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    まどろみ

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    まどろみ

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    記憶なし七×記憶あり灰の七灰。転生if注意

    #七灰

    罰ゲームからはじまる恋七海には申し訳ないけれど、これはチャンスだと思った。

    都内の某高校。入学式で彼を見かけたのは偶然だった。桜の木の下で何かを探すようにあたりを見る姿にもしかして、と抱いた淡い期待は見事に打ち砕かれたが。
    彼は灰原のこと、もっと広い範囲でいうと前世を全く覚えていなかった。
    覚えている灰原が特殊なのか、忘れている七海が異常なのか。五条や夏油など前世での知り合いにこれまで会ったことがないからわからない。そんなわけで、同じ学校にいるもののクラスも違い接点のない灰原は、七海の友達どころか知り合いにすらなれずにいた。

    そんなある日。
    「大富豪やろうぜ、罰ゲームは例のやつで」
    「いいぜ!灰原もどうだ?」
    クラスで謎のトランプブームがおきている。朝礼前や昼休みに男女が思い思いに遊んでいたそれに、灰原は今日初めて誘われた。
    「灰原いつも外に行っちまうからな」
    「バスケとかサッカーとか楽しいからね!」
    「部活に入ればいいのに」
    「全部好きだから選べなくて…」
    運動は好きだ。考えなくても体が動けばどうにかなるから。だがこれが前世での鍛錬の結果かと思うと、ズルをしているようで競技として打ち込む気はなれなかった。
    「ところで、罰ゲームって?」
    そういうのよくないんじゃと目で訴える灰原に友人は慌てて訂正を入れる。
    「いや、賭け事はだめだろ?でも刺激がほしいってことで始まったんだ」
    「…なにやるの?」
    「そんな警戒すんなって、女子にとっちゃ人気の罰ゲームだし男子がやれば冗談ですむもんだから」
    「もうやろーぜ、これで全員?」
    痺れを切らしたのかリーダー格の男子がトランプをきりだした。
    「ああ、やるぞ灰原!予鈴がなるまでに一番勝てたやつが優勝、ビリだったやつが罰ゲームだ」
    男女混合の八人で、大富豪大会が始まった。

    結果。
    「灰原お前…」
    「うん…」
    あまり物事を深く考えてないと豪語してるだけあって、戦略ゲームは苦手だ。加えて人数が多く手札が少ないためカードによっては最初から詰んでいる。
    「ビリの灰原には…あー、なんかちょっと罪悪感でてきたな」
    「でもビリはビリだしな」
    「灰原くんが成功したらどうする」
    「いや、灰原くんかわいいけど…ないよね?」
    ほかの参加者が灰原そっちのけでひそひそ話をしている。だが灰原は最初の発言をちゃんと覚えており、負けが決まった時点で覚悟を決めていた。
    「それで、罰ゲームってなにかな?」

    ***

    「今日中に3組の王子様に告白してこい、か…」
    3組の王子様。そのあだ名に灰原は苦笑いをした。10組の灰原でも知っているその人は、七海建人その人であった。海外の血をひく見目と文武両道を地で行く彼は学内で時の人だったが、いかんせんとっつきにくく、会話はできるものの恋人どころか友人らしき人間もいないようだった。
    そんなだから罰ゲームを理由に告白して、あわよくばお付き合いできれば、などと考える生徒がでてきたらしい。なるほど、人によっては損はしない罰ゲームだ。
    (僕は、ずっと前から七海が好きだけど…)
    前世のころから灰原は七海のことが好きだが、その気持ちを伝える気はなかった。生まれ変わって彼を見つけてからも、ずっと。
    (だけど、嘘の告白はしたくない)
    冗談ぶって告白をするのは簡単だ。だけど七海に不誠実なことはしたくなかった。
    (…よし、当たってくだけよう!)

    ***

    灰原のクラスは校舎の構造上、他の一年生のクラスとは別の棟にある。休み時間では往復だけで終わってしまうため、終礼が終わるのを待ってから小走りで3組に突撃した。
    「七海くんいますか!?」
    まだいるよーと他の生徒が答えてくれるものの、その目は冷ややかだ。クラス全体を見渡すと好奇心で見てくるものが半分、呆れ顔が四分の一、残りは興味なし、といったかんじだった。
    (巻き込まれる本人もまわりも大変だよね)
    ごめんなさい、と心のなかで謝りつつ七海の座る席まで向かう。このような状況に辟易しているのか、読書をしている七海は隣に立つ灰原を見ようともしない。
    (それでもいいんだ)
    「七海、くん」
    呼び慣れない名前に、今は友人ですらないことを実感する。灰原は深呼吸をしてからゆっくりと話し始めた。
    「好きだよ、七海。ずっと好きだった」
    七海の眉が少し動く。だけど相変わらず視線は本に落としたままだ。
    「困っている人をほっとけない優しさも、自分の力不足に悩んで邁進する姿勢も、生き方に悩む人間らしさも、全部全部、好きだった。」
    ああ、だめだ。本心を言えば言うほど七海の顔が見られない。最後は目を瞑りながら言うことになった。
    「だから、幸せになってね」
    (ようやく言えた、僕の気持ち)
    罰ゲームとはいえ、前世から抱えていた気持ちを言えたのは嬉しい。と同時に、ここが七海のクラスで衆人の目に晒されていることを思い出した。
    「そ、それだけだから!じゃあね」
    「それだけか?」
    「え?」
    踵を返そうとしたところ、本を読んだまま顔を動かさない七海が腕を掴んできた。
    「付き合おうとか恋人になってとか、…友人になろうとかないのか?」
    こちらを向く気配はないが、その力加減から手を離す気もないことがわかる。
    「ないよ」
    灰原の返答に驚いたのか手の力が緩む。その隙に腕を抜いて握られた部分をさすった。
    「友人とか恋人とかを決めるのは七海自身だ。だから僕からは何も言わないよ。告白自体が僕の気持ちを押し付ける行為だけど…」
    視線を彷徨わせていると七海と目が合う。彼は驚愕した表情でこちらを見上げていた。
    「七海?」
    「名前は?」
    「え?」
    「君の、名前は?」
    立ち上がった七海の鋭い眼光に思わず腰が引ける。
    「は、灰原。灰原雄」
    「はいばらゆう…」
    名前を口ずさむと同時に彼の腕が灰原の腰に回った。
    「雄、君は私を好きだと言ったな?なら、恋人にならないか」
    どういうこと?という灰原の声は、教室に残っていた生徒たちの絶叫によって掻き消された。


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    (これなら灰原も着てくれるだろうか)
    頭に思い浮かべるのは愛しい恋人の姿。彼女の名前は灰原雄、高専の同級生だ。付き合いだして半年経つが七海には悩みがあった。等級違いの任務で負傷して以降、彼女が男物の服しか着ないのだ。それまで制服は通常の上着とカスタムのキュロットを着用していたのに、復帰時には上着は短ランに、キュロットは男子と同じズボンに変わっていた。私服も今までは可愛らしいものが多かったのに、最近はパーカーとジーンズのようなシンプルな装いばかりになっていた。それが彼女の好みなら文句は言わない。しかし、一緒に出かける時に同性に羨望の眼差しを向けていることを七海は知っている。だからこそやるせなかった。一度「前みたいに可愛い服は着ないのか?」と聞いてみた結果「可愛い服の似合う女の子と付き合えば?」と返され大喧嘩に発展してしまったので以降服装の話題は出さない様にしている。格好いい彼女ももちろん素敵だが、それ以上にいろんな姿の彼女が見たいというのが本音だった。
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