が我が物顔で口蓋を撫でる動きだとか、味わい慣れてしまった彼の唾液の苦さだとか、倒れかけているこちらを彼の太い腕が背を支えてくれているその体温だとか、そういうのが一度に倍増して襲い掛かってきてしまったからである。せめてもの抗議のためにとそのぶ厚い背中を叩いてみるも、普段から大刀を振り回している戦士の体幹はびくともしない。しかしそろそろ彼我の肺活量が天と地ほども異なるという事実に早く気がついてほしい。くらりと回りかける頭の中で口の端からこぼれ落ちる唾液の感触の不愉快さに眉をひそめていると、ようやく彼は満足そうにくちびるを離してくれた。
    「ぷぁ、あー……こういうのって何っていえばいいんだろう。腹上死じゃなくて、腹横死?」
     何が彼を刺激してしまったのかはわからないけれど、ずるずると床に座り込んだドクターを見下ろすエンカクの眼差しは完全にスイッチが入ってしまっていた。何のスイッチかって? もちろん哀れなか弱い獲物をどうなぶってやろうかという捕食者スイッチである。と、しかしこのテラにはまだ祈りをささげるに値するものが存在していたらしい。聞きなれた電子音とともに入り口のドアの向こうから『ケーキを受け取りに来ました~』と厨房担当のオペレーターの声が聞こえてきたのである。
    「あ、あぁ、いま開錠するからそのまま入ってくれ」
    「おい」
     何故だか焦ったような彼の言葉を無視して、片手でPRTSを操作してドアのロックを解除する。そうすれば賑やかな声とともに数名のオペレーターが姿を現して、そして一斉に顔色を変えてUターンしていった。
    「おおおおお邪魔しましたごゆっくり!!!」
    「え」
     言い訳をすると、その時のドクターはいきなりのご無体によって酸欠で頭が回っていなかった。だからこそエンカクと自身が現在どのような姿であり、それが第三者からはどう見えるのかのコントロールという普段ならば呼吸よりも簡単に行っていることを完全に放り投げてしまっていたのである。入り口に背を向けて立つエンカク、その足元に座り込むドクター、ドクターの口元は正体不明の白濁液にまみれており、そして運の悪いことに座り込んだドクターの頭の位置は偶然にもエンカクの股間と高さが一致したのである。ということをようやく理解したドクターは慌てて立ち上がろうとして見事に転びかけてエンカクに支えて――というよりは容赦なく首根っこを掴まれながらも必死に大きな声を上げた。
    「さすがの私もこんな状況で淫行に及ぶほど人間捨ててないから!! ていうかせめてケーキは持って行ってくれ!!」


     その日に食堂で特別デザートとして配られたケーキはたいそう評判が良く、由来を知るオペレーターたちはみな口々にドクターへ感謝と祝福の言葉を投げかけてくれたのだが、当のドクター本人はといえば何故か祝いの言葉をかけられるたびに「ああ、うん、あれ美味しかったよね……」と少しだけ言い淀みながら、横に立つエンカクの脇腹をガスガスと肘で突いていたのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💒💒💒💒💒💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕💘💞💒💕💒🎂💖💒💴💴💴💴💴💴💴💴💴💴💴💴💴💴💴💴💴💴💴💴💒💒💒💒💒💒💖💖💖💘💒💒🎂🎂🎂💒
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    nbsk_pk

    DOODLE岳博ギャグ、自分のもちもちロングぬいぐるみに嫉妬する重岳さんの話。博さんずっと寝てます。絶対もちもちロングおにい抱き枕寝心地最高なんだよな…
    180センチのライバル 重岳は破顔した。必ず、この眼前の愛おしいつがいを抱きしめてやらねばならぬと決意した。重岳は人という生き物が好きだ。重岳は武人である。拳を鍛え、千年もの年月を人の中で過ごしてきた。けれども、おのれのつがいが重岳を模したもちもちロングぬいぐるみを抱きかかえて、すやすやと寝台の上で丸くなっていることについては人一倍に敏感であった。


    「失礼、ドクターはどちらに」
    「ドクターでしたら、仮眠をとると私室へ」
     あと一時間くらいでお戻りになると思いますが、と教えてくれた事務オペレーターに礼を伝え、重岳はくるりと踵を返した。向かう先はもちろん、先ほど教えてもらった通り、ドクターの私室である。
     この一か月ばかり、重岳とドクターはすれ違いの生活が続いていた。ドクターが出張から戻ってきたかと思えば重岳が艦外訓練へと発ち、短い訓練ののちに帰艦すれば今度はドクターが緊急の呼び出しですでに艦を離れた後という始末で、顔を見ることはおろか声を聞くことすら難しかったここ最近の状況に、流石の重岳であっても堪えるものがあったのだ。いや流石のなどと見栄を張ったところで虚しいだけだろう、なにせ二人は恋仲になってまだ幾ばくも無い、出来立てほやほやのカップルであったので。
    2835

    nbsk_pk

    DOODLE岳博、いちゃいちゃギャグ。寒い日に一緒に寝る姿勢の話。岳さんが拗ねてるのは半分本気で半分はやりとりを楽しんでいる。恋に浮かれている長命種かわいいね!うちの博さんは岳さんの例の顔に弱い。
    「貴公もまた……」
     などと重岳に例の表情で言われて動揺しない人間はまずいないだろう。たとえそれが、冬になって寒くなってきたから寝ているときに尻尾を抱きしめてくれないと拗ねているだけであったとしても。


