屋根裏の妖精さん「ただいまー!…あれ?」
家に帰ると、いつもなら出迎えてくれる伊地知の姿がない。外出の予定は聞いてないのにと広い屋敷内で彼を探していると、滅多に使わない客間にその姿はあった。
「伊地…」
呼びかけるのをやめて気配を消す。家業の舞踊で身に着けたそれは効果覿面らしく伊地知はこちらに気が付く様子はない。そんな彼は普段と違い険しい表情をしていた。虚空を見つめるその口は半開きであり、目を凝らすと多少動いていることがわかる。その様子に大まかな見当をつけ声をかけた。
「伊地知」
「…!…おかえりなさいませ。すみません、出迎えもなく」
突然現れた(ように見える)灰原に頭を下げる。平身低頭な姿から変な所は見当たらない。
「気にしないで。それより聞きたいことがあるんだけど」
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