ホワイトデーの恋ホワイトデー当日。朝に『今日のお昼休みは三組の教室で待っていて』と言われたのでおとなしく待っていると十分ほどで灰原がやってきた。
「雄…!」
「ストップ」
手で制されて動きが止まる。今の彼はめかし込んでいる(と言ってもいつものワイシャツセーターにジャケットを羽織っているだけだが)のが一目でわかった。
「七海」
スッと灰原が片膝をつく。それはまるで一か月前のバレンタインの時の七海のように。
「七海の黒歴史になりたくなくて遠慮してたけど、こうなったら一緒に恥をかいてもらうからね!」
「望むところだ」
七海の返答に灰原はうなずき胸ポケットからリングケースを取り出す。上下に開かれた箱の中には、シンプルな指輪があった。
「僕と一緒に、これからの人生を歩んでください!」
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