     彼と私が寝台をともにし始めてから季節が三つほど巡った。彼と初めて枕を交わしたのはまだ春の雷光が尾を引く暗い夜のことで、翌朝いつものように鍛錬に向かおうとする背中に赤い跡を見つけ慌てたことをまだおぼえている。それからほどなくして私の部屋には彼のための夜着がまず置かれ、タオルに歯ブラシにひとつまたひとつと互いの部屋に私物が増えていき、そして重ねる肌にじっとりと汗がにじむような暑さをおぼえる頃には、私たちはすっかりとひとかたまりになって眠るようになったのだった。彼の鱗に覆われた尾にまだ情欲の残る肌を押し当てるとひんやりと優しく熱を奪ってくれて、それがたいそう心地よかったものだからついついあの大きな尾を抱き寄せて眠る癖がついてしまった。ロドスの居住区画は空調完備ではあるが、荒野の暑さ寒さというのは容易にこの陸上艦の鋼鉄の壁を貫通してくる。ようやく一の月が眠そうに頭をもたげ、月見に程よい高さにのぼるようになってきた頃、私は名残惜しくもあのすばらしいひんやりと涼しげな尾を手放して使い古した毛布を手繰り寄せることにしたのだった。だが。
    2030

    related works

    nbsk_pk

    DOODLE転生現パロ記憶あり。博が黒猫で花屋の炎さんに飼われている。博猫さんは毛づくろいが下手すぎてもしゃもしゃにされたのを自力で戻せないので、原因にブラッシングを要求しました
    ねことのせいかつ いくら朝から店を閉めているとはいえ、生花という生き物相手の職業であるためやらなければならない作業は多い。ましてや今回の臨時休業の理由は台風、取引先各所への連絡から店舗周辺の点検と補強までひと通り終わらせたときには、すでに窓の外にはどんよりとした黒い雲が広がり始めていた。


    「ドクター?」
     店の奥にある居住スペースの扉を開けても、いつものようにのたのたと走り来る小さな姿はない。しん、とした家の気配に嫌な予感を募らせたエンカクがやや乱暴な足取りでリビングへと駆け込んだとして、一体誰が笑うというのだろう。なにせあのちっぽけな黒猫はその運動神経の悪さに反して脱走だけは得手ときている。植物や薬剤をかじらないだけの聡明さはあるというのに、頑として水仕事で荒れた手のひらで撫でられねば一歩も動かないと主張する小さな生き物に、どれだけエンカクが手を焼いたことか。だがエンカクの心配をよそに、雨戸を閉めた仄暗い部屋の中で黒猫はあっさりと見つかった。キッチンの出窓、はめ殺しの小さな窓には雨戸もカーテンもないため、今にも落ちてきそうなほどの暗雲がよく見て取れた。自身が抱いているものを安堵とは決して認めないものの、やや歩調を緩めたエンカクは窓の外をじっと見つめたまま動かない黒猫の背にそっと立つ。
    1015

    nbsk_pk

    DOODLEおじ炎博、あんまり美味しくなかったのど飴の話。おじ炎さんが考えすぎている。庭園メンバーいつまでも仲良しだととても嬉しい。
    おじ炎さん一人称にした結果、おじ炎さんの認識がだいぶずれてるのでスズちゃんたちがめちゃ小さかったことになってたり鉱石病があんまり脅威じゃなかったりしてるのに博さんの体調にはすこぶる敏感で、自分で書いてて愛じゃん…て勝手にニコニコしていた。
    「だから置いていっていいよって言ったのに」
     何のことを言われているのかと尋ねられたところで、俺に返せるのは無言だけである。だが目の前の人間はといえばその無言からですら情報を引き出しあっさりと真相へとたどり着いてしまうほどの脳みその持ち主であるため、つまるところこれはただの意味のない抵抗でしかないのだった。

     鉱石病というのはそれなりに厄介な病気で、時間をかけて徐々に内臓の機能を奪っていく。そのスピードや広がりやすい箇所には個人差が大きいとされているが、やはり感染した元凶である部分、俺に取っては左肩から喉元にかけての不調が最近とみに目立つようになってきた。そもそもこんな年齢まで生きるつもりもなかったのだと言えば、目の前の妙なところで繊細な男はわかりやすく気落ちして、挙句の果てに食事量まで減らして回りまわって俺が怒られる羽目になるため口にするつもりはない。たかがサルカズ傭兵というそこらじゅうで使い捨てにされる命ひとつにまで心を割く余裕など持ち合わせてもいないくせに、固く握り込まれるその小さな拳をそこまで悪いものとは思わなくなったのは、まさしく病状の悪化のせいに違いない。決してこの男に感化されたわけではない。決して。
    1956

    recommended works