一等星を探して その男は、星に向かって手を伸ばしていた。
美しい夕日が茜と金の入り混じる幻想的な空へと塗り替えていく中で、その中心に燦然と瞬くそれは、とても小さくて。手を伸ばせばいとも簡単に掌に隠れてしまう。グッ、と掴んで引き寄せた掌の中には、当然何もない。
「なんかさァ、俺らみたいだよな」
「……何の話だ」
「わざわざ聞いちゃう?俺が今思ったこと、智将にも伝わってるでしょ」
だって、俺なんだから。何も掴めなかったことを証明するかのようにヒラヒラと手を振る男は、自分によく似た顔で困ったように笑ってみせた。きっとここは、どこかの学校の屋上なのだろう。フェンス越しに広がる夕景は、もうすぐ今日という日が終わることを悠然と告げているようだった。
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