知らぬは本人ばかり七海は年下が好きだ。本人は否定するだろうけど。彼は年下に甘い。注意はするもののタメ口やあだ名も許しているし、ご飯にだってよく連れ出している。そんな世話焼きな所が好かれて後輩が集まっている。
何が言いたいのかというと、同い年の僕は彼の好みから外れてしまっている。
学生時代から嫌われてはいないだろうとは思っているが、年齢を重ねるにつれて他と比べる機会が増え自信がなくなってきた。片想いから早十年。いっそのこと彼女か彼氏か作ってトドメを刺して欲しい。
「自分から告白しに行けばいいのに」
「それができたら苦労しませんよ!」
こうして今日も、抱えきれない気持ちを先輩に吐き出すのだった。
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灰原は年上が好きだ。本人は「年齢関係なくみんな好きだよ」なんて言い出しかねないが先輩達への懐き方から見て明らかだ。彼はいつも尊敬の眼差しと愛嬌を惜しげもなく振りまいている。この間だって、最近術師になった年上を虜にしていた。
何が言いたいのかというと、同級生の私は彼のストライクゾーンから外れているわけで。
こちらに向けられることのない表情。私には君を魅了する力はないのだろうか。片想いから早十年。年齢だけは重ねているが一歩を踏み出す力はつかずにいる。
「そろそろ私、灰原好みになれましたかね!?」
「知らねー」
こうして今日も、意気地のない心情を先輩に吐露するのだった。