七海ちゃんの憂鬱恋する乙女である七海ちゃんは悩んでいた。
「ギャルになるにはどうしたらいいと思いますか?」
普段なら同級生の男子に相談するところだが今回ばかりはそうはいかない。というわけで、一つ上の先輩三人衆に助力を願うことにした。
「また血迷った事言い出した」
「今度はなんだい?」
「どうせ灰原がらみだろ」
好き勝手言われるがその通りなので反論はできない。顔を真っ赤にして涙目になる七海に同性の家入が助け舟を出した。
「とりあえず、その質問が出てくるまでの経緯を聞こうか」
「…話せば長くなりますが…」
「いいって、ほら早く」
「では…」
***
先日。灰原と二人で行った任務先で偶然上層部の人間と出くわした。仕方なく当たり障りのない会話でやり過ごしているとそれが気に入らなかったのか嫌味を言われる。長ったらしい言葉を要約すると『若い男女が二人とは、痴情のもつれで揉められると困る』と。
七海が反論しようと口を開く前に灰原が満面の笑みで言い放った。
「安心してください!七海と恋愛関係になることは絶対ないので!大丈夫です!」
その清々しさには話を振った上層部もちょっと引いていた。
***
「…というわけで、私はまず灰原に恋愛対象として見てもらうところから始めなければいけないんですよ」
「大変だな」
「頑張るんだよ」
ため息をつく七海に最強二人は気の抜けたエールを送る。
「…で、そこからなんでギャルにならなきゃいけないんだ?」
「それはですね…」
***
その日から七海は灰原の女性の好みを調べるために行動を開始した。だが本人に直接聞いても「いっぱい食べる子」としか言わない。ならばと灰原の部屋に侵入して夜のおかずを探そうと捜索したが、ベッドの下から出てきたAVを見ても『団地に住む主人公の元に隣に住む人妻が余ったカレーを持ってきたと思ったら最終的に団地でバザーが開かれて大団円』とか『大食い対決で負けたら…というシチュエーションで最後は負けた男たちが机に突っ伏す中で女性が「おかわり!」と茶碗を天に掲げたところで完』とか参考にならないものしかなく収穫ゼロ。最終手段として灰原を人通りの多い繁華街へと連れて行った。『ウィンドウショッピング』と名うって、彼がどんな女子に目を移すか探る為。結果。
***
「すれ違った同年代の派手な女子、要はギャルばっか見てたんですよあのわんぱく坊主…!」
「それでギャルになりたいと」
「どうしたらなれますかね!?」
必死の形相で教えを乞う七海に対し、彼らなりに真剣に考える。
「ギャルといえば明るい髪色だけど…」
3人同時に視線を向けたのは七海の頭。
「髪の色だけはギャルじゃないか?伸ばせば巻いたりもできるようになりそうだ」
「そうか?七海がギャルなら俺もギャルになるんじゃね?」
「なれたとしてもそれはギャル男だよ悟」
「傑はヤンキー系ギャルで硝子がダウナーギャルな」
「なんだよダウナー系ギャルって」
「お疲れ様でーす」
四人がいたのは学内で自販機置き場と休憩所を兼ねた場所。灰原が輪の中に入ってきても何もおかしなことはなかった。
「みなさん楽しそうですね!何の話をしてたんですか?」
「灰原がギャルばっか見てるって話」
「五条さん!?」
「本人に聞いた方が早いだろ?」
このデリカシー無し男!と無下限をボコボコ殴る七海を他所に灰原は疑問を呈す。
「高専にギャルの方いましたっけ」
「いないよ」
「ということは外でですよね…ギャル…?」
心当たりがないようでその場で深く考え込む。七海が五条を殴るのを諦めた頃になって「あっ!」と灰原は声を上げた。
「最近女の子に流行りのドリンクがありますよね?あのドリンクの中にたくさん入っている呪霊玉みたいなの食べてみたいなって、どこで買えるのかなって考えてました!」
いやーお恥ずかしい!と照れる灰原に各々がツッコミを入れる。
「ただの食欲っ!」
「呪霊玉を…ギャルが…?」
「そういう目新しいもんが欲しいなら原宿に行けば解決するぞ」
「結局解決方法がギャルじゃねぇか」
***
後日、皆でタピオカドリンクを飲みながら灰原と恋人になるにはどうすればいいのか考え込む七海であった。
***
「七海のことをどう思うか?同級生というか妹というか姉というか、女の子というより家族と同じくらい大切だと思ってます!」
七海ちゃん17歳、呪力あり、恋人なし、フラグなし
片思い、成就の可能性あり!