プレゼントを君に時は、9月の中旬。
最近は残暑が厳しく、暦の上ではもう秋だと言うのに暑い日が続いていた。
桜の元に蘇枋から、突然チャットアプリに個別メッセージが届く。
【そういえば、そろそろにれ君の誕生日だけれど、桜くんはプレゼントの用意してあるのかい?】
……楡井の、誕生日?
そういえば、付き合っているのにアイツの誕生日がいつか、だなんて……聞いたことがなかった気がする。
この町にくるまでは、オレにとって誕生日だなんてものは「この世に“生まれてしまった”日」という認識だった。
親族には盥回しにされ厄介者扱い、学校でも居場所の無かったオレの誕生日だなんてものを祝ってくれる人間は、一切居なかったからだ。
でも、この町に来てから誕生日がいつかと聞かれること増えた気がする。
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