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    まどろみ

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    まどろみ

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    七灰。記憶なし×記憶あり。罰ゲームからはじまる恋と蜂蜜の恋の続き。転生if、途中虎→七描写注意

    #七灰

    横槍から進む恋付き合い始めて早二か月。今日は七海の家に来ています。
    「うわあ」
    飲み物を持ってくるからゆっくりしてて、と案内された七海の部屋。内装や本の趣味が昔―――前世と同じで驚いた。
    「ベッドのシーツの色も、本棚の質感もおんなじだ…!」
    他人の部屋を勝手に漁るのはよくないことだとはわかっていても、見慣れた光景にテンションが上がってしまう。
    「そういえば七海、エロ本どこにしまってたんだろう?」
    昔の七海との関係性ではそういう話になったことはなく、ましてや部屋をまじまじと見る機会もなかったので知らないが、恋人の今なら許されるだろうか。
    「何してるんだ?」
    「うわ!」
    ベッドの下を覗き込んでると七海がお茶を持って部屋に入ってきた。
    「びっくりした」
    「本棚の一番下の棚の右端」
    「え?」
    「どうせエロ本でも探してたんだろう」
    雄のことなら大体わかる、とドヤ顔で言われなんと返すか反応に困る。だがせっかく教えてもらったからと、言われた場所にあるものに手を伸ばした。
    「あれ?本じゃない?」
    「見てもいいぞ」
    まったく動揺していない様子に怪訝になりながらも文庫本よりも少し大きいそれを開く。そこには。
    「うわー!うわ、うわー!?」
    「私にとって雄がオカ…」
    「言わせないよ!?」
    手に取ったそれはアルバムで、中には灰原雄の写真が何枚も入っていた。
    「隠し撮りっぽいのもあるけど、どうしたのこれ!?僕知らないんだけど!?」
    「雄のクラスメイトに『恋人の写真が欲しい』って言ったら喜んで提供してくれた」
    すまし顔で言われるが、こちらとしては恥ずかしくて仕方ない。
    「で、それを見たからには覚悟はできてるな?」
    どうしたものかと頭を悩ませているといつの間にか身体がベッドに縫い付けられていた。
    「え?」
    「私のエロ本を見たってことは、こういうことでいいんだよな」
    七海の手がするりとシャツの中に入ってきた。僕の写真はエロ本じゃないよ!という苦言と七海の手際が良すぎてドキドキする気持ちが綯い交ぜになる。七海の顔が近づいてきて唇が触れる瞬間。

    「ダメだよナナミン!」
    ランドセルを背負った子供の襲撃に目を見張った。

    ***

    突然の出来事に二人して動きが止まる。そんな年上たちを他所に小学生は言葉を続けた。
    「ナナミンのうんめーは俺なんだから他に手をだしちゃだめだよ!」
    「は?」
    衝撃の言葉に灰原は慌てて七海の下から抜けて小学生の前に正座する。
    「はじめまして、灰原雄です。君のお名前は?」
    「はじめまして、いたどりゆうじです。ナナミンは俺のなので取らないでください!」
    「どういうことかな?」
    小学生といえど恋人に横恋慕してくる相手には容赦しない。
    「近所の子供の戯言ですよ。前世の縁があるから自分が恋人になるんだって言ってて…」
    「本当だもん!」
    「前世も恋人だったのかな?」
    自分が死んだ後のことは何も知らない。もしかしたら、七海が彼とお付き合いをしていたという事実があれば、横恋慕しているのはこちらの方になる。
    「それは、ない。…けど、死ぬ直前にほほえんでくれたし!俺も好きだし!」
    「へえ?」
    死ぬ直前に、なんてそんな限定しなくても、七海はいつも笑っていたよ?
    「それに!前世で呪術師だった人ならともかく、今世であったばかりの人に取られるなんて納得いかない!」
    「聞き捨てならないね」
    自分でも驚くほどの低い声が出て、目の前の小学生も肩を震わせた。
    「君が知らないだけで、僕もれっきとした呪術師だよ。それに君の言い方だと七海の恋人になれるのは前世で君の知っている人だけってことになるけど、早い者勝ちなら僕の独壇場だよ」
    七海が魅力的なのは知っていたけど、思わぬところにライバルがいたなんて。油断していられない。
    「ね、七海」
    ベッドの上で呆ける彼に呼び掛ける。
    「僕も本気出すから、覚悟してね」

    ***

    別のクラスの男が、同じクラスの男を抱えあげてイチャついている。そんな普通ではないがいつもの光景のはずが、今日はちょっと違った。
    「七海、今日は僕、がんばってパンを焼いてきたんだ。食べてくれるよね?」
    「ふぁ、ふぁい」
    昨日まで抱えあげられ顔を赤くしていた男が妖艶な顔をしてもう片方の男に迫っている。逆に、昨日まで余裕綽々だった男は首まで真っ赤にして言葉を詰まらせていた。
    「ふふ、かーわいい」
    「かわ…!?」
    「おべんと、ついてるよ」
    口の端についたパンくずを唇で男が掠め取るとクラスメイトたちのざわめきが広がった。
    「清純もののイメージビデオを見てたはずなのにおねショタAVになってる」
    「何の話だ」
    よくわからないことを言う友人を他所に二人に近づく。
    「そういうことは家でやれ」
    いつものことだが、と毎度と同じ言葉をかける。すると妖艶だった男は少し困り顔を見せた。
    「親御さんのいるところではちょっと」
    「あ、怯んだ」
    「雄!」
    今まで固まっていた男が負けじと特攻を仕掛ける。
    「いまだー!!」
    「いけー!七海ー!」
    「灰原も負けるなー!」
    なんやかんや言いながら、俺たちはクラスメイトの恋を楽しく見守っている。

    「今日も平和だなー」
    男たちの攻防を他所に、昼休みは緩やかに過ぎていった。


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    TRAINING七灰♀。バレンタインデーとホワイトデーの続き。ほのぼの
    可愛い君がいっぱい見たい単独任務が終わり、次の任務に行く補助監督を見送り徒歩で帰宅する。その道中で女性物の服屋にある一つのマネキンに目が止まった。正確にはマネキンが着ている服に。白のブラウスにカーディガン、ロングスカートとショートブーツという春らしい装いだ。
    (これなら灰原も着てくれるだろうか)
    頭に思い浮かべるのは愛しい恋人の姿。彼女の名前は灰原雄、高専の同級生だ。付き合いだして半年経つが七海には悩みがあった。等級違いの任務で負傷して以降、彼女が男物の服しか着ないのだ。それまで制服は通常の上着とカスタムのキュロットを着用していたのに、復帰時には上着は短ランに、キュロットは男子と同じズボンに変わっていた。私服も今までは可愛らしいものが多かったのに、最近はパーカーとジーンズのようなシンプルな装いばかりになっていた。それが彼女の好みなら文句は言わない。しかし、一緒に出かける時に同性に羨望の眼差しを向けていることを七海は知っている。だからこそやるせなかった。一度「前みたいに可愛い服は着ないのか?」と聞いてみた結果「可愛い服の似合う女の子と付き合えば?」と返され大喧嘩に発展してしまったので以降服装の話題は出さない様にしている。格好いい彼女ももちろん素敵だが、それ以上にいろんな姿の彼女が見たいというのが本音だった。
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