※彼は成人しています灰原と夏油の合同任務。だったはずなのだが現場に着くとそこに五条もいた。
「悟は今日別の任務じゃなかった?」
「あんなの一瞬!それより灰原ずりーぞ!傑と一緒に任務なんて」
「はい!すみません!」
「灰原も付き合わなくていいからね」
雑談しながら歩いていると隙を突かれ視界を奪われる。目を開けるとそこは先ほどまでいた屋外ではなく簡素な部屋の中だった。
「ここは…」
「呪霊の領域みたいだな」
五条は夏油の疑問に答えながら壁の上方を眺めている。
「にしてもさん≪ピー≫ってなんだ?」
五条の発言に突如規制音が入るが場所を間違えているようで意味をなしていない。親友の発言に咳込みつつ、彼が見上げている場所へ夏油も視線を写した。
「…」
見なかったことにした。
「さ≪ピー≫しないと出れない部屋ってなんだよ…てかなんで≪ピー≫ってとこだけ規制音が鳴るんだ?」
壁にある『3pしないと出られない部屋』の看板を見ながら五条は首を傾げる。なお現在、五条と夏油は誕生日がまだなので17歳、灰原にいたっては16歳である。未成年に何させようとしているんだ。
「なあ傑、さん≪ピー≫ってなんだ?」
「…悟、今更カマトトぶらなくてもいいんじゃないか」
「はあ?喧嘩売ってるのか?」
「え?待って?本気で言ってる?」
本気に決まってんだろ!とキレる親友に、頭をフル回転させて語彙を探した。
「≪ピーーーーーー≫って言ったらわかる」
「ああ、≪ピー≫か」
ほぼ≪ピー≫音だったが納得したらしい。
「じゃあなに?傑とこいつの三人でヤれってか?」
五条は部屋の隅で伸びている灰原を蹴り上げた。
「あれ…?ここ…?」
起き上がり周囲を見渡す灰原に五条は現実を突きつける。
「おい灰原!≪ピー≫すんぞ」
「悟!」
「どうしたんですか急に…ああ、なるほど」
看板を確認した灰原は現状を理解したようだ。さすが呪術師、妙な状況を受け入れるのが早すぎると夏油は感心してしまった。
「わかりました!じゃあ僕、タンバリン叩く係やるんでお二人とも頑張ってください!」
どこから取り出したのか、気づいたら彼の手中にあるタンバリンのパン!と言う音が部屋中に響いた。
「待ってくれ灰原、そのタンバリンはどこから持ってきた?」
「『タンバリン欲しいな』って思ったら出てきました!」
パンパン!
「…なんでタンバリン?」
「だって≪ピー≫てあれですよね?二人が≪ピー≫して一人がタンバリン叩くやつですよね?」
パンパパン!
「…その知識はどこで?」
「妹の漫画です!」
貸してもらった漫画で男二人がパンパン音が鳴る中≪ピー≫しててこれ何?って聞いたら画面外のもう一人の人がタンバリン叩いてる音だよって言われました!と元気よくタンバリンを叩きながら答える。
「…」
パンパン!と言うタンバリンの音と18禁用語に規制音がつくことに気がついた五条が放つ声に被さる≪ピー≫音が鳴り響く中、夏油は頭を抱えた。
***
「そんなこともあったなーと思って、例の部屋作ってみました!」
「すごーい!」
「通販番組みたいなノリで紹介しないでください」
死後の世界。面白いものがあると五条たちに連れてこられた場所にあったのは『セックスしないと出られない部屋』の看板がかけられたドアの前だった。通販番組よろしく話をすすめる二人を前に七海はため息をつく。
「せっかくだからお前ら入れよ」
「遠慮します」
「そんなこと言うなって、なー灰原?」
七海を説得するのは諦めたのか話が灰原に移る。
「僕は入ってもいいんですが、七海が捕まりそうなのでやめときます」
「一人だけ未成年面しない!」
大体、ヤることは生前に済ませてるだろうとツッコミを入れると彼は珍しく眉を顰めた。
「だって七海、僕のこと子供扱いするじゃん。今日だって大人の姿だし」
確かに、今は高専姿ではなくスーツを着た大人の格好だ。ここに来る直前まで生前の知り合いに会っていて、聞かれたくない話をしていたから何の話?と聞いてきた灰原に「子供には関係のない話だ」とも言った。だがそこまで根に持たなくてもいいじゃないか。
「仕方ねえなあ」
五条がどこから取り出したのか長方形の板を灰原に手渡す。
「『学生服を着ていますが成人しています』…いや…」
「これで文句言われねえだろ」
いや駄目だろ、という意見は無視され後輩二人は部屋の中に放り込まれた。
「え、えー?」
板を抱える灰原の顔は、戸惑っているものの嫌がってはいないようだ。世間様に言い訳を並べるのはやめて、欲を孕みながら七海は手を伸ばした。