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    まどろみ

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    まどろみ

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    気持ちは七灰。実際はそれ未満。転生if、2818パロ注意。所属が違う七と灰の話。ギャグ

    #七灰

    ラジオ越しの攻防「リスナーのみなさんこんばんは!羂索と」
    「髙羽の」
    「「オールナイトピンチャン!」」
    「いやー僕たちが事務所を立ち上げて一か月たちましたが」
    「今日は皆さんに報告があるんですよ」
    「ほう。なんですか」
    「なんと!僕たちに後輩ができました!」
    「わーいどんどんパフパフ」
    「早速初仕事としてゲストに呼んでるよ」
    「では紹介します!後輩の灰原雄くんでーす!」
    「灰原雄です!よろしくお願いします!」
    五条に渡された録音テープを聞いていた七海は持っていたペットボトルを握りつぶした。

    ***

    「なんで灰原がウチに来ないんですか!?」
    呪専芸能プロダクション。社長室で所属タレントの七海は五条に詰め寄っていた。
    「いや、悪いと思ったから録音聞かせたわけで…」
    「良い悪いではなく!なぜ灰原がウチの事務所ではなくヨソに取られたのかと聞いているんです!」
    「いや、前世呪術師は全員所属させるように事務員の窓や補助監督には指示は出してるよ?でも灰原の存在を知らない奴も多いわけ。だから灰原が履歴書送ってきた時もファンレター出してきた時も面接しに来た時も偶然そういう奴が対応しちゃって」
    「偶然であってたまるか!」

    ***

    「羂索~、こんないい子どこから攫って来たの?」
    「攫って来ただなんて人聞きの悪い。呪専プロから門前払いされたところを拾ってきたんだよ」
    「あそこ入所条件厳しいもんな。五条が認めた奴、だっけ?」
    「そう。だから私は出禁だし、髙羽も取られそうになったもんね」
    「そういや声かけられたなー」
    「で、灰原を取りこぼしていたところを私がスカウトしたの」
    「ありがとうございます!」
    「後輩と言っても何すんの?ピン芸人?タレント?」
    「自分にできることは精いっぱいやるつもりです!」
    「気楽にそんなこと言っちゃだめだよ。紐なしバンジーさせられちゃうよ」
    「そこから生き残ったら最高だよね!」
    「こういう変なやつがいるからな」
    「気を付けます!」
    「じゃあ、灰原の活躍はこうご期待ということで」
    「次のコーナー行きまーす」

    ***

    「ダメダメ。ウチは君みたいな普通の子が来るとこじゃないんだから他所をあたって」
    テレビで見た七海に一目会いたくて。その一心で履歴書を送ってみたりファンレターを送ってみたりしたものの音沙汰がなく。高校卒業を期に東京に出てきたはいいものの見事に門前払いされてしまった。
    「うーん、これからどうしよう…」
    あてもなくやって来たので何も考えていない。呪専芸能プロダクションの前でどうしようかと考えあぐねていると見知らぬ人に声をかけられた。
    「君」
    第一印象は前世の先輩と似ているな、だった。だがあからさまな作り笑いと額の傷で赤の他人だとわかる。
    「君、元呪術師だよね」
    「わかります?」
    「わかるよ」
    彼曰く、前世で呪術師だった人間からは残穢に似た呪力が察知できるとのこと。
    「呪術師がなんであの呪術師専門の芸能プロダクションから追い出されてるのかな?」
    「面接に行ったら、普通の子はダメって言われちゃいました」
    「何が普通だ。元窓だか補助監督だか見る目ないね」
    「あの人たちは悪くないですよ」
    「フーン。それで、君はこれからどうするの?」
    「どうしましょうかね?ここに入るつもりで上京したので何も考えていませんでした」
    「へえ。その無鉄砲なかんじ嫌いじゃないよ。よければウチに来る?私も一応芸能プロダクションの社長なんだけど」
    「えー悪いですよ。…よろしくお願いします!」

    ***

    「しかも!なんで私宛のファンレターが私の知らぬ間に破棄されてるんですか!?」
    「いや、だってあの頃傑宛に異物混入が多発したから防犯のために皆やってて」
    「だからってただの手紙も処分しなくてもいいでしょう!?」
    ラジオの灰原曰く、本当になんの変哲もないファンレターだったとのこと。
    「しかもなんですか!灰原と私の共演NGって」

    ***

    「呪専プロ目指してた灰原に言うのも酷なんだけど、基本ピンチャンはあの事務所とは共演NGなんだよね」
    「一方的にこっちが出禁食らってるだけだけどね」
    「かまいません!というか、特に七海とは共演NGでお願いしたいです!」
    「おや、一番会いたい人だって言ってたのに何でだい?」
    「だって…」

    ***

    『隣に立てるくらい立派になるまで会いたくありませんから』
    「これ絶対灰原怒ってますよ!」
    「そうか?」
    長年の付き合いの七海は知っている。灰原は怒ると意固地になって接触を避けてくるのだと。
    「とにかく!灰原と話す機会をください!」
    「そうはいっても、まだあいつラジオでしか活動歴がないからな…」

    ***

    「というわけで!日曜朝のドラマ!見てくれましたか!?」
    「いやーまさか灰原が役者でデビューとはね」
    「しかも悪役」
    「特撮に出られて嬉しいです!」
    「しかもアレ、普段こんななのに超澄ましちゃって『楽しみにしてますよ…』とか、ドラマからこのラジオ聞きに来た人びっくりするんじゃない?」
    「そうですか?」

    ***

    「そうだよ!びっくりしたよ!」
    「七海うるさい」
    七海が事務所でラジオの生放送を聞くのが定番になった春頃、灰原のドラマでのレギュラー出演が始まった。
    役どころは何と敵役の若きボス。愁いを纏うその姿になにこの新人!?と話題になり、検索でラジオにたどり着いたものも多いとふつおたが届いていた。
    「私もオーディション受けましょうかね」
    「今からだと単発回のゲストキャラぐらいだろうけど、それでいいならいいんじゃね?」
    後日、単発キャラからの準レギュラー昇格が決まった。

    ***

    つづく
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    (これなら灰原も着てくれるだろうか)
    頭に思い浮かべるのは愛しい恋人の姿。彼女の名前は灰原雄、高専の同級生だ。付き合いだして半年経つが七海には悩みがあった。等級違いの任務で負傷して以降、彼女が男物の服しか着ないのだ。それまで制服は通常の上着とカスタムのキュロットを着用していたのに、復帰時には上着は短ランに、キュロットは男子と同じズボンに変わっていた。私服も今までは可愛らしいものが多かったのに、最近はパーカーとジーンズのようなシンプルな装いばかりになっていた。それが彼女の好みなら文句は言わない。しかし、一緒に出かける時に同性に羨望の眼差しを向けていることを七海は知っている。だからこそやるせなかった。一度「前みたいに可愛い服は着ないのか?」と聞いてみた結果「可愛い服の似合う女の子と付き合えば?」と返され大喧嘩に発展してしまったので以降服装の話題は出さない様にしている。格好いい彼女ももちろん素敵だが、それ以上にいろんな姿の彼女が見たいというのが本音だった。
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